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第四章 新たなる魔人王
episode 58 新たな魔人王
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魔人王ドラキュリアの胸に突き刺さる煌神刃は玉座を貫き垂れ幕の後ろから伸ばされていた。
「だっ!?
誰なの?」
呼び掛けに応じることなく煌神刃は勢いよく上に掲げられ、魔人王は上半身を引き裂かれると一声も発することなく塵になっていった。
「誰だい!
出ておいで!!」
背中からレディの声がし、状況を飲み込んだあたしはゆっくりとその場から去りレディのいるところまで下がった。
「助けてやったのにその言い様は無いんじゃないかい?
気高い女性」
「その名を知っている!?」
レディは驚愕の声を出したが、驚いたのはあたしも同じだった。
その名前で呼んだ女性は生きているはずがなかったからだ。
「そう!
私のことはまだ覚えているだろ?」
垂れ幕から姿を現したのは死んだ筈のカルディアだった。
「カルディア!
あんた死んだんじゃ--」
「あたしは見たわよ、あなたが首筋を咬まれ倒れたところを--」
「そうさね、あれで確実に死んだよ。
人間としてはね」
「あんたまさか……」
「そうさ。
私は魔人として甦ったのさ。
それがドラキュリアを復活させた理由の一つだったわけでね」
「……バカやろう……」
レディの声は小さく色々な感情が沸き起こってやっと絞り出した言葉だった。
それに対してカルディアは笑顔を作り玉座へと腰をかけた。
「始めからそれでこの地に来たってことなのね!?」
「ああ、そうだ。
この地に最初訪れた時に発見してね。
そこで思いついたのさ、あと僅かな命を伸ばすには魔人になるしかないとね」
「僅かな命?」
「レディから聞いてないかい?
私達の傭兵部隊を裏切り壊滅に追い込んだことを。
あの時、私は致命傷を負い瀕死でもうすぐ死ぬんだと腹を括っていた。
そこに一人の金髪の女性が手を差し伸べて言ったのさ『死ぬには惜しい逸材ね。少し生き延びてみないかしら?』とね。
私は『生きられるものならね』と苦笑いして見せたわ。
そしたら彼女は液体の入った小さな小瓶を渡し飲むように言い、私はそれに従って震える手でやっと飲み込んだわ。
すぐに体は熱くなり動悸が激しく脈打つと目の前が歪み始め死を覚悟した時、彼女の一言を聞き終えると意識が遠退いていった。
次に目を覚ました時は傷が治り何とか動けるまでになっていたのさ」
「その女性は何て言ったのよ」
「彼女は『これは魔者の血を混ぜたもの、真に生きるには魔の者として生きなさい。さもなくばいずれ体は朽ちるわ』とね」
「そんなことって……」
「そう、それが有り得たのだから驚きしかないわ。
そして傷を癒す為に神秘術を施したら激痛に襲われ、彼女の言っていたことが本当だと悟ったのよ」
「カルディア……。
そうだとしても魔人になってまで生きたかったのか!?
あんたは……そんなんじゃなかっただろ!」
「そうさ、レディ。
私は自分の信じた正義を盾に生きてきた。
それを踏みにじったのは誰だい!?」
二人の視線が交わると凍てついた空気が漂い、いつしか周りの戦闘も停止していた。
「あたいだよ……あたいだけど!
何がそうさせるんだい!!」
「私を突き動かすもの、ね。
それは私の世界を創ること!
人間よりも高みに立ち人を統べる者として生きることさ」
「魔人王ドラキュリアと全く一緒じゃない?
だったら一緒にやれば良かったじゃない。
どのみちあたしが二人を滅ぼしてたろうけどさ」
「ふ、はっはっはっはっ!!
アテナ、この期に及んで随分と強気だね。
私がこいつで斬らなければ終わりだと思って助けたんだがね」
「ああっ!
確かに助けては貰ったわね、忘れてたわ。
でも、それは余計なお世話ってやつなのよ?
