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ラグエリア大陸編~生動の章~

第10話『生活を充実させよう』

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 まずは王都で買った物を家に設置したり整理していく。
 結局、本を並べるだけで午前中の作業は終わった。
 昼食を済ませ、買った品物を決まった場所に並べていく。

 それが終わると調味料や香辛料の実をツボに入れていく。
 今回新たに発見したのは『焼き肉のタレの実』や『お好み焼きソースの実』に『焼きそばソースの実』、「キムチの実」と『チリソースの実』である。
 香辛料系では『ワサビの実』に『辛子の実』と『柚子胡椒の実』の3つだ。
 これで料理の幅も増えるな。
 ただ、俺の料理のレパートリーはそれほど多くは無い。
 こればっかりは仕方がない。こんな時、母さんと妹がいたらと思ってしまう。
 あの2人は料理好きだったからなー……。

 夕食はビックポークの肉を使ったトンカツ。
 うん。美味かった。

 食事の後は風呂に入り、冷やした紅茶を飲みながら書斎で本を読む。
 明日は早朝から一仕事あるので早めに就寝する。


 ◆◆◇◆◆◇◆◆


 まだ朝日が出始めたばかりの青紫の空を眺めながらハルトは肩に鍬を背負いながら自宅の南側を歩いていた。

「防壁から10メートルも離れればいいだろう」
「まずは柵作りですね」
「囲うのは後回しにして柵を横に伸ばしておくか……」

 防壁に沿って柵を伸ばしていく。
 湖まで100メートル地点で柵の設置をやめる。
 土魔法で土を耕し、鍬で畝を作っていく。
 苗木を植えていき、結界魔法を張ったところで自宅に戻る。

「お腹空いた~」
「森で作った畑の5倍はありますからね。私も苗木を植えるのでヘトヘトです」
「んじゃあ、朝食はちょっとボリュームのあるものにするか」
「良いわね。私も朝から畑仕事でクタクタなのよ」
「あれ?リュナ。どうしたの?」
「いやいや、こんな立派な家がいきなり建っていたら見に来るでしょ」
「そういえばそうか……」
「大体1日で家が建ったと思ったら、今度はすぐに出かけちゃうし…で、今日は今日でいきなり広大な畑が出来てるし」
「まあ、驚くか……」

 正直な話、数週間で採取ができるようにもなるのでまた騒ぎになるだろう。
 それに、山側を少し切り開いて『家畜』も養殖しようとも考えている。

「とりあえず飯にするか……」

 朝食のメニューは厚切りベーコンに目玉焼きを2個ずつ、サラダ(ドレッシング付き)に厚切り焼きトーストを2枚。コーンスープも付けている。

「――ナニコレ!?味付けが濃くて美味しい!」
「だろう。この厚切りベーコンの油がまた黄身と絡まると何とも言えないんだよな」
「今日のサラダはフレンチドレッシングにちょっと胡椒を振りかけると食欲が増しますね」
「どれもこれも味がしっかり付いていて食べるのが止まらない」
「まあ、ゆっくり食べなよ。足りなかったら作ってやるから」
「ありがとう」

 朝食後はリビングでまったりしていた。
 湖側は大きなガラス窓で景色が見渡せる。

 うん。殺風景だ。土と湖と遠方に見える山。
 植樹や花壇、石畳にちょっとした池を配置すればそれなりに見える景色になるだろう。

 あと入浴所の外には露天風呂も欲しいな。
 できれば天然温泉にしたいが、無理だったら温水蛇口で代用にしよう。

 リュナに手伝ってもらって植樹する木の選定をお願いする。
 季節感を考えて桜やモミジっぽい木があればいいなと思いながら森に入ることにした。

「これは立派な樹だねぇ」
「緑の葉っぱが青々としてキレイね」
「これはレインボーツリーと呼ばれる木よ。春になると2ヶ月ほど7色の葉をつけるそのさまが虹色に見えることからレインボーツリーと呼ばれているのよ」
「7色か。それは楽しみだな」
「こっちは四季色樹と呼ばれる木よ。四季ごとに1ヶ月ほど色を変えるの。春はちょっと濃い桃色。夏はスカイブルー。秋は黄金色。冬は白銀色という風にね」
「四季色樹を庭に植樹して、レインボーツリーは玄関側に植えよう」

