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大魔導士2
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「ふぉっふぉっふぉ。坊ちゃんは随分博識じゃのう。しかも勘が鋭いと来た。もしかして坊ちゃんの名前はトール、かのう?」
「え……どうしてそれを……?!」
トールはノアが自分の名前を──愛称を知っていることに驚いた。いくら大魔導士とはいえ、自分のことを知っているはずがないのだ。
「ふぉっふぉっふぉ。そう警戒せんでもええぞい。坊ちゃんのことは嬢ちゃんから聞いとるでの」
「嬢ちゃんって……っ!? まさか、ティナ、ですか……?」
「やはり坊ちゃんは嬢ちゃんの知り合いじゃったか」
トールはノアと初めて会った時からずっと疑問に思っていたことがあった。それはノアが自分と誰かを比べるような発言を何回もしていたことだ。
「ティナはっ?! ティナはここにいるんですかっ?! もしいるのなら会わせて下さいっ!! お願いします!!」
ようやく見つけたティナの手掛かりを逃がさないよう、トールはノアに必死に頼み込んだ。
きっとティナは自分に会いたくないと思っているだろう。だけどトールはそれでもティナを諦められないのだ。
もしもう一度会えるなら、その時は何がなんでもティナに許してもらい、自分の正直な気持ちを伝えたいと思っている。
「まあまあ落ち着くのじゃ。嬢ちゃんはもうここにはおらんよ。三日ほど前に出て行ったでな」
「……あ、すみません……。そうですか、ティナはもういないんですね……」
ノア曰く、ティナはすでにここから去った後らしい。どうやらトールは一足遅かったようだ。
「まあ、出て行ったと言ったが、またここに帰って来るって言っとったぞい。ここには嬢ちゃんの部屋もあるからのう」
「え、そうなんですか?」
ノアの話を聞いたトールは意外に思う。念願の冒険者になったティナが、定住出来る場所を作っているとは思わなかったのだ。
彼女ならきっと、一つの場所に留まらず、世界中を冒険するだろうと思っていたのだが……。
「ほらほら、突っ立っとらんで座りんしゃい。聞きたいことがあればちゃんと教えるでな」
「あ、はい」
小屋の中に入ってから、ずっと立ちっぱなしだったことに気づいたトールは、ノアに言われるがまま席についた。
「…………はあ。」
椅子に座わったトールから長いため息が出る。
一ヶ月もの間、ずっと野宿だったトールは、椅子に座ることすら随分久しぶりだったのだ。そんな状態だったからか、椅子に座った瞬間、どっと疲れが押し寄せて来た。
《トール大丈夫?》
「うん、大丈夫だよ」
ずっと様子を窺っていたルシオラが心配そうに声をかけて来た。トールがかなり疲れて見えるらしい。
「いくら精霊を連れとっても、馬で森を移動するのは大変だったじゃろ。このお茶でも飲んでゆっくり休むがいい」
いつの間にやら、お茶を用意したノアが戻って来た。よく見れば小屋の中の設備は充実していて、そこら辺の貴族が住む屋敷より快適そうだ。
「え……どうしてそれを……?!」
トールはノアが自分の名前を──愛称を知っていることに驚いた。いくら大魔導士とはいえ、自分のことを知っているはずがないのだ。
「ふぉっふぉっふぉ。そう警戒せんでもええぞい。坊ちゃんのことは嬢ちゃんから聞いとるでの」
「嬢ちゃんって……っ!? まさか、ティナ、ですか……?」
「やはり坊ちゃんは嬢ちゃんの知り合いじゃったか」
トールはノアと初めて会った時からずっと疑問に思っていたことがあった。それはノアが自分と誰かを比べるような発言を何回もしていたことだ。
「ティナはっ?! ティナはここにいるんですかっ?! もしいるのなら会わせて下さいっ!! お願いします!!」
ようやく見つけたティナの手掛かりを逃がさないよう、トールはノアに必死に頼み込んだ。
きっとティナは自分に会いたくないと思っているだろう。だけどトールはそれでもティナを諦められないのだ。
もしもう一度会えるなら、その時は何がなんでもティナに許してもらい、自分の正直な気持ちを伝えたいと思っている。
「まあまあ落ち着くのじゃ。嬢ちゃんはもうここにはおらんよ。三日ほど前に出て行ったでな」
「……あ、すみません……。そうですか、ティナはもういないんですね……」
ノア曰く、ティナはすでにここから去った後らしい。どうやらトールは一足遅かったようだ。
「まあ、出て行ったと言ったが、またここに帰って来るって言っとったぞい。ここには嬢ちゃんの部屋もあるからのう」
「え、そうなんですか?」
ノアの話を聞いたトールは意外に思う。念願の冒険者になったティナが、定住出来る場所を作っているとは思わなかったのだ。
彼女ならきっと、一つの場所に留まらず、世界中を冒険するだろうと思っていたのだが……。
「ほらほら、突っ立っとらんで座りんしゃい。聞きたいことがあればちゃんと教えるでな」
「あ、はい」
小屋の中に入ってから、ずっと立ちっぱなしだったことに気づいたトールは、ノアに言われるがまま席についた。
「…………はあ。」
椅子に座わったトールから長いため息が出る。
一ヶ月もの間、ずっと野宿だったトールは、椅子に座ることすら随分久しぶりだったのだ。そんな状態だったからか、椅子に座った瞬間、どっと疲れが押し寄せて来た。
《トール大丈夫?》
「うん、大丈夫だよ」
ずっと様子を窺っていたルシオラが心配そうに声をかけて来た。トールがかなり疲れて見えるらしい。
「いくら精霊を連れとっても、馬で森を移動するのは大変だったじゃろ。このお茶でも飲んでゆっくり休むがいい」
いつの間にやら、お茶を用意したノアが戻って来た。よく見れば小屋の中の設備は充実していて、そこら辺の貴族が住む屋敷より快適そうだ。
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