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大精霊3
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湖を縦断しているとはいえ、そもそもが大きいので渡り切るのにかなりの時間を要した。それでも美しい風景を見ながらだとあっという間に感じる。
《こっちよ》
《この森の奥を進むの》
《もうすぐ到着よ》
湖の反対側へと続いている森は、ティナが通って来た森とはまた違う雰囲気を醸し出していた。
神聖で静謐な空気が流れていて、まるで別世界のような錯覚を覚える。
「ここってまるで<神域>みたい……。いや、違う。もっと……」
大神殿の奥の<神域>は、聖女や大神官が祈祷を捧げる祭壇がある場所だ。ティナはこの場所に<神域>と似た雰囲気を感じ取る。
しかしこの奥から感じるのは、もっともっと強い<聖気>だ。
《ほら、到着したわ!》
《これは精霊樹よ》
《精霊が生まれる場所なの》
「……っ! ……す、すごい……綺麗……」
ティナは目の前に広がる光景に絶句する。
大きな木にいくつもの実がなっていて、その全てが淡く光を放っているのだ。
暗闇に覆われた森の中で、温かい光を灯す大樹はまるで、希望のようだとティナは感じた。
暗い夜空に光を追い求めてしまう人間の本能が、そう思わせたのかもしれない。
ティナは美しすぎる光景を見て、無意識に涙を流す。感動で胸が詰まって泣くなんて、生まれて初めてだ。
《この実の一つ一つに精霊が宿っているわ》
《光が満ちたら精霊が生まれるのよ》
《ルーアシェイア様が力を分け与えているの》
ティナは泣いてばかりではいられないと涙を拭うと、自分の気を引き締めた。
精霊たちが手伝って欲しいと言うのだから、この精霊樹に何か問題があるのだろう。
「もしかして、ルーアシェイア様の力が弱まっていることが、精霊樹にも影響しているんですか?」
ティナは精霊たちが置かれている状況を理解した。これまでの話をまとめてみると、自ずと答えは見えてくるのだ。
《そうよ。精霊がなかなか生まれてこなくなっちゃったの》
《このままでは精霊の数が減り過ぎちゃうわ》
《そうなると世界中に瘴気が溢れちゃう》
「えっ……?!」
精霊と瘴気が関係あると知ったティナは衝撃を受ける。
何故なら精霊を否定しているラーシャルード教の教えは、瘴気を溢れさせることと同義だからだ。
それはすなわち、人々を救うための信仰が逆に人々を苦しめていることに他ならない。
(一体どういうことなのっ?! どうしてアコンニエミ聖国は精霊を否定するの……?!)
精霊の話を聞けば聞くほどアコンニエミ聖国に対する疑念が強くなっていく。
しかも知らなかったとはいえ、ティナ自身聖女としてラーシャルード教の布教を手伝って来た。それは間接的に精霊たちを苦しめて来たことに変わりないのだ。
「私は何をすればいいですか? 何でも言ってくださいっ!!」
ティナは全身全霊をかけて精霊たちに協力しようと心に決める。
それで自分の罪が許されるとは思わない。だけど精霊たちを救えるのなら、何を差し出しても構わないと心から思ったのだ。
《こっちよ》
《この森の奥を進むの》
《もうすぐ到着よ》
湖の反対側へと続いている森は、ティナが通って来た森とはまた違う雰囲気を醸し出していた。
神聖で静謐な空気が流れていて、まるで別世界のような錯覚を覚える。
「ここってまるで<神域>みたい……。いや、違う。もっと……」
大神殿の奥の<神域>は、聖女や大神官が祈祷を捧げる祭壇がある場所だ。ティナはこの場所に<神域>と似た雰囲気を感じ取る。
しかしこの奥から感じるのは、もっともっと強い<聖気>だ。
《ほら、到着したわ!》
《これは精霊樹よ》
《精霊が生まれる場所なの》
「……っ! ……す、すごい……綺麗……」
ティナは目の前に広がる光景に絶句する。
大きな木にいくつもの実がなっていて、その全てが淡く光を放っているのだ。
暗闇に覆われた森の中で、温かい光を灯す大樹はまるで、希望のようだとティナは感じた。
暗い夜空に光を追い求めてしまう人間の本能が、そう思わせたのかもしれない。
ティナは美しすぎる光景を見て、無意識に涙を流す。感動で胸が詰まって泣くなんて、生まれて初めてだ。
《この実の一つ一つに精霊が宿っているわ》
《光が満ちたら精霊が生まれるのよ》
《ルーアシェイア様が力を分け与えているの》
ティナは泣いてばかりではいられないと涙を拭うと、自分の気を引き締めた。
精霊たちが手伝って欲しいと言うのだから、この精霊樹に何か問題があるのだろう。
「もしかして、ルーアシェイア様の力が弱まっていることが、精霊樹にも影響しているんですか?」
ティナは精霊たちが置かれている状況を理解した。これまでの話をまとめてみると、自ずと答えは見えてくるのだ。
《そうよ。精霊がなかなか生まれてこなくなっちゃったの》
《このままでは精霊の数が減り過ぎちゃうわ》
《そうなると世界中に瘴気が溢れちゃう》
「えっ……?!」
精霊と瘴気が関係あると知ったティナは衝撃を受ける。
何故なら精霊を否定しているラーシャルード教の教えは、瘴気を溢れさせることと同義だからだ。
それはすなわち、人々を救うための信仰が逆に人々を苦しめていることに他ならない。
(一体どういうことなのっ?! どうしてアコンニエミ聖国は精霊を否定するの……?!)
精霊の話を聞けば聞くほどアコンニエミ聖国に対する疑念が強くなっていく。
しかも知らなかったとはいえ、ティナ自身聖女としてラーシャルード教の布教を手伝って来た。それは間接的に精霊たちを苦しめて来たことに変わりないのだ。
「私は何をすればいいですか? 何でも言ってくださいっ!!」
ティナは全身全霊をかけて精霊たちに協力しようと心に決める。
それで自分の罪が許されるとは思わない。だけど精霊たちを救えるのなら、何を差し出しても構わないと心から思ったのだ。
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