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「ん~~、そうだなぁ。ただ殺しちまうのも勿体ねぇな。奴隷商にでも売るか?」
「おお! そうしようぜ! こちとら徹夜で探してんだし、深夜手当ということで!」
「へへっ、いいねぇ! さっさとこいつを依頼主に渡して飲みに行こうぜ!!」
盗賊たちは幼いトールたちにすっかり油断していた。そのおかげで今すぐティナを殺そうとしなかったことは幸運だったかもしれない。
(……くそっ! こんな奴らに捕まるなんて……! ティナだけでも逃さないと……!)
トールは身体をロープで縛られ、猿轡をはめられた後、ズタ袋に入れられて運ばれていた。おそらくティナも同じ状況だと思うが、周りの様子がわからず心配だ。
(ティナを奴隷商に売ると言っているから、傷つけていないとは思うけれど……)
盗賊たちに捕まってからしばらくして、トールはズタ袋から放り出された。
(痛っ!! ……っう……っ、ここは……?!)
「うっ!! うぅ……っ」
トールが放り出されたそばから、ティナの呻き声が聞こえて来た。
思わず声がした方向へ顔を向けると、土の上で倒れているティナの姿があった。
(ティナっ!! 大丈夫?!)
ティナもトールも猿轡をはめられており、喋ることはできないが、見たところ怪我はないようだった。
ティナの無事を確認したトールは、どこに連れて来られたのかと、周りを見渡したものの、一瞬、ここがどこだかわからなかった。
何故なら、たくさんの木々が根っこからひっくり返り、焼け焦げた土からは未だ燃えているのか、所々から煙が上がり、多数の死体が散乱している場所だったからだ。
──それはまるで、空から星が堕ちて来たような、凄惨な光景で。
(こ、ここは……っ!)
トールが余りにも酷い光景に絶句していると、後ろの方から足音が聞こえて来た。
「……全く、高い依頼金を払ったのに全滅するとは……。暗殺ギルドも大したことないな」
(……っ、こいつは……っ?!)
声がする方へ振り向くと、身なりが良い、いかにも貴族然とした男が立っていた。
「こうしてお会いするのは初めてですね。……それにしても殿下にここまで手を焼かされるとは思ってもいませんでしたよ。ずいぶん優秀な冒険者を雇われたのですね」
「ゔぅーーーーっ!! うーーーーーー!!」
貴族の男はトールが呻く姿を見ると、顔を顰めて男たちに言った。
「それを取ってやれ」
「は、はいっ!!」
命令された男が慌てて猿轡を外すと、トールは貴族の男をギリっと睨む。
「ヴァルナルさんはっ?! リナさんはどこだっ!! 商団の人たちは……っ?!」
「おや、ずいぶん彼らと親しかったのですね。しかしその者たちはもう事切れていましたよ」
「──なっ……!!」
「……っ!!」
貴族の男の言葉に、トールが驚愕していると、ティナが息を呑む気配がした。
両親の死を告げられ、酷くショックを受けているティナを慰めてあげたくても、今の自分には何も出来ないことを、トールは歯痒く思う。
「ん? その娘は何だ? まさかあの女魔術師の娘じゃないだろうな?」
ティナに気付いた貴族の男が怪訝そうな顔をすると、盗賊たちが恐る恐る説明する。
「あ、いや、その、一緒にいたので、ついでに連れて来たんですが……」
「何だとっ?! 王子以外は殺せと言っただろうがっ!! 僅かな痕跡も禍根も残す訳にはいかんのだっ!! その娘を殺せっ!!」
「は、はいっ!!」
非情な貴族が盗賊たちに命令する。
貴族の言葉に逆らえない盗賊たちはナイフを抜くと、ティナへその刃を突き立てようと、腕を振り上げた。
「おお! そうしようぜ! こちとら徹夜で探してんだし、深夜手当ということで!」
「へへっ、いいねぇ! さっさとこいつを依頼主に渡して飲みに行こうぜ!!」
盗賊たちは幼いトールたちにすっかり油断していた。そのおかげで今すぐティナを殺そうとしなかったことは幸運だったかもしれない。
(……くそっ! こんな奴らに捕まるなんて……! ティナだけでも逃さないと……!)
トールは身体をロープで縛られ、猿轡をはめられた後、ズタ袋に入れられて運ばれていた。おそらくティナも同じ状況だと思うが、周りの様子がわからず心配だ。
(ティナを奴隷商に売ると言っているから、傷つけていないとは思うけれど……)
盗賊たちに捕まってからしばらくして、トールはズタ袋から放り出された。
(痛っ!! ……っう……っ、ここは……?!)
「うっ!! うぅ……っ」
トールが放り出されたそばから、ティナの呻き声が聞こえて来た。
思わず声がした方向へ顔を向けると、土の上で倒れているティナの姿があった。
(ティナっ!! 大丈夫?!)
ティナもトールも猿轡をはめられており、喋ることはできないが、見たところ怪我はないようだった。
ティナの無事を確認したトールは、どこに連れて来られたのかと、周りを見渡したものの、一瞬、ここがどこだかわからなかった。
何故なら、たくさんの木々が根っこからひっくり返り、焼け焦げた土からは未だ燃えているのか、所々から煙が上がり、多数の死体が散乱している場所だったからだ。
──それはまるで、空から星が堕ちて来たような、凄惨な光景で。
(こ、ここは……っ!)
トールが余りにも酷い光景に絶句していると、後ろの方から足音が聞こえて来た。
「……全く、高い依頼金を払ったのに全滅するとは……。暗殺ギルドも大したことないな」
(……っ、こいつは……っ?!)
声がする方へ振り向くと、身なりが良い、いかにも貴族然とした男が立っていた。
「こうしてお会いするのは初めてですね。……それにしても殿下にここまで手を焼かされるとは思ってもいませんでしたよ。ずいぶん優秀な冒険者を雇われたのですね」
「ゔぅーーーーっ!! うーーーーーー!!」
貴族の男はトールが呻く姿を見ると、顔を顰めて男たちに言った。
「それを取ってやれ」
「は、はいっ!!」
命令された男が慌てて猿轡を外すと、トールは貴族の男をギリっと睨む。
「ヴァルナルさんはっ?! リナさんはどこだっ!! 商団の人たちは……っ?!」
「おや、ずいぶん彼らと親しかったのですね。しかしその者たちはもう事切れていましたよ」
「──なっ……!!」
「……っ!!」
貴族の男の言葉に、トールが驚愕していると、ティナが息を呑む気配がした。
両親の死を告げられ、酷くショックを受けているティナを慰めてあげたくても、今の自分には何も出来ないことを、トールは歯痒く思う。
「ん? その娘は何だ? まさかあの女魔術師の娘じゃないだろうな?」
ティナに気付いた貴族の男が怪訝そうな顔をすると、盗賊たちが恐る恐る説明する。
「あ、いや、その、一緒にいたので、ついでに連れて来たんですが……」
「何だとっ?! 王子以外は殺せと言っただろうがっ!! 僅かな痕跡も禍根も残す訳にはいかんのだっ!! その娘を殺せっ!!」
「は、はいっ!!」
非情な貴族が盗賊たちに命令する。
貴族の言葉に逆らえない盗賊たちはナイフを抜くと、ティナへその刃を突き立てようと、腕を振り上げた。
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