転生悪役令嬢は逆ハーエンドの夢を見るか?

片上尚

文字の大きさ
37 / 47
ルシア12歳、今私にできる事

36

しおりを挟む
「君はね、昔の彼女によく似てるんだ。」

そういってリッチオーニ公爵が顔をのぞき込んでくる。
長いまつげに縁どられた神秘的な紫の瞳にのぞき込まれてなんだか落ち着かない。

「榛色の艶やかな髪も、何かに耐えるように引き結ばれた薄い唇も、理知的な瞳も、すらりと伸びた柔らかな手足も全部、あの頃の彼女に…」

公爵の顔が近い。
後ろに下がろうとして、カクンと身体から力が抜け、ベンチに倒れ込みそうになるところをリッチオーニ公爵に抱きしめられた。

「こうしゃくさま…」

なんだかふわふわする。体から力が抜けて、舌も回らない。

「そう、大人しくしててね。僕のかわいい子猫ちゃん。」

どうしてこんなことになっているのか、慌てて拒絶しようとしているのに体も頭もうまく動かない。
リッチオーニ公爵は私を横抱きにして立ち上がる。
このまま瞼を閉じてしまいたいくらい心地よい眠気と、警戒すべき相手に抱かれているというのに何故か「このまま身を任せて大丈夫だ」という安心感が頭の中を支配する。

「うまく効いたみたいだね。そのままゆっくり眠っていいよ。大丈夫、まだ何もしないよ。まだ、ね…」

先ほどお父様と一緒に客間に案内された時に手を付けた紅茶に何か盛られていたのだろうか。
それとも魔法…?
グルグルと考えているうちに、私の意識は闇に落ちていった。


=====


「お父様とルシアが帰ってこない?」

執事から報告を受け、ダリオは訝し気に聞き返す。
今日の午後早いうちに訪問すると聞いていたが、もうすぐ夕食時だ。
状況を考えるとすぐにとんぼ返りしてきてもおかしくないだけに、何があったのだろうかとつい心配になる。
執事も同じ考えだったからこそ報告に来たのだろう。

「ご夕食の準備はいかがしましょうか。」

「…悪いが一応用意しておいてもらえるかい?ただ、温め直しがきくようにしておいてもらえると。」

「かしこまりました。」

そう言って退室していく執事の後ろ姿を見ながら、使いをやるべきかとりあえずは待つべきか考えあぐねる。
大きな話になって、夕食を共にしてくるぐらいのことは一応想定の範囲内だ。
ただ、家に使いもなく、複雑な事情もあってかつ仲も良くない公爵家に長居するだろうか。
何かがおかしい。

「様子見ぐらい送っても罰は当たらないかな…」

そう呟き、ダリオは覚えたばかりの中級精霊術を駆使して小さな精霊を呼びだす。

「頼んだよ。」

蝶のような形の小さな精霊を自分の目の代わりとして窓から解き放つ。
公爵家ともなると魔法的な守りも硬いと予想されるためダメ元だ。

「何事もなければいいけど…」

そう言ってダリオは徐々に日が沈んでいく窓の外を眺めながらため息を一つつく。
そしてふと思い出したように机に戻り一通の手紙をしたため、もう一体鳥型の精霊を呼びだして持たせ、窓から飛び立たせたのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

処理中です...