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追跡3
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「クリスティナ様!! 何故そのような男と……っ!!」
「彼は私の友人です! それなのに突然魔法で攻撃するとはどういうつもりですかっ?!」
「友人……?! しかし、その男はどう見ても怪し過ぎます!」
先ほど感じた魔力の量も質も、異常なレベルだった。それに髪の毛で顔を隠し、正体がバレないようにしているのも怪しい。
「アレクシス卿、俺はトールと言います。怪しい風体なのは自覚していますが、俺はティナに危害を加えるつもりは全くありません」
アレクシスはトールと名乗った男がクリスティナの名を気安く呼んでいることに、クリスティナがその呼び方を許していることに激昂する。
「黙れっ!! クリスティナ様を気軽に呼ぶなっ!! この方はお前のような者が触れて良いお方ではないっ!! クリスティナ様から離れろっ!!」
再びアレクシスがトールに向かって剣を向けようとするが、その前にクリスティナがトールを庇うように阻む。
「いい加減にしなさいっ!! トールは私の友人だと言ったはずです!! 彼を傷つけることは許しません!!」
「……っ?! クリスティナ様……?!」
「それに私はもう聖女でもクリスティナでもありません。今の私は冒険者のティナです!」
クリスティナ──ティナはアレクシスに宣言した。その言葉は、これ以上関わるな、という拒絶の意味も含まれている。
「……っ、ど、どうして……っ!! 貴女を貶めたフレードリクは廃嫡され、聖女を騙った女共々重罰を与えられます!!」
「アレクシス」
「大神官様もクリスティナ様を心配されていますし、神殿の者も皆んな貴女のお帰りを待っているのですよ!!」
クリスティナから拒絶の言葉を聞きたくないのだろう、アレクシスは彼女の問いかけには答えず、ただただ訴え続ける。
「私は神殿には戻りません」
「──っ?! な、何故そのようなことを……! あぁ、ご安心下さい! クリスティナ様の功績を横取りしていた老いぼれ共は全員処分しました!! 腐敗していた神官共はもういませんから! 私が聖国に行っていたのも、クリスティナ様を大聖女に、と教皇に進言するためで──!!」
「──アレクシス、有難う。貴方や大神官様には本当にお世話になりました。とても感謝しています」
「っ?! おやめくださいっ!! どうして今生の別れのようなことを仰るのです!! 私は貴女に忠誠を誓い、剣を捧げた騎士です!! それはこれからも変わりません!!」
アレクシスがクリスティナを引き留めようと懸命に訴える。ここでクリスティナを連れ帰らなければ永遠に彼女を失うのではないか、とそんな予感がするのだ。
「貴方が捧げた忠誠は聖女に対してでしょう? 何度も言いますが、私はもう聖女ではなく冒険者です。私はトールと共にクロンクヴィストへ参ります」
クリスティナが一度決めたことを曲げない性格なのは、アレクシスが一番良く知っている。彼女の意志は固く、アレクシスが何を言っても引き止めることは不可能だろう。
アレクシスはならば、と最後の賭けに出る。
「──っ、でしたら!! 私はそこのトールという男に決闘を申し込みます!!」
「彼は私の友人です! それなのに突然魔法で攻撃するとはどういうつもりですかっ?!」
「友人……?! しかし、その男はどう見ても怪し過ぎます!」
先ほど感じた魔力の量も質も、異常なレベルだった。それに髪の毛で顔を隠し、正体がバレないようにしているのも怪しい。
「アレクシス卿、俺はトールと言います。怪しい風体なのは自覚していますが、俺はティナに危害を加えるつもりは全くありません」
アレクシスはトールと名乗った男がクリスティナの名を気安く呼んでいることに、クリスティナがその呼び方を許していることに激昂する。
「黙れっ!! クリスティナ様を気軽に呼ぶなっ!! この方はお前のような者が触れて良いお方ではないっ!! クリスティナ様から離れろっ!!」
再びアレクシスがトールに向かって剣を向けようとするが、その前にクリスティナがトールを庇うように阻む。
「いい加減にしなさいっ!! トールは私の友人だと言ったはずです!! 彼を傷つけることは許しません!!」
「……っ?! クリスティナ様……?!」
「それに私はもう聖女でもクリスティナでもありません。今の私は冒険者のティナです!」
クリスティナ──ティナはアレクシスに宣言した。その言葉は、これ以上関わるな、という拒絶の意味も含まれている。
「……っ、ど、どうして……っ!! 貴女を貶めたフレードリクは廃嫡され、聖女を騙った女共々重罰を与えられます!!」
「アレクシス」
「大神官様もクリスティナ様を心配されていますし、神殿の者も皆んな貴女のお帰りを待っているのですよ!!」
クリスティナから拒絶の言葉を聞きたくないのだろう、アレクシスは彼女の問いかけには答えず、ただただ訴え続ける。
「私は神殿には戻りません」
「──っ?! な、何故そのようなことを……! あぁ、ご安心下さい! クリスティナ様の功績を横取りしていた老いぼれ共は全員処分しました!! 腐敗していた神官共はもういませんから! 私が聖国に行っていたのも、クリスティナ様を大聖女に、と教皇に進言するためで──!!」
「──アレクシス、有難う。貴方や大神官様には本当にお世話になりました。とても感謝しています」
「っ?! おやめくださいっ!! どうして今生の別れのようなことを仰るのです!! 私は貴女に忠誠を誓い、剣を捧げた騎士です!! それはこれからも変わりません!!」
アレクシスがクリスティナを引き留めようと懸命に訴える。ここでクリスティナを連れ帰らなければ永遠に彼女を失うのではないか、とそんな予感がするのだ。
「貴方が捧げた忠誠は聖女に対してでしょう? 何度も言いますが、私はもう聖女ではなく冒険者です。私はトールと共にクロンクヴィストへ参ります」
クリスティナが一度決めたことを曲げない性格なのは、アレクシスが一番良く知っている。彼女の意志は固く、アレクシスが何を言っても引き止めることは不可能だろう。
アレクシスはならば、と最後の賭けに出る。
「──っ、でしたら!! 私はそこのトールという男に決闘を申し込みます!!」
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