魔人に助けられたなんて言いふらされた日にはたまったもんじゃないからね」
「では、新たな魔人王となった私を滅ぼしてみたらいい。
それで名声が欲しいならな。
これも返してやろう」
座ったまま放られた剣はあたしの足元へ勢いよく突き刺さりそれを引き抜くが、あたしは構えずに下に向けたままにした。
「あたしは名声が欲しいわけじゃないのよね、残念ながら。
だからカルディアと戦う理由もないし、なんなら思い直してくれないかなとも思ってるわけ」
「思い直すとは?
私は始めからそのつもりだったんだよ。
それにはドラキュリアの存在は利用する以外は邪魔でしかなかったのさ。
それにこの力を見るがいい。
出でよ!
眷属ども、我の元へ集え!」
カルディアの号令にどこからともなく羽音と奇音が聞こえて来ると、カルディアの傍に吸血蝙蝠が牙を剥き出しに
集まっていた。
「どうだい?
魔人王ともなると人間にはない力も扱えるのさ。
こいつらに吸われるとお前達も下級魔人の仲間入りってやつさ」
「えげつないわね。
しかもこの数じゃどうすることも出来ないわ」
吸血蝙蝠の数に圧倒され眺めていると、視界の端で動く人影が目に映った。
「カルディアー!!」
「テティーアン!?
ムリよ!」
カルディアの視線はあたし達に向けられたままだったが、突進したテティーアンに吸血蝙蝠が群がり行く手を阻んでいた。
「助けるよアテナ!
みんな!!
テティーアンを助けた後、撤退する!」
海賊達の脇を通り抜けたところであたし達にも襲いかかってくる。
「でやぁ!
そりゃあ!」
「アテナ、その剣は吸血蝙蝠にも有効だ!
あんたがテティーアンの元へ」
「分かったわ!!
テティーアン、少し耐えていて!
だぁぁ!!」
「はっはっはっはっ!
生き延びることが出来たら次の機会を楽しみにしているよ!
あっはっはっはっ」
「なにくそ!
こんなところで死ぬわけないじゃないのさっ!!
でやぁ!
テティーアン!?
こっちに」
「くっ!
アテナか!?
すまない--つぁ!!」
テティーアンを吸血蝙蝠のから救い出すと、レディのところへ集まる群れを蹴散らし扉のところまで下がった。
それを見たのか、次々に海賊達は部屋を出て行き謁見の間での戦闘は終わりを迎えた。
「だっ!?
誰なの?」
呼び掛けに応じることなく煌神刃は勢いよく上に掲げられ、魔人王は上半身を引き裂かれると一声も発することなく塵になっていった。
「誰だい!
出ておいで!!」
背中からレディの声がし、状況を飲み込んだあたしはゆっくりとその場から去りレディのいるところまで下がった。
「助けてやったのにその言い様は無いんじゃないかい?
気高い女性」
「その名を知っている!?」
レディは驚愕の声を出したが、驚いたのはあたしも同じだった。
その名前で呼んだ女性は生きているはずがなかったからだ。
「そう!
私のことはまだ覚えているだろ?」
垂れ幕から姿を現したのは死んだ筈のカルディアだった。
「カルディア!
あんた死んだんじゃ--」
「あたしは見たわよ、あなたが首筋を咬まれ倒れたところを--」
「そうさね、あれで確実に死んだよ。
人間としてはね」
「あんたまさか……」
「そうさ。
私は魔人として甦ったのさ。
それがドラキュリアを復活させた理由の一つだったわけでね」
「……バカやろう……」
レディの声は小さく色々な感情が沸き起こってやっと絞り出した言葉だった。
それに対してカルディアは笑顔を作り玉座へと腰をかけた。
「始めからそれでこの地に来たってことなのね!?」
「ああ、そうだ。
この地に最初訪れた時に発見してね。
そこで思いついたのさ、あと僅かな命を伸ばすには魔人になるしかないとね」
「僅かな命?」
「レディから聞いてないかい?
