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手掛かり2
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「…………。嬢ちゃんはその場所を見つけてどうするんだい? 採集でもして大儲けするつもりかい?」
店主がギロリとティナを睨む。月下草は今や一株だけで金貨十枚もする希少な植物なのだ。その群生地を見つけたいと言えば、お金目当てだと思われて当然だろう。
「ち、違います! 私は月下草を栽培したいんです! そうすれば病気で苦しんでいる人も助けられるかなって……!」
ティナは慌てて訂正する。正直、両親が残してくれた財産だけで十分過ぎる程あるのだ。これ以上お金があっても使い道に困ってしまうだろう。
「ふーん、見上げた心がけだねぇ。まるで慈悲深い聖女様みたいじゃないか」
「うぇっ?! そ、そうですか? あはは……」
店主の口から”聖女”という言葉が出たことにティナはギクっとする。
自分の正体に気づかれていないとは思うが、何となくこの店主もイロナ同様、全てを見越しているような雰囲気を醸し出しているのだ。
「……月下草は精霊の許可なしに摘むと、二度と咲かないと言われているんだ。巷に流通している月下草はそうして乱獲されたものさ。だから年々入手が困難になるんだよ」
「……精霊……!」
ティナは店主の話に驚いた。両親が記録していたメモの中に、そんな情報は無かったからだ。
「お嬢ちゃんは精霊を見たことあるかい? もし精霊に気に入られたら、月下草を分けて貰えるかもしれないよ」
「あの、私精霊を見たことが無いんですけど……っ。どうすれば精霊を見ることが出来ますか?」
膨大な神聖力があるとはいえ、ティナは精霊を見たことが無かった。そもそもラーシャルード教は精霊の存在に懐疑的だった。だからティナも精霊について深く知ろうと思わなかったのだが……。
『僕見たことあるよー。トールにくっついてたよー』
「えっ?! アウルムは見たことがあるの?! トールに?!」
ティナはアウルムからもたらされた情報に驚愕する。アウルムが精霊を見れることにも驚いたが、トールのそばに精霊がいたとは思いもしなかったのだ。
「ん? トール? まさかトールヴァルド王子のことかい?」
「あ……! えっと……はい、そうですね……」
「お嬢ちゃんは殿下と知り合いだったのかい? さっきはただの平民って言ってたけど?」
確かに、アウルムの言葉からして二人は知り合いだということが予想できる。それにただの平民が王族を愛称で呼ぶことはあり得ないので、ティナが身分を偽っていると思われても仕方がない。
「わ、私は本当に平民です! トールとは、その……ブレンドレル魔法学院の同級生で……」
店主に嫌われたくないティナは、他意はないと伝えたくて必死に説明する。
「……ふーん、なるほどねぇ。だから殿下は眼鏡を必要とされていたんだね。大体のことは察したよ」
「え……。トールの眼鏡を知って……? あ! まさか!?」
ティナはトールが顔を隠すために、眼鏡を常に掛けていたと知っている。しかし、今考えれば、前髪と眼鏡を隠すだけでトールの存在感を隠すのは難しいことに気がついたのだ。
「殿下の眼鏡はわたしが作った魔道具だよ。あんたらに渡したブレスレットと同じ、認識阻害の魔法がかかっているんだよ」
「やっぱり! あの眼鏡は店主さんが作ったんですね?! すごい……っ! だから誰もトールに気付かなかったんだ!」
どうやらティナの想像以上にこの店主はすごい人物のようだった。
「ああ、どこから伝え聞いたのかはわからないが、ある時ひょっこりここに来て……ああ、そうか。精霊に聞いたんだねぇ」
店主は何やらぶつぶつと呟きながら考え込んでいたが、納得したようにうんうんと言っている。
店主がギロリとティナを睨む。月下草は今や一株だけで金貨十枚もする希少な植物なのだ。その群生地を見つけたいと言えば、お金目当てだと思われて当然だろう。
「ち、違います! 私は月下草を栽培したいんです! そうすれば病気で苦しんでいる人も助けられるかなって……!」
ティナは慌てて訂正する。正直、両親が残してくれた財産だけで十分過ぎる程あるのだ。これ以上お金があっても使い道に困ってしまうだろう。
「ふーん、見上げた心がけだねぇ。まるで慈悲深い聖女様みたいじゃないか」
「うぇっ?! そ、そうですか? あはは……」
店主の口から”聖女”という言葉が出たことにティナはギクっとする。
自分の正体に気づかれていないとは思うが、何となくこの店主もイロナ同様、全てを見越しているような雰囲気を醸し出しているのだ。
「……月下草は精霊の許可なしに摘むと、二度と咲かないと言われているんだ。巷に流通している月下草はそうして乱獲されたものさ。だから年々入手が困難になるんだよ」
「……精霊……!」
ティナは店主の話に驚いた。両親が記録していたメモの中に、そんな情報は無かったからだ。
「お嬢ちゃんは精霊を見たことあるかい? もし精霊に気に入られたら、月下草を分けて貰えるかもしれないよ」
「あの、私精霊を見たことが無いんですけど……っ。どうすれば精霊を見ることが出来ますか?」
膨大な神聖力があるとはいえ、ティナは精霊を見たことが無かった。そもそもラーシャルード教は精霊の存在に懐疑的だった。だからティナも精霊について深く知ろうと思わなかったのだが……。
『僕見たことあるよー。トールにくっついてたよー』
「えっ?! アウルムは見たことがあるの?! トールに?!」
ティナはアウルムからもたらされた情報に驚愕する。アウルムが精霊を見れることにも驚いたが、トールのそばに精霊がいたとは思いもしなかったのだ。
「ん? トール? まさかトールヴァルド王子のことかい?」
「あ……! えっと……はい、そうですね……」
「お嬢ちゃんは殿下と知り合いだったのかい? さっきはただの平民って言ってたけど?」
確かに、アウルムの言葉からして二人は知り合いだということが予想できる。それにただの平民が王族を愛称で呼ぶことはあり得ないので、ティナが身分を偽っていると思われても仕方がない。
「わ、私は本当に平民です! トールとは、その……ブレンドレル魔法学院の同級生で……」
店主に嫌われたくないティナは、他意はないと伝えたくて必死に説明する。
「……ふーん、なるほどねぇ。だから殿下は眼鏡を必要とされていたんだね。大体のことは察したよ」
「え……。トールの眼鏡を知って……? あ! まさか!?」
ティナはトールが顔を隠すために、眼鏡を常に掛けていたと知っている。しかし、今考えれば、前髪と眼鏡を隠すだけでトールの存在感を隠すのは難しいことに気がついたのだ。
「殿下の眼鏡はわたしが作った魔道具だよ。あんたらに渡したブレスレットと同じ、認識阻害の魔法がかかっているんだよ」
「やっぱり! あの眼鏡は店主さんが作ったんですね?! すごい……っ! だから誰もトールに気付かなかったんだ!」
どうやらティナの想像以上にこの店主はすごい人物のようだった。
「ああ、どこから伝え聞いたのかはわからないが、ある時ひょっこりここに来て……ああ、そうか。精霊に聞いたんだねぇ」
店主は何やらぶつぶつと呟きながら考え込んでいたが、納得したようにうんうんと言っている。
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