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第二章 全てを見渡す島
episode 21 砲撃開始!!
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ゆっくりと大きくなる灯りと歌声に、虚ろな表情で前方の海原を眺める男達といった異様な光景。
こんなのを見せつけられると魔人の恐ろしさというのを改めて実感する。
「さぁ、もうすぐだよアテナ。
どうやって乗り切る?」
「どんな魔人か知らないけど、船に乗り込んで来ないのなら砲台を使うしかないと思うわ。
歌惑人魚に牽制の一発とバルバレルの船に一発ってとこよね」
「悪くない答えだね。
あたいも詳しくないから想像でしか言えないが、歌で惑してるなら敵対者を操ることも出来るだろうと踏まえ、歌を止めて尚且つ船の機能を奪うってことが先決と考えるよ。
その後はどうする?」
「それは……その場しのぎしかないじゃない!」
「……それを胸張って言えるアテナに関心するよ。
良く言えば臨機応変ってやつだね。
それで行くか!
なら砲台は任せな。
ミーニャ、一緒に来て」
「は、はいっ」
レディとミーニャは足早に砲台の準備に取り掛かり、残されたあたしはただただ船との距離を確かめるしかなかった。
「さぁて、どうなるのかしら?」
徐々に近づいて行く船とはっきりと聴こえる歌声に、不安で胸が締めつけられていく。
真正面に見える船との距離はあと僅か。
しかし、魔人の姿は見えない。
どこから、どうやって歌っているのかさえ分かればとも思うと、暗闇に少し苛立ちを覚える。
「レディ!
船の周りに適当に打ちこんで!
それで歌が途切れたら船にお願い」
「あいよ!
任せな、適当にやるよ」
船首にてレディ達も準備が終わったらしく、どうやらミーニャは火付け役をやるらしい。
「そろそろよ!」
「タイミングはこっちに任せな。
まだ、あと少し!
ミーニャ、準備はいいね!?」
「はい、大丈夫です!」
距離にしてあと僅か。
視界にはっきりと船の大きさまで見て取れる位置まで近づいた。
「……今だ、ミーニャ!」
「はいっ」
ミーニャが導火線に火を付けると、すぐにその場を離れしゃがみこむ。
それと同時に鳴り響いた轟音と煙に思わず体を震わせた。
「!!!
びっくりしたぁ」
上手く連携が取れていたのか、ミーニャは既に導火線の近くで松明の火を付ける準備をしている。
「そらっ!
いくよ!!」
またも鳴り響く轟音。
その先で大きな水しぶきが上がると、脳へと響いていた歌声がぴたりと止んだ。
「次いくよっ!」
レディの掛け声にミーニャは慎重に火を付けると、海の上で乾いた木が砕ける音が響き渡った。
その音のせいなのか、海を眺めていた海賊達はきょろきょろと辺りを見回し、正気に戻ったことを示していた。
「野郎ども!
減速して船へと近づけな!!」
レディの一喝に慌てふためく海賊だったが、状況を把握したのか各々準備に取り掛かっている。
「もう一発いくよ!
歌を唄わせるな!!」
またも海へ放つと、船へ向けた砲台はバルバレルの帆を粉々に砕いた。
これで航行は不能に陥ったと思った矢先、ゆっくり近づいていたはずが既に目の前で、外板同士がぶつかり合い船体を大きく揺らした。
「きゃあああ!」
立っていられないほど揺れた船にあたしはどうにか掴まると、レディ達のほうに目を向けた。
「大丈夫!?」
「なんとかな!」
応えたレディの腕にしがみつくミーニャを見て取れると安堵の吐息を洩らす。
「また聴こえる」
揺れが収まりそうになった途端、あの歌がしっかりと聴こえてくる。
すると、例の如く男達は虚ろな顔で船上を歩き回りだした。
こんなのを見せつけられると魔人の恐ろしさというのを改めて実感する。
「さぁ、もうすぐだよアテナ。
どうやって乗り切る?」
「どんな魔人か知らないけど、船に乗り込んで来ないのなら砲台を使うしかないと思うわ。
歌惑人魚に牽制の一発とバルバレルの船に一発ってとこよね」
「悪くない答えだね。
あたいも詳しくないから想像でしか言えないが、歌で惑してるなら敵対者を操ることも出来るだろうと踏まえ、歌を止めて尚且つ船の機能を奪うってことが先決と考えるよ。
その後はどうする?」
「それは……その場しのぎしかないじゃない!」
「……それを胸張って言えるアテナに関心するよ。
良く言えば臨機応変ってやつだね。
それで行くか!
なら砲台は任せな。
ミーニャ、一緒に来て」
「は、はいっ」
レディとミーニャは足早に砲台の準備に取り掛かり、残されたあたしはただただ船との距離を確かめるしかなかった。
「さぁて、どうなるのかしら?」
徐々に近づいて行く船とはっきりと聴こえる歌声に、不安で胸が締めつけられていく。
真正面に見える船との距離はあと僅か。
しかし、魔人の姿は見えない。
どこから、どうやって歌っているのかさえ分かればとも思うと、暗闇に少し苛立ちを覚える。
「レディ!
船の周りに適当に打ちこんで!
それで歌が途切れたら船にお願い」
「あいよ!
任せな、適当にやるよ」
船首にてレディ達も準備が終わったらしく、どうやらミーニャは火付け役をやるらしい。
「そろそろよ!」
「タイミングはこっちに任せな。
まだ、あと少し!
ミーニャ、準備はいいね!?」
「はい、大丈夫です!」
距離にしてあと僅か。
視界にはっきりと船の大きさまで見て取れる位置まで近づいた。
「……今だ、ミーニャ!」
「はいっ」
ミーニャが導火線に火を付けると、すぐにその場を離れしゃがみこむ。
それと同時に鳴り響いた轟音と煙に思わず体を震わせた。
「!!!
びっくりしたぁ」
上手く連携が取れていたのか、ミーニャは既に導火線の近くで松明の火を付ける準備をしている。
「そらっ!
いくよ!!」
またも鳴り響く轟音。
その先で大きな水しぶきが上がると、脳へと響いていた歌声がぴたりと止んだ。
「次いくよっ!」
レディの掛け声にミーニャは慎重に火を付けると、海の上で乾いた木が砕ける音が響き渡った。
その音のせいなのか、海を眺めていた海賊達はきょろきょろと辺りを見回し、正気に戻ったことを示していた。
「野郎ども!
減速して船へと近づけな!!」
レディの一喝に慌てふためく海賊だったが、状況を把握したのか各々準備に取り掛かっている。
「もう一発いくよ!
歌を唄わせるな!!」
またも海へ放つと、船へ向けた砲台はバルバレルの帆を粉々に砕いた。
これで航行は不能に陥ったと思った矢先、ゆっくり近づいていたはずが既に目の前で、外板同士がぶつかり合い船体を大きく揺らした。
「きゃあああ!」
立っていられないほど揺れた船にあたしはどうにか掴まると、レディ達のほうに目を向けた。
「大丈夫!?」
「なんとかな!」
応えたレディの腕にしがみつくミーニャを見て取れると安堵の吐息を洩らす。
「また聴こえる」
揺れが収まりそうになった途端、あの歌がしっかりと聴こえてくる。
すると、例の如く男達は虚ろな顔で船上を歩き回りだした。
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