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追跡2
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冒険者ギルドの協力を得たクリスティナは冒険者と共に、既に王都から脱出しているのだ。
ベルトルドなら簡単に冒険者登録もギルドカードも用意できる。クリスティナに新しい身分を与えることなど造作もないのだ。
(クソっ!! 私としたことが……っ!!)
アレクシスは大急ぎで馬に乗り城壁へと向かう。今いる場所から一番近いのは隣国クロンクヴィストへ向かう街道へ出る城壁だ。
破れかぶれでほとんど勘のようなものだったが、アレクシスは構わず馬を走らせた。
もしクリスティナが全くの逆方向へ向かっていたとしても、捜し続ければ必ず再会できるとアレクシスは信じている。
それぐらい、自分はクリスティナと強い絆を築いてきたし、縁を結んできた。そう簡単に壊れるような、壊せるような関係ではないはずだ。
……それなのに一体何故──! どうして自分が戻るまで神殿で待っていてくれなかったのか、どうして自分を置いて行ってしまったのか……!
アレクシスは必死に馬を走らせながら、クリスティナを想う。
(……私から離れるなんてさせない、許さない──!)
アレクシスにとって、クリスティナだけが唯一無二の聖女なのだ。
自分の全てを捧げても構わないと思うほどに、その気持は強い。
だからクリスティナのそばで、彼女を守れるのは自分だけだと、そう思っていたのに──!!
──そうして、クロンクヴィストへ向かう道中、アレクシスはありえない量の魔力が行使されるのを感じた。
クリスティナとは違う魔力のそれは、アレクシスが無視できないほどであった。
(一体何が起こっている?!)
アレクシスが魔力を辿ってみれば、そこにはずっと探し求めていた最愛の人がいた。
しかし、その人の横には見知らぬ男がいて、二人が寄り添っているように見えたアレクシスは逆上してしまう。
『我が力の源よ 我が手に集いて 輝ける光の弓となれ <ルクス・アルクス>!!』
(相手が誰であれ、クリスティナ様には触れさせない──!!)
アレクシスはクリスティナといる男に向かって、光の矢を放つ。
闇を引き裂くように光の矢が、まっすぐ男に向かっていく。
突然の攻撃に避けられるはずがないと、確信していたアレクシスだったが、その男は魔法を感知し、クリスティナを抱き込みながら倒れるように回避した。
「クリスティナ様っ!!」
男を弾き飛ばすはずが、クリスティナを押し倒す様子に、アレクシスは慌てて馬から飛び降り、彼女のもとへ駆け寄った。
「……っ、いてて……」
クリスティナを抱いていた男が呻きながら身体を起こしている隙に、その首を切り裂こうと動いたアレクシスを、クリスティナが一喝する。
「アレクシスっ!! やめなさいっ!!」
久しぶりに聞いた、自分の名を呼ぶ最愛の人の声に、アレクシスの心は歓喜に震える。
しかしその喜びも一転、不敬な男を庇うクリスティナをアレクシスは不満に思う。
ベルトルドなら簡単に冒険者登録もギルドカードも用意できる。クリスティナに新しい身分を与えることなど造作もないのだ。
(クソっ!! 私としたことが……っ!!)
アレクシスは大急ぎで馬に乗り城壁へと向かう。今いる場所から一番近いのは隣国クロンクヴィストへ向かう街道へ出る城壁だ。
破れかぶれでほとんど勘のようなものだったが、アレクシスは構わず馬を走らせた。
もしクリスティナが全くの逆方向へ向かっていたとしても、捜し続ければ必ず再会できるとアレクシスは信じている。
それぐらい、自分はクリスティナと強い絆を築いてきたし、縁を結んできた。そう簡単に壊れるような、壊せるような関係ではないはずだ。
……それなのに一体何故──! どうして自分が戻るまで神殿で待っていてくれなかったのか、どうして自分を置いて行ってしまったのか……!
アレクシスは必死に馬を走らせながら、クリスティナを想う。
(……私から離れるなんてさせない、許さない──!)
アレクシスにとって、クリスティナだけが唯一無二の聖女なのだ。
自分の全てを捧げても構わないと思うほどに、その気持は強い。
だからクリスティナのそばで、彼女を守れるのは自分だけだと、そう思っていたのに──!!
──そうして、クロンクヴィストへ向かう道中、アレクシスはありえない量の魔力が行使されるのを感じた。
クリスティナとは違う魔力のそれは、アレクシスが無視できないほどであった。
(一体何が起こっている?!)
アレクシスが魔力を辿ってみれば、そこにはずっと探し求めていた最愛の人がいた。
しかし、その人の横には見知らぬ男がいて、二人が寄り添っているように見えたアレクシスは逆上してしまう。
『我が力の源よ 我が手に集いて 輝ける光の弓となれ <ルクス・アルクス>!!』
(相手が誰であれ、クリスティナ様には触れさせない──!!)
アレクシスはクリスティナといる男に向かって、光の矢を放つ。
闇を引き裂くように光の矢が、まっすぐ男に向かっていく。
突然の攻撃に避けられるはずがないと、確信していたアレクシスだったが、その男は魔法を感知し、クリスティナを抱き込みながら倒れるように回避した。
「クリスティナ様っ!!」
男を弾き飛ばすはずが、クリスティナを押し倒す様子に、アレクシスは慌てて馬から飛び降り、彼女のもとへ駆け寄った。
「……っ、いてて……」
クリスティナを抱いていた男が呻きながら身体を起こしている隙に、その首を切り裂こうと動いたアレクシスを、クリスティナが一喝する。
「アレクシスっ!! やめなさいっ!!」
久しぶりに聞いた、自分の名を呼ぶ最愛の人の声に、アレクシスの心は歓喜に震える。
しかしその喜びも一転、不敬な男を庇うクリスティナをアレクシスは不満に思う。
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