魅了魔法は使えません!~好きな人は「魅了持ち」の私を監視してただけみたいです~

山科ひさき

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 ぼんやりと宙を眺めながら、スプーンを機械的に口に運ぶ。先ほどの衝撃のせいか、料理の味がしない。



「アリシア、こぼれてるこぼれてる!」



 昼食を一緒に食べていた友達に指摘されて、料理が全く口に入っていなかったことに気づく。

 そうか、だから味がしなかったのか。料理がほとんど残ったお皿を見つめる。そして今度こそ確実に料理を食べ進めていった。



 ――なんだか、考えすぎて疲れてしまった。授業が終わったらすぐに寝てしまおう。寝付けるかわからないけれど。

 そこまで考えて、今日は放課後ロイの部屋に行く約束をしていたのを思い出す。つまり、ロイに会わなくてはいけないのだ。そう気づいて愕然とした。



 魅了持ち。監視。指示。



 昼食を食べ終わって友達と別れた後も、不快な言葉達が頭を埋め尽くして、どうにも整理がつけられなかった。

 ただ、先ほど聞いた会話と、これまでロイと過ごした記憶を交互に反芻する中で、ふと思い出したことがあった。



 以前、アリシアが男子生徒と話していた時のことだ。ロイがさりげなく割り込んできて、会話を止めてしまった。

 あの時は意味が分からず、嫉妬したのだと後から打ち明けられて浮かれていた。馬鹿みたいだ。

 ロイはアリシアが魅了をつかわないか警戒し、監視していた。だから男子生徒を守ろうとして、アリシアから遠ざけたのだろう。思い返せば、アリシアが女友達を作った時だって、彼はいい顔をしていなかった。

 どうして今まで疑いもしなかったのだろう? こんなにわかりやすかったのに、どうして。



 授業にはまるで身が入らなかったけれど、アリシアの気持ちとは関係無く、無情にも時間は過ぎていく。そして、やがて授業の終わりを告げる鐘が鳴り響いた。

 教師が重そうな教材を携えてゆっくりと教室から立ち去ると、それに続くように生徒達もずらずらと列をなして廊下への扉をくぐってゆく。

 アリシアはぼんやりと、その光景を眺めていた。



 そんな中、人の流れとは逆にアリシアの方へと向かってくる人影に気づき、心臓が嫌な音を立てた。彼の姿を見てこんな感情になるなんて、少し前までは想像もできなかった。だって、今までだったら、その艶やかな金色の髪が視界に入っただけで、心がふわりと浮き上がっていたに違いないのに。



 アリシアと目が合った瞬間、ロイは眩しいほどのキラキラした笑みを浮かべ、右手を軽く上げて見せた。



「アリシア。迎えに来たよ」



 アリシアも笑い返し、手を振って見せる。

 ぎこちない笑みであるように自分では感じたけれど、彼は気にならなかったようで、機嫌良さげにしていた。



「こっちの授業は早く終わったんだ」

「……そっか、ありがとう」

「待ち合わせとかしてなかったなと思って。行き違いになったら困るから」



 ロイは微笑んだ。アリシアに会えたことがとても嬉しい、とでも言うように。

 でもさっき聞いてしまった会話が事実なら……この表情も、アリシアを監視するための演技に過ぎないと言うのだろうか。

 信じられない。そう思いながらも、アリシアは、なんだか、心臓の奥が冷えるような心地がした。
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