私達の傭兵部隊を裏切り壊滅に追い込んだことを。
あの時、私は致命傷を負い瀕死でもうすぐ死ぬんだと腹を括っていた。
そこに一人の金髪の女性が手を差し伸べて言ったのさ『死ぬには惜しい逸材ね。少し生き延びてみないかしら?』とね。
私は『生きられるものならね』と苦笑いして見せたわ。
そしたら彼女は液体の入った小さな小瓶を渡し飲むように言い、私はそれに従って震える手でやっと飲み込んだわ。
すぐに体は熱くなり動悸が激しく脈打つと目の前が歪み始め死を覚悟した時、彼女の一言を聞き終えると意識が遠退いていった。
次に目を覚ました時は傷が治り何とか動けるまでになっていたのさ」
「その女性は何て言ったのよ」
「彼女は『これは魔者の血を混ぜたもの、真に生きるには魔の者として生きなさい。さもなくばいずれ体は朽ちるわ』とね」
「そんなことって……」
「そう、それが有り得たのだから驚きしかないわ。
そして傷を癒す為に神秘術を施したら激痛に襲われ、彼女の言っていたことが本当だと悟ったのよ」
「カルディア……。
そうだとしても魔人になってまで生きたかったのか!?
あんたは……そんなんじゃなかっただろ!」
「そうさ、レディ。
私は自分の信じた正義を盾に生きてきた。
それを踏みにじったのは誰だい!?」
二人の視線が交わると凍てついた空気が漂い、いつしか周りの戦闘も停止していた。
「あたいだよ……あたいだけど!
何がそうさせるんだい!!」
「私を突き動かすもの、ね。
それは私の世界を創ること!
人間よりも高みに立ち人を統べる者として生きることさ」
「魔人王ドラキュリアと全く一緒じゃない?
だったら一緒にやれば良かったじゃない。
どのみちあたしが二人を滅ぼしてたろうけどさ」
「ふ、はっはっはっはっ!!
アテナ、この期に及んで随分と強気だね。
私がこいつで斬らなければ終わりだと思って助けたんだがね」
「ああっ!
確かに助けては貰ったわね、忘れてたわ。
でも、それは余計なお世話ってやつなのよ?
魔人に助けられたなんて言いふらされた日にはたまったもんじゃないからね」
「では、新たな魔人王となった私を滅ぼしてみたらいい。
それで名声が欲しいならな。
これも返してやろう」
座ったまま放られた剣はあたしの足元へ勢いよく突き刺さりそれを引き抜くが、あたしは構えずに下に向けたままにした。
「あたしは名声が欲しいわけじゃないのよね、残念ながら。
だからカルディアと戦う理由もないし、なんなら思い直してくれないかなとも思ってるわけ」
「思い直すとは?
私は始めからそのつもりだったんだよ。
それにはドラキュリアの存在は利用する以外は邪魔でしかなかったのさ。
それにこの力を見るがいい。
出でよ!
眷属ども、我の元へ集え!」
カルディアの号令にどこからともなく羽音と奇音が聞こえて来ると、カルディアの傍に吸血蝙蝠が牙を剥き出しに
集まっていた。
「どうだい?
魔人王ともなると人間にはない力も扱えるのさ。
こいつらに吸われるとお前達も下級魔人の仲間入りってやつさ」
「えげつないわね。
しかもこの数じゃどうすることも出来ないわ」
吸血蝙蝠の数に圧倒され眺めていると、視界の端で動く人影が目に映った。
「カルディアー!!」
「テティーアン!?
ムリよ!」
カルディアの視線はあたし達に向けられたままだったが、突進したテティーアンに吸血蝙蝠が群がり行く手を阻んでいた。
「助けるよアテナ!
みんな!!
テティーアンを助けた後、撤退する!」
海賊達の脇を通り抜けたところであたし達にも襲いかかってくる。
「でやぁ!
そりゃあ!」
「アテナ、その剣は吸血蝙蝠にも有効だ!
あんたがテティーアンの元へ」
「分かったわ!!
テティーアン、少し耐えていて!
だぁぁ!!」
「はっはっはっはっ!
生き延びることが出来たら次の機会を楽しみにしているよ!
あっはっはっはっ」
「なにくそ!
こんなところで死ぬわけないじゃないのさっ!!
でやぁ!
テティーアン!?
こっちに」
「くっ!
アテナか!?
すまない--つぁ!!」
テティーアンを吸血蝙蝠のから救い出すと、レディのところへ集まる群れを蹴散らし扉のところまで下がった。
それを見たのか、次々に海賊達は部屋を出て行き謁見の間での戦闘は終わりを迎えた。
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