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第一章 港町グラード
episode 15 闇の奥
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松明の灯りだけを頼りに壁づたいにゆっくりと斜面を降りて行く。
平行感覚さえ失いそうになるほど暗くただ水の滴る音だけが響き、そんな中を真っ直ぐに進むしかなかった。
「ミスったわ。
完っ全にミスったわ。
こんな暗がりで音も気味悪いし、独りで来るなんて言わなきゃ良かった」
独り言でも呟いてなければ孤独に押し潰されそうな程の空間にあたしの声だけが響き渡る。
少し湿り気のある土壁は所々で岩があり、少しだけひんやりとしていた。
「なんか、ここには魔者は居なさそうね。
異臭もしないし、変なものも落ちてないし。
にしても、今回の旅は謎だらけ。
カルディアの行動にミーニャだけ入れない洞窟、それに役立たずの冠。
ま、冠は良いとしても、この洞窟が何なのかよね。
結界が張られて魔者がいない、ともなれば魔に対する何かあるってなるのに、ミーニャだけは入れない。
それがあるから分からないのよね。
それでもって復活した魔人。
そもそも前に来てて存在を知らなかったってことは誰かを依代にして儀式を行ったってことになるけど、あんな人は一緒に居なかったし。
であれば、魔人の肉体があるのを知っていて、更に復活させた……。
だったら何の為に?
復活させたらあんなことになるのは目に見えてる筈なのに。
ホント考えても分からないことだらけ」
だいぶ呟いた独り言のおかげで気持ちが暗くなることはなかった。
しかし、今回の旅は口に出したところで糸口となるものが見えてこない。
「ん?」
灯りの先の天井が少し低くなっていることに気づき、腕を伸ばし出来る限り先を照すと床が無くなっているように見え、気をつけながらゆっくりと近づいて見る。
「階段になってる。
こんなに降りたのに更に降りて行くのね」
しっかりとした階段には思えず、壁に手を付きゆっくり過ぎるほど一段ずつ降りて行くと、降りきった先は行き止まりであった。
「何もない?
結界まであって?」
土が少し盛り上がってる以外は何もなかった。
「嘘でしょ?
こんなとこまで独りで来たのに、何もないなんてあり得ないわよ」
と、何かしらないものかと壁から天井、床に至るまでくまなく松明を照らすと盛り上がった土の後ろに布が落ちていた。
「何かしら……。
文字が書いてる……。
この地に厄災訪れし刻、必要となる剣を借り受ける。
魔を断ち切る力を…………。
ここまでしか読めない、か。
でも、ここにはあの魔人に対抗出来る武器があったってことね」
収穫はこれしかなかったが、その剣があれば魔人を再び封じることが出来ると分かっただけでも良しとすべきと、来た道を足早に戻ることにした。
「ここにそんな武器があって結界があるなら、やっぱり魔に対する施しをしてあるってことよね。
それとも魔力かしら。
もし魔力の強い者を弾く結界だとしたら……ミーニャだけってのも不思議じゃないかも」
仮説には過ぎないが、霊と共鳴出来たミーニャであれば魔力が強くても不思議ではない。
現に、教えてもらった魔言語を口にすると魔法を使えないこともないから。
「仮にそうだとしたら、それだけ厳重に置かれていたその剣さえあれば魔人を封じることも魔者に対抗することも出来るってこと、か。
そうなれば、一体誰が何の為に持ち出したってことね。
しかもあれは結構古い感じがしたもの、今もその人が持っているかも分からないってことか」
少しだけ謎が解けた気がしたが、それに伴って新たな謎も垣間見えた。
そんな呟きを繰り返していると、外の明かりが射し込む出口が見え始めていた。
平行感覚さえ失いそうになるほど暗くただ水の滴る音だけが響き、そんな中を真っ直ぐに進むしかなかった。
「ミスったわ。
完っ全にミスったわ。
こんな暗がりで音も気味悪いし、独りで来るなんて言わなきゃ良かった」
独り言でも呟いてなければ孤独に押し潰されそうな程の空間にあたしの声だけが響き渡る。
少し湿り気のある土壁は所々で岩があり、少しだけひんやりとしていた。
「なんか、ここには魔者は居なさそうね。
異臭もしないし、変なものも落ちてないし。
にしても、今回の旅は謎だらけ。
カルディアの行動にミーニャだけ入れない洞窟、それに役立たずの冠。
ま、冠は良いとしても、この洞窟が何なのかよね。
結界が張られて魔者がいない、ともなれば魔に対する何かあるってなるのに、ミーニャだけは入れない。
それがあるから分からないのよね。
それでもって復活した魔人。
そもそも前に来てて存在を知らなかったってことは誰かを依代にして儀式を行ったってことになるけど、あんな人は一緒に居なかったし。
であれば、魔人の肉体があるのを知っていて、更に復活させた……。
だったら何の為に?
復活させたらあんなことになるのは目に見えてる筈なのに。
ホント考えても分からないことだらけ」
だいぶ呟いた独り言のおかげで気持ちが暗くなることはなかった。
しかし、今回の旅は口に出したところで糸口となるものが見えてこない。
「ん?」
灯りの先の天井が少し低くなっていることに気づき、腕を伸ばし出来る限り先を照すと床が無くなっているように見え、気をつけながらゆっくりと近づいて見る。
「階段になってる。
こんなに降りたのに更に降りて行くのね」
しっかりとした階段には思えず、壁に手を付きゆっくり過ぎるほど一段ずつ降りて行くと、降りきった先は行き止まりであった。
「何もない?
結界まであって?」
土が少し盛り上がってる以外は何もなかった。
「嘘でしょ?
こんなとこまで独りで来たのに、何もないなんてあり得ないわよ」
と、何かしらないものかと壁から天井、床に至るまでくまなく松明を照らすと盛り上がった土の後ろに布が落ちていた。
「何かしら……。
文字が書いてる……。
この地に厄災訪れし刻、必要となる剣を借り受ける。
魔を断ち切る力を…………。
ここまでしか読めない、か。
でも、ここにはあの魔人に対抗出来る武器があったってことね」
収穫はこれしかなかったが、その剣があれば魔人を再び封じることが出来ると分かっただけでも良しとすべきと、来た道を足早に戻ることにした。
「ここにそんな武器があって結界があるなら、やっぱり魔に対する施しをしてあるってことよね。
それとも魔力かしら。
もし魔力の強い者を弾く結界だとしたら……ミーニャだけってのも不思議じゃないかも」
仮説には過ぎないが、霊と共鳴出来たミーニャであれば魔力が強くても不思議ではない。
現に、教えてもらった魔言語を口にすると魔法を使えないこともないから。
「仮にそうだとしたら、それだけ厳重に置かれていたその剣さえあれば魔人を封じることも魔者に対抗することも出来るってこと、か。
そうなれば、一体誰が何の為に持ち出したってことね。
しかもあれは結構古い感じがしたもの、今もその人が持っているかも分からないってことか」
少しだけ謎が解けた気がしたが、それに伴って新たな謎も垣間見えた。
そんな呟きを繰り返していると、外の明かりが射し込む出口が見え始めていた。
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