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第19話 ②
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「今はわからなくて当然だけど、でもずっと花に触れているとその内わかるようになるよ」
「本当ですの?! だったらわたくし、このお店で働きたいですわ!!」
「はっ?!」
私は突然の申し出に驚いた。確かに自分の子供に手伝わせるお店もあるけれど、フィーネちゃんは私の妹どころか貴族令嬢なのだ。
そんなフィーネちゃんを働かせるなんて出来るわけがない。
「いやいや! それは流石に無理でしょ!! 貴族のご令嬢にそんな事をさせるわけにはいかないよ!」
不敬罪で捕まりたくないし、何よりご家族だって許可しないだろう。慌ててお断りする私に、フィーネちゃんはすごくガッカリしている。
(……くっ! そんな顔して頬を膨らませるの反則……っ!!)
自分では真っ当なことを言っているつもりなのに、ものすごく意地悪しているような罪悪感が湧いてくる。
他人の私でもこうなんだから、フィーネちゃんのご家族だったらもっと焦るかもしれない。フィーネちゃんには望みを叶えてあげたくなる不思議な魅力があるのだ。
「そこを何とかお願いしますわ! もちろん賃金は頂きません!!」
「ええーーっ!! いやいや、そういう問題じゃないから!!」
意外なことにフィーネちゃんは諦めること無く、再び懇願してくる。
そこまでして私のお店で働きたいと言ってくれるのはすごく嬉しいけれど、ここは心を鬼にしてでも断らなければならない。
可愛いフィーネちゃんを傷つけること無く断る方法はないものかと考えていると、救いの手を差し伸べる人物が現れた。
「っ、アンちゃんごめんね! うちの妹が迷惑をかけなかった?」
急いで用事を終わらせてきたのだろう、ヴェルナーさんが息を切らしながらお店に駆け込んできた。
「あっ! ヴェルナーさん、お疲れさまです! 取り敢えず冷たいクロイターティ飲まれますか?」
「はぁ、はぁ……っ、え、いいの? じゃあ、お願いできるかな?」
「少々お待ち下さいね」
私はキッチンへと向かい、ツィトローネといくつかのクラテールを入れて冷やしておいた水をコップに注ぐと、ヴェルナーさんの元へと向かう。
「お待たせしました! ツィトローネがお嫌いでなければどうぞ!」
「お! いい香りだね! もちろんいただくよ。有難う!」
ヴェルナーさんはクロイターティを受け取ると美味しそうにゴクゴクと飲んでくれた。
「はーっ! 美味い! アンちゃんが作るものはどれも美味しいね!」
「気に入って貰えて嬉しいです。そのクロイターティ私も好きなんですよ」
ヴェルナーさんに美味しいと言って貰えて喜んでいると、フィーネちゃんがすっごく羨ましそうにクロイターティが入っていたコップを凝視していた。
「フィーネちゃんも飲んでみる? あ、ホーニッヒ入れても美味しいよ?」
「宜しいんですの?! 是非頂きたいですわ! ホーニッヒ入りで飲んでみたいですわ!!」
ぱぁっと笑顔になったフィーネちゃんに待って貰い、ツィトローネ入りのクロイターティにホーニッヒを加えて持っていく。
「有難うございます! いただきますわ!!」
フィーネちゃんものどが渇いていたようで、ヴェルナーさんと同じようにゴクゴクと飲んでくれた。
こうして見ると流石兄弟、飲み方がそっくりだ。
そうしてクロイターティを飲み終え、一息ついたところでフィーネちゃんのお願いの件をヴェルナーさんに相談した。
「う~~ん、そうだなぁ……。俺はどっちかと言うと賛成なんだよね。うちの家訓は”可愛い子には旅をさせよ”だしね」
「え? ヴェルナーさんは賛成なんですか?!」
「お兄様……!」
てっきりフィーネちゃんに諦めるよう説得してくれると思っていたのに、とんだ伏兵がいたもんだ。
* * * * * *
❀名前解説❀
フィングストローゼ→芍薬
ペオーニエ→牡丹
ツィトローネ→レモン
「本当ですの?! だったらわたくし、このお店で働きたいですわ!!」
「はっ?!」
私は突然の申し出に驚いた。確かに自分の子供に手伝わせるお店もあるけれど、フィーネちゃんは私の妹どころか貴族令嬢なのだ。
そんなフィーネちゃんを働かせるなんて出来るわけがない。
「いやいや! それは流石に無理でしょ!! 貴族のご令嬢にそんな事をさせるわけにはいかないよ!」
不敬罪で捕まりたくないし、何よりご家族だって許可しないだろう。慌ててお断りする私に、フィーネちゃんはすごくガッカリしている。
(……くっ! そんな顔して頬を膨らませるの反則……っ!!)
