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アリスティア、魔法について考える

どこかで

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「うーん、厄介ね…」

大審判で洗い流したから大丈夫、と油断しすぎていたか。
王都の神殿なんて自分のおひざ元に入り込まれているとは思っていなかった。
そのうち何とかなると使徒候補を放置していたのも良くなかった。
あまり油断しないほうが良いのかもしれない。

とはいえ、アリスティアは無事確保できているし、神殿からの駆除も完了。
この国をもう一度探ったが、不穏な気配は感じられない。
なにより、今回精霊たちに依頼して神託を下したので、しばらくの間は喜びから神殿を訪れる人が増えるはず。
そうすれば信仰も集まり何かがあれば気付きやすい状態となる。
悲観することはないだろう。

「とはいえ、宝珠2個か~。ちょっと介入しすぎちゃったかしら…」

魔素を精霊が扱う魔法に変えやすくなるようフィルターの役目をする魔法の宝珠。
人間たちは魔法の宝珠ならと魔宝珠、と呼んでいるが、私から見たら本質は枷だ。
ただ、アリスティアに与えた白は私の色。
光の精霊が持つ金や銀ではない。
精霊たちからすれば光の要素しか含まれていないが、内包している概念は他の物とは桁違いだ。
使い方次第で今の世界の枠組みを変えるくらいはできるかもしれないが、それを教えるにはまだ早すぎるだろう。
それに、あまり大きな介入は、奴に付け入られる隙になる。

しかし、久々にこの世界に生まれたファーディーの要素。
次に出現するのはいつになるかわからないのだ。
この機会を無駄にしたくはない。

「ま、どうにかなるか。」

精霊も御守でつけたし、私の宝珠はあげたし、本人も元からやる気だし。
あと2週間ほどで全属性の宝珠を授けることになる。
そうなれば気軽にこの世界に出入りすることもできなくなってしまうのだ。
もう少しの間、楽しい時間を過ごしても罰は当たるまい。
とはいえ、罰を当てるのも自分なんだが。

「さて、と。」

すっと手の上に精巧な装幀がされた巨大な書が出現する。

「今日の部分は…」

パラパラとめくると、所々に空欄はあるものの細かい字がびっしり書き込まれている。

「あー、やっぱり。ここを狙ったわけね。それじゃ…」

それから長いこと女神は巨大な書を見つめ、書き足し、次のページへと進んでいくのだった。
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