平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。

ねがえり太郎

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後日談 黛家の妊婦さん3

(168)チャイルドシート

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前話の続きです。

久し振りに投稿します。よろしくお願いします。


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 チャイルドシートがある区画の手前には、ズラリとベビーカーが並んでいた。

「おっ!これカッコイイな」

 案の定、黛はそこで引っ掛かってしまった。しかし黛が立ち止まり色んな角度から眺めている、子供用品と言うよりむしろ最先端のロボットや家電を思わせるような乗り物を目にして七海も『確かに』と頷いてしまう。以前もベビー用品を見ていて感じたことだが、翔太が小さい頃に見て回った売り場の商品よりずっとスタイリッシュなベビーカーが多くなったように思う。だからアレコレ黛が目移りしてしまう気持ちも分からないではない。最近はイクメンパパを意識して開発している機種も多いらしいから、機能に凝ったり見た目を男性好みに格好良くデザインしているものが並んでいる。

「やっぱ三輪タイプか……いや、こっちのノーパンクタイヤも良い。リクライニング付きも捨てがたいな」

 以前同じように子供用品の店に入った時、七海は黛のベビーカーの購入を却下した。しかし先日実家に帰った時に確認したところ、翔太のモノは既に処分済みと判明したのだ。
 と、言うことで黛家でも新しいベビーカーの購入を検討することになった。今日はチャイルドシートの下見がメインだが、そう言う訳でベビーカーを検分する黛を七海は黙って眺めていた。すると黛が腕時計に目を落とし顔を上げた。

「ベビーカーは子供が生まれてからでも間に合うんだよな?」
「うん、二ヵ月くらいまではあまり出掛けられないと思うし、暫くは抱っこ紐とかスリングでしか移動しないから」

 そして二人はチャイルドシートの棚に移動する。黛はこちらでも目を輝かせ、棚に並んだ装備を一通り見まわした後、一つ一つ仕様の書かれたラベルを吟味し始めた。車のことについては全く知識も興味も持たない七海は、今回ばかりは丸投げするつもりだ。黛の後ろからその様子を覗き込む程度で暢気に構えている。すると黛は一通りめぼしい製品のラベルを確認した後、幾つかパンフレットを引き抜きクルリと振り向いた。

「じゃ、行くか」
「え?もう?」

 黛のことだからアレやコレやとブツブツ言いながらジックリ製品を選ぶのではと考えていた七海は、拍子抜けしたように尋ねた。

「大体わかった。来る前にネットで幾つか目星は付けていたし、後はパンフで性能を見比べて決める―――それより車を選ばないとな」
「―――車?車はもうあるでしょ?」

 思いも寄らない事を言われて、七海は戸惑った。

「2ドアじゃ乗せづらいだろう」
「そうなの?」

 同意を求められても、車を運転しない七海にはイマイチピンと来ない。ただチャイルドシートは車移動の時には必ず必要になるし出産直後から車で移動する場合は産前に用意した方が良い、と言うことを情報誌などを見ている内に理解したので黛の休みに見繕って貰わねばと考えただけだった。

「チャイルドシートは後部座席に設置するだろ?そうすると2ドアだと、先ず前の座席を倒して狭い所で作業しなきゃならない。それからもう一度座席を戻して乗るって言うのは時間が掛かる。それにそう言う作業は扉を全開にしないと難しいからな。例えば余裕のない駐車場に停めなきゃならない場合なんか、かなり苦労するぞ」

 そんな大事になると考えていなかった七海は、目を丸くした。

「えぇ!そんな……車まで買わなきゃならないの?なら、チャイルドシート買うの止めよう!」
「何でだ?」
「だって勿体無いでしょ?車まで買うなんて……実際はそんなに使わないだろうし。必要な時はタクシーにすれば良いし、大きくなってから幼児用のチャイルドシート買えば今の車にも乗れるだろうし……」

 弱気になった七海を、黛はキッパリと遮った。

「いや、買うのは決定事項だ。もう親父達にも許可とって駐車場の予約も入れているし」
「え?!」

 初耳の情報に、七海は目をますます目を丸くした。しかし七海の動揺などちっとも気に掛けず、黛は胸を張ってこう言ったのだ。

「実は試乗車も予約済みだ。これから『DMWディーエム』と『Besteベステ』のショールームを梯子するぞ」
「ええ!」
「小さい車より大きいのが良いよな!でも色はまだ悩んでいるんだ。やっぱ黒、いや赤かな……」

 ウキウキと手をすり合わせるように笑顔を見せる黛を目にして七海は思った。



 あ、コレ……ただ単に新しい車、買いたいだけなんだな、と。



 こうして諦めたように口を噤んだ七海はイソイソとその背を押す黛に連行され、ショールームを梯子する事になったのであった。


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お買い物話はもうちょっと続きます。
お読みいただき、誠にありがとうございました!
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