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第三章 解き放ち神具
episode 50 一大事
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今度は自然の眩しさと熱気に一度顔を背けたが、眼前には目を見張る光景が広がっていた。
「一面砂漠!!」
「こいつは良い景色だね。
砂漠が広がり川も見え、ここでしか見れない景色かも知れないね」
「ほんと!
大きな川ね。
あっちのあれはオアシスかしら……。
にしても高いし暑いし。
で?
頂上にはこれを登っていけと?」
「だね。
入り口とは反対なのかな、ここは。
だからこの階段の存在を知らなかったってことだね」
「入る前に一周しても良かったけど、暑かったからね。
さ、行こうかしら?」
今度はあたしを先頭に頂上を目指し、不安定さが残る石階段を登っていく。
幾度か端の方が足によって欠けたりするあたり脆くなっているのが容易に感じられた。
「あと少し。
もう目の前よ」
誰に言ったわけではない。
暑さに高さ、不安定な足場に心が止まらぬよう自分に言い聞かせているのだ。
「や、やっと着いたわ。
ふぅぅぅ」
「中々の高さだね、こりゃ。
下で見るのとはわけが違うよ」
「レディはよく下を覗けるわ。
あたしは降りることすら考えられないくらいよ」
「疲れもあるからだろうに。
やっとここまで来たんだ、手掛かりをさっさと見つけようかい?」
「そうね、そうしましょ」
頂上は四人いるだけで多少狭く感じる足場で、あまり身動きが取れるほどではない。
その足場には様々な模様が描かれ、真ん中には一段高くなった石畳と窪み、それに王家の紋様が掘られているだけだった。
「特に手掛かりって手掛かりはないわね。
多分、あの窪みに剣があったんでしょ?」
「だね。
持ち去った手掛かりも特になさそうだし、困ったね」
「あの、お嬢様?
この窪みに剣が刺さっていたのですか?」
「そうみたいよ。
形も、ほら、あたしの剣身と一緒……?
ああああああ!!」
「どうしたいアテナ!?」
「分かった!
思い出したのよ!!
紋様のこと!」
「それどこで見たのさ」
「あたしの家!
領主の館の暖炉の上よ!!」
そうだった。
引き取られた小さな頃から見ていたのだ。
そしてそれはいつしか当たり前の風景になっていたので、今まで思い出すことが出来なかった。
「そう!
この剣が暖炉の上の壁に掛けられていて、その壁に紋様の描かれた布が垂れていたのよ!
それでもって、ここにほら!!」
剣の握りの更に下、柄頭に紋章が掘られていたのを思い出した。
「そんなところに紋章が。
こいつは持ち主でも忘れちゃうね。
腰鞘に収めた状態で正面から見るか、抜いて上に掲げ下から覗かないと中々見るもんじゃないからね」
「まさか、あたしが持っていたのね。
びっくりだわ、ホント」
「ここで整理すると、元々ここに刺さっていたのを誰かが持ち去り魔人王討伐に使われた後、洞窟に隠された。
そのあと誰かが必要になり、洞窟から持ち去ったあとアテナの家に行き着いたってことか」
「そういうことね。
多分だけど、あたしのいた帝国は昔、魔者と激しくやり合っていたらしいの。
それで誰かが使い領主の家で保管されたんじゃないかしら。
だからファルはーー」
「だね。
領主の家にあるのを知っていて、アテナが今の持ち主なのを知っていた。
だからわざわざ元のあった場所を教えたってことだね」
「そうね……。
でもよ、この剣だったのならここに来なくても良くない?
探し物は手元にあったわけだし」
「となると、ここに来させた意味があるはずだね。
単に元の持ち主の場所を教えたってことはないだろうし。
その剣には何かが足りないのかもね」
「足りない?
鞘もこの剣のだし、他には受け取ってないのよね」
「確か爺さんは神秘術が施されていたと言ってたね。
そして、この金字塔も神秘術を施して聖王を封じていたと……。
もしかすると、その剣に足りないのは神秘力ってことか」
「神秘力が足りない?