 他にも緑葉樹系を数種類。岩山を崩して手頃な石も確保。
 これで材料は揃った。

「早速帰って庭を造ろう」
「しかし、ハルトのアイテムボックスの要領はどうなっているの?」
「ん?まあ、普通の人よりは大きいかもな」

 と言うかこの世界のアイテムボックス持ちがどの程度の要領を持っているかはわかっても自分との差が分からないんだけどな。

 自宅に戻り早速『箱庭造り』に移る。
 まずは地面作りだ。栄養を含んだ土は草を生やし始めていた。
 庭の配置を決めて材料を取り出して『地形変形呪文アースチェンジング』を使い木々や石が並べられていく。
 石畳に池、低木に四季色樹などがちゃんと配置される。
 うん。良い感じだ。
 あとは……。

「テラスも作るか」

 大型窓ガラスからの景色も良いが、直接景色に触れるというのも良い。
 なのでテラスを作っていく。
 これは建物の両脇に設置することで大型窓ガラスからの景色を邪魔しないことを考慮した結果だ。

 そして右側の入浴所のある建物側に露天風呂を造る。
 縦5メートル、横20メートル、深さ50センチもある超大きい露天風呂だ。
 露天風呂の入り際には足湯が楽しめるようにもした。
 露天風呂の出入り口にはテラスを造り、ちょっと休憩できるようにデッキチェアを置いた。

 結局温泉は出なかったので、温水の魔道蛇口を取り付ける。
 さらに、効能として『疲労回復』と『状態異常回復』のエンチャントを付与する。

 温水を流し込む。
 ちょい熱めだが中々良い感じだ。

「外風呂なんて初めて聞いたわ」
「入るかい?」
「いいの?」
「ああ。その代わり、入り心地を教えてくれよ」
「分かったわ」

 リュナが露天風呂を楽しんでいる間に脱衣所にバスタオルを置いておく。
 俺はリビングに戻り作りたての庭を眺めることにした。

「うん。作りたての割には中々の眺めだな」
「そうですね。思った以上に良い家になったのではないでしょうか?」
「こんな家で家族と暮らしたかったな」
「ご家族は何人いるのですか?」
「じいちゃんとばあちゃんにオヤジとオフクロ、あと妹だな」
「大家族ですね」
「まあな。特にうちは夫婦で仲良いんだよなぁ」

 じいちゃんとばあちゃん、オヤジとオフクロは互いに夫婦仲が良くて休日は2人で良く出かけるほどだ。
 だが無駄遣いはしない方で、近くの公園や散歩コースを歩くなどして過ごしていたっけな。

 妹とはあれから毎日メールでやり取りしている。

「マスターと妹さんも仲が良いですよね」
「まあ、歳が離れているしな」

 ある程度歳が離れているとお互いに適度な距離が取れるのでケンカになりにくい。
 まあ、妹も俺も非行に走るようなことが無かったからと言うのも大きいだろう。

「お風呂、気持ちよかったわ」
「それはよかった。冷たい果汁ジュースを飲むかい」
「いただくわ」

 俺は冷やしたオープル(リンゴに似た果物)のジュースを渡す。

「ゴクゴクゴク……うん。美味しい」
「だろう。アカリが作ってくれたんだ」
「スゴイのね。アカリって」
「それほどでもないですよ」

 アカリは『羽妖精フェアリー』の姿をしているだけあって『風魔法』が使える。
 その風魔法を使って果実を搾ることもでき、言葉通り果汁100%のジュースができるというわけだ。


 ◆◆◇◆◆◇◆◆


 村で過ごすようになって2週間。
 朝はリュナたちと一緒に畑の拡張をして、そのあとで自宅の畑の水やり。
 朝風呂のあと朝食。食事が済めば創作室で色々と実験。
 昼食後はアカリとともにまったり過ごす。
 まあ、日によっては森に行って魔物狩りで肉を確保したり、王都に行って野菜を買い揃えたりしている。
 夕食後は畑で取れた調味料をツボに移す作業をゆっくり進めて心地よい疲労を感じたら寝る。

 そんなスローライフな日常を過ごしていた。
 だが、そんな日常を壊す出来事が起きた。
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