自称!!美少女剣士の異世界探求 2

七海玲也

文字の大きさ
25 / 70
第二章 全てを見渡す島

episode 21 砲撃開始!!

しおりを挟む
 ゆっくりと大きくなる灯りと歌声に、虚ろな表情で前方の海原を眺める男達といった異様な光景。
 こんなのを見せつけられると魔人の恐ろしさというのを改めて実感する。

「さぁ、もうすぐだよアテナ。
 どうやって乗り切る?」

「どんな魔人か知らないけど、船に乗り込んで来ないのなら砲台を使うしかないと思うわ。
 歌惑人魚セイレーン牽制けんせいの一発とバルバレルの船に一発ってとこよね」

「悪くない答えだね。
 あたいも詳しくないから想像でしか言えないが、歌で惑してるなら敵対者を操ることも出来るだろうと踏まえ、歌を止めて尚且なおかつ船の機能を奪うってことが先決と考えるよ。
 その後はどうする?」

「それは……その場しのぎしかないじゃない!」

「……それを胸張って言えるアテナに関心するよ。
 良く言えば臨機応変ってやつだね。
 それで行くか!
 なら砲台は任せな。
 ミーニャ、一緒に来て」

「は、はいっ」

 レディとミーニャは足早に砲台の準備に取り掛かり、残されたあたしはただただ船との距離を確かめるしかなかった。

「さぁて、どうなるのかしら?」

 徐々に近づいて行く船とはっきりと聴こえる歌声に、不安で胸が締めつけられていく。
 真正面に見える船との距離はあと僅か。
 しかし、魔人の姿は見えない。
 どこから、どうやって歌っているのかさえ分かればとも思うと、暗闇に少し苛立ちを覚える。

「レディ!
 船の周りに適当に打ちこんで!
 それで歌が途切れたら船にお願い」

「あいよ!
 任せな、適当にやるよ」

 船首にてレディ達も準備が終わったらしく、どうやらミーニャは火付け役をやるらしい。

「そろそろよ!」

「タイミングはこっちに任せな。
 まだ、あと少し!
 ミーニャ、準備はいいね!?」

「はい、大丈夫です!」

 距離にしてあと僅か。
 視界にはっきりと船の大きさまで見て取れる位置まで近づいた。

「……今だ、ミーニャ!」

「はいっ」

 ミーニャが導火線に火を付けると、すぐにその場を離れしゃがみこむ。
 それと同時に鳴り響いた轟音と煙に思わず体を震わせた。

「!!!
 びっくりしたぁ」

 上手く連携が取れていたのか、ミーニャは既に導火線の近くで松明たいまつの火を付ける準備をしている。

「そらっ!
 いくよ!!」

 またも鳴り響く轟音。
 その先で大きな水しぶきが上がると、脳へと響いていた歌声がぴたりと止んだ。

「次いくよっ!」

 レディの掛け声にミーニャは慎重に火を付けると、海の上で乾いた木が砕ける音が響き渡った。
 その音のせいなのか、海を眺めていた海賊達はきょろきょろと辺りを見回し、正気に戻ったことを示していた。

「野郎ども!
 減速して船へと近づけな!!」

 レディの一喝に慌てふためく海賊だったが、状況を把握したのか各々準備に取り掛かっている。

「もう一発いくよ!
 歌を唄わせるな!!」

 またも海へ放つと、船へ向けた砲台はバルバレルの帆を粉々に砕いた。
 これで航行は不能に陥ったと思った矢先、ゆっくり近づいていたはずが既に目の前で、外板がいはん同士がぶつかり合い船体を大きく揺らした。

「きゃあああ!」

 立っていられないほど揺れた船にあたしはどうにか掴まると、レディ達のほうに目を向けた。

「大丈夫!?」

「なんとかな!」

 応えたレディの腕にしがみつくミーニャを見て取れると安堵の吐息を洩らす。

「また聴こえる」

 揺れが収まりそうになった途端、あの歌がしっかりと聴こえてくる。
 すると、例の如く男達は虚ろな顔で船上を歩き回りだした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...