自分では真っ当なことを言っているつもりなのに、ものすごく意地悪しているような罪悪感が湧いてくる。
他人の私でもこうなんだから、フィーネちゃんのご家族だったらもっと焦るかもしれない。フィーネちゃんには望みを叶えてあげたくなる不思議な魅力があるのだ。
「そこを何とかお願いしますわ! もちろん賃金は頂きません!!」
「ええーーっ!! いやいや、そういう問題じゃないから!!」
意外なことにフィーネちゃんは諦めること無く、再び懇願してくる。
そこまでして私のお店で働きたいと言ってくれるのはすごく嬉しいけれど、ここは心を鬼にしてでも断らなければならない。
可愛いフィーネちゃんを傷つけること無く断る方法はないものかと考えていると、救いの手を差し伸べる人物が現れた。
「っ、アンちゃんごめんね! うちの妹が迷惑をかけなかった?」
急いで用事を終わらせてきたのだろう、ヴェルナーさんが息を切らしながらお店に駆け込んできた。
「あっ! ヴェルナーさん、お疲れさまです! 取り敢えず冷たいクロイターティ飲まれますか?」
「はぁ、はぁ……っ、え、いいの? じゃあ、お願いできるかな?」
「少々お待ち下さいね」
私はキッチンへと向かい、ツィトローネといくつかのクラテールを入れて冷やしておいた水をコップに注ぐと、ヴェルナーさんの元へと向かう。
「お待たせしました! ツィトローネがお嫌いでなければどうぞ!」
「お! いい香りだね! もちろんいただくよ。有難う!」
ヴェルナーさんはクロイターティを受け取ると美味しそうにゴクゴクと飲んでくれた。
「はーっ! 美味い! アンちゃんが作るものはどれも美味しいね!」
「気に入って貰えて嬉しいです。そのクロイターティ私も好きなんですよ」
ヴェルナーさんに美味しいと言って貰えて喜んでいると、フィーネちゃんがすっごく羨ましそうにクロイターティが入っていたコップを凝視していた。
「フィーネちゃんも飲んでみる? あ、ホーニッヒ入れても美味しいよ?」
「宜しいんですの?! 是非頂きたいですわ! ホーニッヒ入りで飲んでみたいですわ!!」
ぱぁっと笑顔になったフィーネちゃんに待って貰い、ツィトローネ入りのクロイターティにホーニッヒを加えて持っていく。
「有難うございます! いただきますわ!!」
フィーネちゃんものどが渇いていたようで、ヴェルナーさんと同じようにゴクゴクと飲んでくれた。
こうして見ると流石兄弟、飲み方がそっくりだ。
そうしてクロイターティを飲み終え、一息ついたところでフィーネちゃんのお願いの件をヴェルナーさんに相談した。
「う~~ん、そうだなぁ……。俺はどっちかと言うと賛成なんだよね。うちの家訓は”可愛い子には旅をさせよ”だしね」
「え? ヴェルナーさんは賛成なんですか?!」
「お兄様……!」
てっきりフィーネちゃんに諦めるよう説得してくれると思っていたのに、とんだ伏兵がいたもんだ。
* * * * * *
❀名前解説❀
フィングストローゼ→芍薬
ペオーニエ→牡丹
ツィトローネ→レモン
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