魅了魔法は使えません!~好きな人は「魅了持ち」の私を監視してただけみたいです~

山科ひさき

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 魅了魔法は、使い方次第では一国の政治すらも左右しうる、野放しにしては危険な恐ろしい力。現代ではそうした認識が一般的であるが、しかし、この魔法の存在が明らかになったのは、つい50年ほど前のことだそうだ。



 発見のきっかけになったのは、王侯貴族の色恋沙汰だったという。

 とある王国で、高位貴族のご令嬢を婚約者に持つ王子が、平民の女性と恋に落ちた。そして衆目の前で自分の不実を棚に上げて婚約者の容姿や能力を罵り、平民の恋人を虐めたと責め立て、婚約破棄を叩きつけたらしい。



 この件は王室の、それは大きな醜聞となった。

 当然婚約は破談になり、王子の婚約者だった貴族令嬢には多額の慰謝料が支払われることになるはずだった。しかし、当の被害者である貴族令嬢がそこに待ったをかけた。良からぬ魔法の気配を王子や少女の周辺から感じ取ったので、一度きちんと捜査をするべきだ、と主張して。

 そうして、最新の魔法研究にも精通する才女であった貴族令嬢と、魔法学の権威たちが協力して調査を進めた結果、驚くべき事実が明らかになった。



 王子は未知の魔法による精神干渉を受けている状態であり、その魔法をかけていたのが、恋人であった平民の少女だったというのだ。



 この事実の発覚により、王子の問題行動は魔法の影響が大きく本人には責任がないと認められ、貴族令嬢との婚約は継続。平民の少女は投獄されることとなった。

 そして王子の治療後には婚約者であった貴族令嬢との婚姻が成立し、この騒動は幕を下ろした。







 この話は、魅了魔法の発見についてのよく知られたエピソードだ。劇や絵本の題材になることも多いため、幼い子供でも知っている。

 だから「魅了持ち」であるアリシアは、生まれ育った町でも男の子には冷たくあたられることが多かった。曰く「近寄ると魅了にかけられるぞ」と。

 たまに普通に接してくれる男の子がいても、他の子に「魅了にかかったのか」などと揶揄われて、瞬く間に態度を硬化させてしまうのが常だった。



 けれど、町の大人たちは力が首輪で抑えられていることを理解して普通に接してくれていたし、女の子たちも優しかった。だから決して惨めで不幸な幼少期だった、というわけではないのだけれど。

 それでもやはり今でも同年代の異性は少し怖くて、同性と一緒にいる方が安心できるというのは確かだった。それなのに学園で一番行動を共にすることの多い相手が異性のロイだというのは、なんだか不思議なことだと思う。







 ◇





 魔法史の授業が終わり、アリシアは女友達と話しながら教室を出た。

 難しい授業が終わり昼休みになった開放感で、みんなの表情が生き生きとしている。自然と、話題はこれから食べるお昼ご飯のことに移った。



「お昼どうしよっか」

「今日は食堂に行かない? 限定メニューのチーズデミグラスハンバーガーが食べたいんだけど」

「いいねー! 行く!」



 そんな風に盛り上がっている彼女たち。食堂では定期的に限定メニューを提供しているのだが、どうやら今回はそれがハンバーガーのようだ。

 アリシアはチーズデミグラスハンバーガーという魅惑の響きに心惹かれつつも、断りを入れた。



「ごめんね、私は約束してるから」

「あー、またロイくん? 本当、仲がいいよね」



 また今度一緒に食べようね、と約束し、手を振り合ってみんなと別れた。

 今では随分と仲良くなったけれど、彼女たちと話すようになったのは二年生になってからだ。

 一年生の時はほとんどずっとロイと一緒に行動していたけれど、彼に頼りきりなのはよくない気がして、密かに悩んでいた。だから二年生になって別の授業をとることが増えたのを機に、頑張って声をかけて女の子の友達を作るようにしたのだ。

 幸いにも彼女たちは優しく、やや浮いた存在であったアリシアを快く受け入れてくれた。



 だから、一年生の時ほどロイとべったりというわけではないし、お互い別の友達と行動することも多くなった。



 二年生になって他の友達を作ろうとした時は「僕だけじゃ不満なの」とか「他の子にできて僕にできないことって何? 僕がなんでもやってあげるのに」とか言ってなんだか不満そうにしていたことを覚えている。けれど、彼も他の友達と一緒にいるのをよく見かけるようになったので、お互い交友関係が増えて結果的にはよかったのではないかと思っている。
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