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精霊樹1
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精霊たちに導かれたティナとアウルムは、湖の奥にある精霊樹へと辿り着いた。
精霊樹は神々しく、たくさんの実が光る幻想的な光景は、見るもの全てを魅了すると同時に畏怖の念を抱かせる美しさがあった。
しかし今、この精霊樹は力の源であるルーアシェイアの弱体化の影響を受け、精霊が生まれにくくなっているという。
《あなたの神聖力を精霊樹に分けて欲しいの》
《幹に手を当てて、力を流し込むのよ》
《もし反発されたらすぐ離れてね》
「はいっ、やってみます!」
ティナは精霊たちに言われた通り、精霊樹に近づくとその幹に手を当てる。
すると、まるで包み込むような優しい気がティナの身体を駆け巡った。
《精霊樹が受け入れたわ!》
ティナは精霊樹から流れて来た気と自身の魔力を馴染ませる。誰にも言われていないのに、そうすることが正解だと何故か理解できたのだ。
そうして、ティナは自分が持ちうる神聖力を全て精霊樹に捧げるつもりで流し込んで行く。
身体中からごっそりと何かが抜けていくような感覚に襲われるが、ティナは構わずに神聖力を流し続けた。
セーデルルンド王国で行われる聖霊降臨祭でも、毎回同じように魔力が抜かれていたのだ。それに比べればまだ神聖力に余裕はある。
──何より、精霊樹を助けたいという想いが、ティナを突き動かしているのだ。
《す、すごい……!》
《人の子でここまで神聖力を持っているなんて!》
《エーレンフリートでもここまでじゃなかったわ!》
精霊たちが感嘆の声を上げる中、ティナは神聖力を注ぎ続けた。すると、力の流れがゆっくりになる感覚に気がついた。
(あ……! アウルム……!)
ふと下を見ると、アウルムの身体から魔力が精霊樹に流れていく光景が見えた。アウルムも先ほどの言葉通り、手伝ってくれているのだ。
《フローズヴィトニルの子も頑張ってくれているわ!》
《この子もすごく魔力が多いのね!》
《彼女とよく似た波長ね》
ティナとアウルムが協力しながら力を流し込んでいると、突然繋がっていた径が切断された。
「えっ……どうして……」
流していた神聖力の供給が断ち切られたような感覚に、ティナは戸惑ってしまう。
《精霊樹があなたを守ろうとしたのね》
《これ以上力を注ぐと倒れてしまうわ》
《今日はここまでにしましょう。無理は良くないわ》
どうやら精霊樹がティナを心配してくれたらしい。
自身も弱っているのに、ティナを気遣ってくれる精霊樹の優しさにティナは嬉しくなる。
「精霊樹さん、心配してくれて有難うございます」
ティナの言葉を精霊樹が理解できたのかはわからない。けれど、精霊樹の光が温かくて優しいから、ティナの想いはちゃんと伝わっているだろう。
「アウルムも手伝ってくれて有難うね。おかげでとても楽だったよ」
『ほんとー? 次も一緒に手伝うよー!』
ティナを手伝えたのが嬉しかったのだろう、アウルムが尻尾をぶんぶんと振り回している。
精霊樹は神々しく、たくさんの実が光る幻想的な光景は、見るもの全てを魅了すると同時に畏怖の念を抱かせる美しさがあった。
しかし今、この精霊樹は力の源であるルーアシェイアの弱体化の影響を受け、精霊が生まれにくくなっているという。
《あなたの神聖力を精霊樹に分けて欲しいの》
《幹に手を当てて、力を流し込むのよ》
《もし反発されたらすぐ離れてね》
「はいっ、やってみます!」
ティナは精霊たちに言われた通り、精霊樹に近づくとその幹に手を当てる。
すると、まるで包み込むような優しい気がティナの身体を駆け巡った。
《精霊樹が受け入れたわ!》
ティナは精霊樹から流れて来た気と自身の魔力を馴染ませる。誰にも言われていないのに、そうすることが正解だと何故か理解できたのだ。
そうして、ティナは自分が持ちうる神聖力を全て精霊樹に捧げるつもりで流し込んで行く。
身体中からごっそりと何かが抜けていくような感覚に襲われるが、ティナは構わずに神聖力を流し続けた。
セーデルルンド王国で行われる聖霊降臨祭でも、毎回同じように魔力が抜かれていたのだ。それに比べればまだ神聖力に余裕はある。
──何より、精霊樹を助けたいという想いが、ティナを突き動かしているのだ。
《す、すごい……!》
《人の子でここまで神聖力を持っているなんて!》
《エーレンフリートでもここまでじゃなかったわ!》
精霊たちが感嘆の声を上げる中、ティナは神聖力を注ぎ続けた。すると、力の流れがゆっくりになる感覚に気がついた。
(あ……! アウルム……!)
ふと下を見ると、アウルムの身体から魔力が精霊樹に流れていく光景が見えた。アウルムも先ほどの言葉通り、手伝ってくれているのだ。
《フローズヴィトニルの子も頑張ってくれているわ!》
《この子もすごく魔力が多いのね!》
《彼女とよく似た波長ね》
ティナとアウルムが協力しながら力を流し込んでいると、突然繋がっていた径が切断された。
「えっ……どうして……」
流していた神聖力の供給が断ち切られたような感覚に、ティナは戸惑ってしまう。
《精霊樹があなたを守ろうとしたのね》
《これ以上力を注ぐと倒れてしまうわ》
《今日はここまでにしましょう。無理は良くないわ》
どうやら精霊樹がティナを心配してくれたらしい。
自身も弱っているのに、ティナを気遣ってくれる精霊樹の優しさにティナは嬉しくなる。
「精霊樹さん、心配してくれて有難うございます」
ティナの言葉を精霊樹が理解できたのかはわからない。けれど、精霊樹の光が温かくて優しいから、ティナの想いはちゃんと伝わっているだろう。
「アウルムも手伝ってくれて有難うね。おかげでとても楽だったよ」
『ほんとー? 次も一緒に手伝うよー!』
ティナを手伝えたのが嬉しかったのだろう、アウルムが尻尾をぶんぶんと振り回している。
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