どうやって補うの?」
「それは分からないが、今ここで出来るのはそれをその窪みに差し込むことだろうね」
「分かったわ、やってみましょ。
それしかないものね」
静かに鞘から剣を抜き逆手に持ち直す。
そして、窪みに剣先を合わせると勢いよく剣身を押し込んだ。
すると、半分ほど埋まった剣に呼応するかのように足場に描かれた模様が淡い光を解き放ち、天に伸びたと思うとゆらゆらと中心へと流れ込んでいく。
その光を剣が全て吸い込むと激しく光輝き、一条の光が天へと向かっていった。
「びっくりし過ぎて声が出なかったわ」
「驚いたね。
神秘術というだけあって、光の仕掛けが施されていたんだね。
さあ、アテナ。
剣を抜いてごらんよ」
「そうね。
これで神秘力が備わったってことよね」
若干恐る恐る握りに手を伸ばす。
触った感じは特に変わった様子もなかったので、引き抜こうとした時だった。
「ん?
んん?
んんんっっ!
ねぇ、レディ?」
「なんだい?」
「抜けなくなっちゃったわよ?」
「は?」
「ほら!
うぬ~っ!!
はぁはぁはぁ……ね?」
「ばかやってないでさ、抜きなよ。
どれ、あたいが…………ぐぅっ…………。
抜けないね」
「ええええええええ!!
どうすんのこれ!
せっかくあたしが持ってたのに、これじゃあ意味がないわよ!」
「ど、どうしたもんかね?」
「ほんとっ!
どううううしてっ、抜けないのよ!!
はぁ!?
何で抜けなくなるわけよ、このっ!
ぐぬぬ、はぁ、抜けろっての!!!!」
手で抜けないなら足を使うしかないだろう。
あたしの蹴りは見事に剣身から外れ、鍔を捉えていた。
その結果、小枝を踏んだような乾いた音がなり、金属音と共に何かが転がっていた。
………………。
………………。
………………。
「折れちゃった……」
あたしの言葉が届いてないのか、全員が転がっている柄を眺め言葉を発せずにいた。
「一面砂漠!!」
「こいつは良い景色だね。
砂漠が広がり川も見え、ここでしか見れない景色かも知れないね」
「ほんと!
大きな川ね。
あっちのあれはオアシスかしら……。
にしても高いし暑いし。
で?
頂上にはこれを登っていけと?」
「だね。
入り口とは反対なのかな、ここは。
だからこの階段の存在を知らなかったってことだね」
「入る前に一周しても良かったけど、暑かったからね。
さ、行こうかしら?」
今度はあたしを先頭に頂上を目指し、不安定さが残る石階段を登っていく。
幾度か端の方が足によって欠けたりするあたり脆くなっているのが容易に感じられた。
「あと少し。
もう目の前よ」
誰に言ったわけではない。
暑さに高さ、不安定な足場に心が止まらぬよう自分に言い聞かせているのだ。
「や、やっと着いたわ。
ふぅぅぅ」
「中々の高さだね、こりゃ。
下で見るのとはわけが違うよ」
「レディはよく下を覗けるわ。
あたしは降りることすら考えられないくらいよ」
「疲れもあるからだろうに。
やっとここまで来たんだ、手掛かりをさっさと見つけようかい?」
「そうね、そうしましょ」
頂上は四人いるだけで多少狭く感じる足場で、あまり身動きが取れるほどではない。
その足場には様々な模様が描かれ、真ん中には一段高くなった石畳と窪み、それに王家の紋様が掘られているだけだった。
「特に手掛かりって手掛かりはないわね。
多分、あの窪みに剣があったんでしょ?」
「だね。
持ち去った手掛かりも特になさそうだし、困ったね」
「あの、お嬢様?
この窪みに剣が刺さっていたのですか?」
「そうみたいよ。
形も、ほら、あたしの剣身と一緒……?
ああああああ!!」
「どうしたいアテナ!?」
「分かった!
思い出したのよ!!
