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決闘1
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「──っ、でしたら!! 私はそこのトールという男に決闘を申し込みます!!」
「っ?! な、何をっ?!」
アレクシスの決闘宣言にティナは驚愕する。
それもそのはず、聖騎士の中でも屈指の有望株であるアレクシスが、最近まで学生だったトールに決闘を申し込んだからだ。
「私より弱い男にクリスティナ様を任せることなど出来ません! それにクロンクヴィストへ行くのなら、素性がはっきりしない奴ではなく、この私がお供します!! そしてその後は共に聖国へ参りましょう!! 聖下もクリスティナ様をお待ちしているのですよ!!」
どうしてもティナとの関わりを失いたくないアレクシスが食い下がる。いくら卑怯と言われようと、アレクシスはティナを諦めきれないのだ。
「貴方はラーシャルード神に身を捧げた聖騎士でしょう?! それなのに──」
アレクシスを咎めようとしたティナを、手で合図したトールが止めた。
「その決闘お受けします」
「トールっ?!」
決闘させまいとアレクシスに説得を試みていたティナは、肝心のトールが承諾したことに抗議の声を上げる。
先程使ってしまった獣魔契約の魔力がまだ回復していないからだ。
「ティナごめん。決闘を受けないと、この人諦め無さそうだしさ」
「だからって……! いくらトールが強くても実戦の経験なんてほとんど無いよね?! アレクシスは魔物の討伐で功績を讃えられる程戦い慣れてるよ!」
学院の授業の一環で、戦闘経験を積むための模擬戦は行っているが、決闘のような命を賭けた戦いを、トールは経験していない筈なのだ。
「ティナはどっちに勝って欲しい?」
「えっ?! そりゃあ、トールだけど……!」
聖騎士から決闘を申し込まれた状況なのに、トールは全く焦っていないようだ。むしろ余裕さえあるように感じてしまう。
「了解。じゃあ行ってくるよ。危ないから、ティナは後ろに下がってて」
「ええっ?! で、でも──」
未だに納得できないティナに、トールは優しく微笑んだ……ようだ。
安心させようと微笑んでくれたトールを見たティナは、きっと彼なら望みを叶えてくれる──そんな気になってしまう自分を不思議に思う。
学院にいた頃からずっと、トールはこんな感じでどんな困難や障害も、飄々と乗り越えていってしまうのだ。
トールが決闘を承諾した以上、誰にもこの戦いを止めることは出来ない。ならば、万が一トールが怪我をしたとしても、傷一つ残さないぐらい、全力で治癒魔法を行使しよう、とティナは思う。
「決闘を受けたことは評価しよう。しかし、私は一切手加減しないぞ。もし命が惜しいなら、さっさとここから立ち去れ! そして二度とクリスティナ様の前に現れるな!! そうすれば腕の一本で見逃してやる!!」
アレクシスがトールに提案した。本来であれば聖騎士との決闘など自殺行為なのだ。しかしこう提案してやることで、トールが尻尾を巻いて逃げるだろうとアレクシスは思っていたのだが──。
「え? いや、決闘するよ。そんなことより、こっちの条件なんだけど」
「なっ?!」
トールに最大の慈悲を与えたつもりだったアレクシスは絶句する。
聖騎士との決闘で勝利した者はいない。大抵の者は命を落とすか、許しを請うて決闘を避けるからだ。
ちなみに許しを請うて決闘を避けたとしても、大きな代償は支払わなければならない。
「っ?! な、何をっ?!」
アレクシスの決闘宣言にティナは驚愕する。
それもそのはず、聖騎士の中でも屈指の有望株であるアレクシスが、最近まで学生だったトールに決闘を申し込んだからだ。
「私より弱い男にクリスティナ様を任せることなど出来ません! それにクロンクヴィストへ行くのなら、素性がはっきりしない奴ではなく、この私がお供します!! そしてその後は共に聖国へ参りましょう!! 聖下もクリスティナ様をお待ちしているのですよ!!」
どうしてもティナとの関わりを失いたくないアレクシスが食い下がる。いくら卑怯と言われようと、アレクシスはティナを諦めきれないのだ。
「貴方はラーシャルード神に身を捧げた聖騎士でしょう?! それなのに──」
アレクシスを咎めようとしたティナを、手で合図したトールが止めた。
「その決闘お受けします」
「トールっ?!」
決闘させまいとアレクシスに説得を試みていたティナは、肝心のトールが承諾したことに抗議の声を上げる。
先程使ってしまった獣魔契約の魔力がまだ回復していないからだ。
「ティナごめん。決闘を受けないと、この人諦め無さそうだしさ」
「だからって……! いくらトールが強くても実戦の経験なんてほとんど無いよね?! アレクシスは魔物の討伐で功績を讃えられる程戦い慣れてるよ!」
学院の授業の一環で、戦闘経験を積むための模擬戦は行っているが、決闘のような命を賭けた戦いを、トールは経験していない筈なのだ。
「ティナはどっちに勝って欲しい?」
「えっ?! そりゃあ、トールだけど……!」
聖騎士から決闘を申し込まれた状況なのに、トールは全く焦っていないようだ。むしろ余裕さえあるように感じてしまう。
「了解。じゃあ行ってくるよ。危ないから、ティナは後ろに下がってて」
「ええっ?! で、でも──」
未だに納得できないティナに、トールは優しく微笑んだ……ようだ。
安心させようと微笑んでくれたトールを見たティナは、きっと彼なら望みを叶えてくれる──そんな気になってしまう自分を不思議に思う。
学院にいた頃からずっと、トールはこんな感じでどんな困難や障害も、飄々と乗り越えていってしまうのだ。
トールが決闘を承諾した以上、誰にもこの戦いを止めることは出来ない。ならば、万が一トールが怪我をしたとしても、傷一つ残さないぐらい、全力で治癒魔法を行使しよう、とティナは思う。
「決闘を受けたことは評価しよう。しかし、私は一切手加減しないぞ。もし命が惜しいなら、さっさとここから立ち去れ! そして二度とクリスティナ様の前に現れるな!! そうすれば腕の一本で見逃してやる!!」
アレクシスがトールに提案した。本来であれば聖騎士との決闘など自殺行為なのだ。しかしこう提案してやることで、トールが尻尾を巻いて逃げるだろうとアレクシスは思っていたのだが──。
「え? いや、決闘するよ。そんなことより、こっちの条件なんだけど」
「なっ?!」
トールに最大の慈悲を与えたつもりだったアレクシスは絶句する。
聖騎士との決闘で勝利した者はいない。大抵の者は命を落とすか、許しを請うて決闘を避けるからだ。
ちなみに許しを請うて決闘を避けたとしても、大きな代償は支払わなければならない。
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