【完結】月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

五城楼スケ(デコスケ)

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到着3

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「終わらせる……」

「そう。終わるからといって失う訳ではないわ。在るものは在り続けるし、これから得られるものも沢山あるの。恐らくだけど、けじめを付けなさい、ということだと思うわ」

 トールはイロナの言葉をじっと聞き続ける。きっと彼には思い当たるフシがあるのかもしれない。

「……イロナさんは、どうして俺に……」

 表情はわからないが、トールはイロナを不思議そうに見ているのだろう。
 トールから問いかけられたイロナは、慈悲深い笑みを浮かべて言った。

「私は貴方たちをとても気に入っているの。そんな貴方たちに幸せになって欲しいって思うのは、当然のことでしょう?」

 どうやらトールの占い結果には、ティナも関わっているようだ。

「終わりを受け入れる覚悟を持つことが大切よ。受け入れてこそ新たなはじまりがやってくるの。……もうわかるでしょう?」

「……はい」

 イロナがリーディングした石の意味は、トールの心に深く刺さったようだ。顔は見えないが、真剣な表情をしているのだろう。

 占いの内容的にどことなく寂しげな雰囲気を感じるが、イロナの占いはトールのためになるはず、とティナは信じている。

「じゃあ、そろそろ出発しましょう。宿も取らないといけないしね」

「よーし! 出発すっか!」

 モルガンの合図で、馬車はクロンクヴィストの国境へと出発する。

 いつもの通りモルガンとトールは御者台で、ティナたちは馬車の中だ。

 ティナはトールに何か言葉を掛けたかったが、自分も関わっている可能性があると思うと、下手に言葉を掛ける訳にもいかず、躊躇ってしまった。

(トールに変化かぁ……。もしかしてイメチェン? ……なんて訳ないか)

 ティナなりにイロナの占いの意味を考えたが、当然ティナにはサッパリわからない。
 朝に眼鏡を外していたトールを見たからか、ついお馬鹿なことを考えてしまう。

 しかし、何があっても常に飄々としているトールが、占いの結果に酷く動揺していた。
 イロナの言う”変化”はトールにとって、それだけ怖いことなのかもしれない。

 正直、イロナに占いの意味を聞いてみたい気もするが、当然イロナは教えてくれないだろう。

「アウムー!」

「わふわふっ!」

 アネタとアウルムがじゃれ合う姿を見ながら、ティナはいつかトールが自分に占いの意味を教えてくれたら良いな、と思う。



 しばらく馬車に揺られていると、森が開け、幾つかの建物が見えてきた。どうやら国境にある街へと到着したらしい。

 沢山の人が行き交う街の中を馬車で進んでいくと、隣国クロンクヴィストへと繋がる大きな門が見えてきた。

 クロンクヴィスト王国はセーデルルンド王国のよりも広い国土を持ち、今いる国境の反対側には、広大な山脈と針葉樹の森などの大自然が広がっているという。
 ティナはまず、この護衛の仕事が終わればその辺りを冒険したいと考えている。

(月下草の栽培場所が見付かれば良いな……)

 ティナが胸を躍らせながら、国境の門を眺めている傍らで、トールは緊張した面持ちで、馬車を走らせていたのだった。
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