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後日談 黛先生の婚約者
(7)教えて!七海先生(★)
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※なろう版には掲載しておりません。
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リクルートスーツに身を包んだ七海を見つけた黛は目を丸くしていた。
「何そのカッコ」
いつもはクロップドパンツかフレアスカートにブラウス、そしてカーディガンといった比較的ラフな格好の七海が、カッチリとしたタイトスカートに夏用のジャケットを身に着けている。肩の少し下あたりまでの髪を今日はバレッタで纏めていた。
珍しく時間が合ったので大学病院の目の前にあるスタバで待ち合わせして夕飯を食べに行く約束をしていた。席に座っていた七海が立ち上がった所で黛は違和感に気が付いたのだ。
「新採研修の講師をやる事になったの。最初の担当者でマニュアルを作ったから、旅費システムの講師やれって言われちゃって」
「ふーん……」
と言ったきり、黛は押し黙ってしまった。
そして上から下まで視線を走らせソッポを向いてしまう。
「何、どうしたの?」
「いや……帰ろうか」
「?、うん。あれ、食べてかないの?」
「……家で食べたくなった」
「じゃあ、駅でお惣菜買って行こうか」
黛はコクリと頷いて「ん」と手を差し出した。
七海は差し出された手を握って、引かれるまま歩き出す。
その後黛が心ここにあらず……と言った様子なのが少し気にかかったが、仕事で疲れているのだろうと七海は気にせず普通に振る舞っていた。黛がしっかりと七海の手を握っていたので、それほど不安を感じずにいられたのだ。
缶ビールで乾杯し食事をペロリと平らげた後七海がキッチンで洗い物をしていると、のっそりとした気配を感じた。反射的に振り返ると―――
「―――っ」
黛が押し黙ったまま腕を組み七海を睨んでいたので、思わず息を呑んでしまう。美しい顔で凄まれるとかなり怖い。
「び、びっくりしたぁ~、どうしたの?」
「……」
「ちょっと待ってね、今洗っちゃうから」
ジャケットは脱いでハンガーに掛けてある。
七分袖のストライプのブラウスと黒のタイトスカートの上にエプロンを付けた出で立ちの七海は、手早く洗った物を布巾で拭いて食器を棚に収める。そしてキッチンを出てソファに戻ろうとすると―――その前に黛が立ちはだかった。
「今日……泊まってく?」
腕組みをしたままの大きい男に真顔で見下ろされると、微妙に迫力があって七海は威圧感を感じてしまう。
「え?うーん……明日も新任研修があるから家に帰って寝たいな。着替えも持って来ていないし……」
「……明日も『先生』やるのか?」
「あ、うん。そうなの。新任研修自体は一週間なんだけど、私の受け持ちは明日までで―――」
言い掛けて、いつの間にか壁際に追い詰められている事に七海は気が付いた。
壁に付いた黛の両腕で、逃げられないように囲われてしまっている。
息を呑んで見上げると、つい二月前に恋人になり一月前に婚約者になったばかりの恋人が、色気ダダ漏れの欲を孕んだ瞳で彼女を見下ろしていた。
七海はゴクリと唾を飲み込んだ。
「ま、黛君あの……今日は私ご飯だけ食べて帰ろうかな~って。講師するの今回が初めてだし……ちょっとリハーサルをね……」
「リハーサルすればいいじゃん。俺が生徒になってやるよ」
そうして黛は七海好みの精悍な顔で、艶やかに微笑んだのだ。
「教えてくれよ……『七海先生』」
ジュウッと七海の中で何かが蒸発したような気がした。
真っ赤になった彼女は、抵抗する力も奪われてアッサリ捕まってしまったのだった。
勿論、講習のリハーサルは出来ず終いで一日が終了したのだった。
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黛が色仕掛けを覚えました。
もう二話纏めて追加します。
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リクルートスーツに身を包んだ七海を見つけた黛は目を丸くしていた。
「何そのカッコ」
いつもはクロップドパンツかフレアスカートにブラウス、そしてカーディガンといった比較的ラフな格好の七海が、カッチリとしたタイトスカートに夏用のジャケットを身に着けている。肩の少し下あたりまでの髪を今日はバレッタで纏めていた。
珍しく時間が合ったので大学病院の目の前にあるスタバで待ち合わせして夕飯を食べに行く約束をしていた。席に座っていた七海が立ち上がった所で黛は違和感に気が付いたのだ。
「新採研修の講師をやる事になったの。最初の担当者でマニュアルを作ったから、旅費システムの講師やれって言われちゃって」
「ふーん……」
と言ったきり、黛は押し黙ってしまった。
そして上から下まで視線を走らせソッポを向いてしまう。
「何、どうしたの?」
「いや……帰ろうか」
「?、うん。あれ、食べてかないの?」
「……家で食べたくなった」
「じゃあ、駅でお惣菜買って行こうか」
黛はコクリと頷いて「ん」と手を差し出した。
七海は差し出された手を握って、引かれるまま歩き出す。
その後黛が心ここにあらず……と言った様子なのが少し気にかかったが、仕事で疲れているのだろうと七海は気にせず普通に振る舞っていた。黛がしっかりと七海の手を握っていたので、それほど不安を感じずにいられたのだ。
缶ビールで乾杯し食事をペロリと平らげた後七海がキッチンで洗い物をしていると、のっそりとした気配を感じた。反射的に振り返ると―――
「―――っ」
黛が押し黙ったまま腕を組み七海を睨んでいたので、思わず息を呑んでしまう。美しい顔で凄まれるとかなり怖い。
「び、びっくりしたぁ~、どうしたの?」
「……」
「ちょっと待ってね、今洗っちゃうから」
ジャケットは脱いでハンガーに掛けてある。
七分袖のストライプのブラウスと黒のタイトスカートの上にエプロンを付けた出で立ちの七海は、手早く洗った物を布巾で拭いて食器を棚に収める。そしてキッチンを出てソファに戻ろうとすると―――その前に黛が立ちはだかった。
「今日……泊まってく?」
腕組みをしたままの大きい男に真顔で見下ろされると、微妙に迫力があって七海は威圧感を感じてしまう。
「え?うーん……明日も新任研修があるから家に帰って寝たいな。着替えも持って来ていないし……」
「……明日も『先生』やるのか?」
「あ、うん。そうなの。新任研修自体は一週間なんだけど、私の受け持ちは明日までで―――」
言い掛けて、いつの間にか壁際に追い詰められている事に七海は気が付いた。
壁に付いた黛の両腕で、逃げられないように囲われてしまっている。
息を呑んで見上げると、つい二月前に恋人になり一月前に婚約者になったばかりの恋人が、色気ダダ漏れの欲を孕んだ瞳で彼女を見下ろしていた。
七海はゴクリと唾を飲み込んだ。
「ま、黛君あの……今日は私ご飯だけ食べて帰ろうかな~って。講師するの今回が初めてだし……ちょっとリハーサルをね……」
「リハーサルすればいいじゃん。俺が生徒になってやるよ」
そうして黛は七海好みの精悍な顔で、艶やかに微笑んだのだ。
「教えてくれよ……『七海先生』」
ジュウッと七海の中で何かが蒸発したような気がした。
真っ赤になった彼女は、抵抗する力も奪われてアッサリ捕まってしまったのだった。
勿論、講習のリハーサルは出来ず終いで一日が終了したのだった。
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黛が色仕掛けを覚えました。
もう二話纏めて追加します。
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