紋様のこと!」
「それどこで見たのさ」
「あたしの家!
領主の館の暖炉の上よ!!」
そうだった。
引き取られた小さな頃から見ていたのだ。
そしてそれはいつしか当たり前の風景になっていたので、今まで思い出すことが出来なかった。
「そう!
この剣が暖炉の上の壁に掛けられていて、その壁に紋様の描かれた布が垂れていたのよ!
それでもって、ここにほら!!」
剣の握りの更に下、柄頭に紋章が掘られていたのを思い出した。
「そんなところに紋章が。
こいつは持ち主でも忘れちゃうね。
腰鞘に収めた状態で正面から見るか、抜いて上に掲げ下から覗かないと中々見るもんじゃないからね」
「まさか、あたしが持っていたのね。
びっくりだわ、ホント」
「ここで整理すると、元々ここに刺さっていたのを誰かが持ち去り魔人王討伐に使われた後、洞窟に隠された。
そのあと誰かが必要になり、洞窟から持ち去ったあとアテナの家に行き着いたってことか」
「そういうことね。
多分だけど、あたしのいた帝国は昔、魔者と激しくやり合っていたらしいの。
それで誰かが使い領主の家で保管されたんじゃないかしら。
だからファルはーー」
「だね。
領主の家にあるのを知っていて、アテナが今の持ち主なのを知っていた。
だからわざわざ元のあった場所を教えたってことだね」
「そうね……。
でもよ、この剣だったのならここに来なくても良くない?
探し物は手元にあったわけだし」
「となると、ここに来させた意味があるはずだね。
単に元の持ち主の場所を教えたってことはないだろうし。
その剣には何かが足りないのかもね」
「足りない?
鞘もこの剣のだし、他には受け取ってないのよね」
「確か爺さんは神秘術が施されていたと言ってたね。
そして、この金字塔も神秘術を施して聖王を封じていたと……。
もしかすると、その剣に足りないのは神秘力ってことか」
「神秘力が足りない?
どうやって補うの?」
「それは分からないが、今ここで出来るのはそれをその窪みに差し込むことだろうね」
「分かったわ、やってみましょ。
それしかないものね」
静かに鞘から剣を抜き逆手に持ち直す。
そして、窪みに剣先を合わせると勢いよく剣身を押し込んだ。
すると、半分ほど埋まった剣に呼応するかのように足場に描かれた模様が淡い光を解き放ち、天に伸びたと思うとゆらゆらと中心へと流れ込んでいく。
その光を剣が全て吸い込むと激しく光輝き、一条の光が天へと向かっていった。
「びっくりし過ぎて声が出なかったわ」
「驚いたね。
神秘術というだけあって、光の仕掛けが施されていたんだね。
さあ、アテナ。
剣を抜いてごらんよ」
「そうね。
これで神秘力が備わったってことよね」
若干恐る恐る握りに手を伸ばす。
触った感じは特に変わった様子もなかったので、引き抜こうとした時だった。
「ん?
んん?
んんんっっ!
ねぇ、レディ?」
「なんだい?」
「抜けなくなっちゃったわよ?」
「は?」
「ほら!
うぬ~っ!!
はぁはぁはぁ……ね?」
「ばかやってないでさ、抜きなよ。
どれ、あたいが…………ぐぅっ…………。
抜けないね」
「ええええええええ!!
どうすんのこれ!
せっかくあたしが持ってたのに、これじゃあ意味がないわよ!」
「ど、どうしたもんかね?」
「ほんとっ!
どううううしてっ、抜けないのよ!!
はぁ!?
何で抜けなくなるわけよ、このっ!
ぐぬぬ、はぁ、抜けろっての!!!!」
手で抜けないなら足を使うしかないだろう。
あたしの蹴りは見事に剣身から外れ、鍔を捉えていた。
その結果、小枝を踏んだような乾いた音がなり、金属音と共に何かが転がっていた。
………………。
………………。
………………。
「折れちゃった……」
あたしの言葉が届いてないのか、全員が転がっている柄を眺め言葉を発せずにいた。
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