平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。

ねがえり太郎

文字の大きさ
112 / 363
後日談 黛先生の婚約者

(4)初めてのお泊り(★)

しおりを挟む
R15程度の表現がありますので、苦手な方は閲覧を回避願います。

※なろう版には掲載しておりません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 客間に入ろうとした所で、走って来たまゆずみに腕を掴まれた。
 七海が吃驚して振り返ると、黛が恐ろしい形相で彼女を見下ろしていた。

「ひっ」

 と息を呑み込むと、黛がニタァと笑った。

「お前、俺が『はい、そーですか』って言うと思ってんのか?」
「……」

 究極に鈍い七海だが以前押し倒された事もあり、何となく黛の言いたい事は分かった。
 そう言う覚悟も無かった訳では無いが―――お風呂に入って自分の体を見たら、恥ずかしいのと自信が無いのと―――色々な気持ちが入り混じって来て、怖気づいてしまったのだ。このまま黛が見逃してくれるなら、逃げてしまおうと―――何度か家には来て客間の位置は知っていたので足早にそこまで逃げて来たのだが―――やはり捕まってしまった。

(こ、怖い……!)

 と思った瞬間、黛が真顔になる。
 そして神妙な表情で、ポツリと呟いたのだった。

「一緒に寝るの……嫌なのか?」
「うっ……」

 それは卑怯だ……!

 黛がショボンと肩を落とすのを見て、七海は思った。
 が、心で喚いてみても……もう遅い。
 七海は絆されてしまった。もともと怖気づいて逃げ出したのは自分の方なのだ。

「……ううん」

 首を振ると嬉しそうに黛が笑ったので、七海は「まあ、いっか」と肩の力を抜いて諦める事にした。

 そしてお縄に掛かった罪人のように手を引かれるまま、黛の部屋へと連行されたのだった……。






「ちょっ、ななな……何するのよぉ!」

 すっかりパジャマも下着も剥かれ真っ裸の状態で、あちこち触られたり揉まれたり舐められたリと―――恥ずかしさを我慢してされるがままになっていた七海は、ぎゃあっと喚いて黛の下から逃げ出した。
 それまでも随分耐えていたのだ。目を開ければ色気ダダ漏れの、好みど真ん中の美形が裸で迫って来ており、しかしここで逃げては……と目を瞑り我慢しているとヌルリとした感触が胸に当って「な、舐められてる~」とパニックになった。けれどもまだ上半身は我慢できた。何故かフッと重さが消えて、足首を掴まれ最初は其処にチュッとと吸い付かれる感触がした。続いてふくらはぎ、そして太腿へと唇の感触が降って来て―――妙な感触にくすぐったく思いながらボンヤリ体を任せていると、普通は絶対息など掛からないであろう処に、風を感じたのだ。
 思わずパチリと目を開けると、黛があらぬところに顔を近づけているではないか……!

 頭が真っ白になって、七海は叫び声を上げ思わず後ろへ飛びずさったのである。



 壁際に身を寄せ縮こまる七海を、黛が真顔でジッと見つめる。
 そして逃げた事を責めるでもなく、むしろ真摯な口調で―――黛は説得を試み始めたのだった。



「お前……痛いのが好きなのか?」

 不思議そうに尋ねられ、七海は戸惑った。

「はぁ?……痛いのは嫌だけど……」
「恥ずかしいのは分かるが、出来るだけ準備しとかないと―――すっごく痛いぞ~~」

 黛は眉を顰めて、七海の不安を徹底的に煽って来る。
 七海の心にはモヤモヤと恐れのような物が湧き上がって来た。

「え、ええ~……」

 勿論、七海だって痛いのは嫌だ。
 だけど恥ずかしいものは恥ずかしい。できればさっきのような手順は踏んで欲しく無かった。
 すると黛は裸のまま腕を組み胡坐を掻いて、物知った様子で重々しくこう言ったのだった。

「俺はな、別にそのままでもたぶん気持ちは良いから問題ないけど……お前、泣くぞ。途中でやめるなんて無理だからな」

 黛の脅しに、七海はヒクリと顔を引き攣らせる。
 やはり今日は無理だと、訴える事に決めた。

「じゃ、今日は止め……」
「絶対ヤル。今日を逃したら、よくない事が起きるような気がする」

 が、黛は有無を言わせぬ口調で、逃げようとする七海の退路を断つように断言した。
 鬼気迫るようなものを感じて、七海はゴクリと唾を飲み込み―――
 どうやら、逃げるのは無理らしいと悟った。

 ふーっと息を吐いて、七海はズリズリと黛の近くまで這うように戻って行った。それからオズオズと彼の裸の肌にピタリと抱き着く。黛はヨシヨシと七海の頭を撫でて「もう頼むから逃げるなよ」と祈る様に呟いて、七海をベッドに押し倒したのだった……。






**  **  **






 しかし七海はやはり後悔する事となった。



「いったぁーー!」
「マジ痛い、止めて止めて、いったーい!」
「嘘つき!いたいいたい!黛君のばかあ……!」



 七海が怒っても殴っても噛みついてもあまり気にならないらしく、彼女の抗議も虚しく黛は最後まで初志を貫徹したのであった。






**  **  **






 翌日。

 ぐったりとしてベッドに沈み込む七海の顔を覗き込み、黛は幸福感に包まれていた。
 昨晩のアレコレを思い出しニヤニヤしていると、パチリとその目が開き―――黛を見つけ愛しい彼女がニッコリと笑い掛けてくれたのだった。

 やっとこの手にした好いた女に微笑まれ、黛は頬を染める。
 すると笑顔に見惚れてボンヤリしている黛の両頬を、七海は掌で包み込むようにして顔を近づけ―――




 ゴチンっ!



 と昨日のお返しとばかりに、頭突きを食らわせたのだった。

「嘘つき!すっごい痛かった……!」
「~~~」

 石頭の制裁を受け、声にならない呻き声を上げる黛だったが―――



(家に帰す前にもう一回くらい、やれないかな?)



―――と、頭を押さえながら懲りない事を考えていたとは、初心者の七海には気付く由も無かったのだった。


しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

四季
恋愛
大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

処理中です...