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後日談 黛家の新婚さん3
(90)お迎えです
しおりを挟む『平凡地味子ですが「魔性の女」と呼ばれています。』に戻ります。
三人称、七海が高校の同窓会に出席します。
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七海と黛の通っていた高校は卒業後八年経過した時、学年全体の同窓会を開催する事になっている。クラスごと一名以上の幹事を決めて取り仕切る事になっているらしい。クラスの幹事を担当する事になった湯川から七海は受付をして貰えないか、と打診を受けた。彼女は七海と唯ともそれなりに仲の良く、当時は人とあまりつるむ事のない冷静で大人びた女子生徒だった。
「具合が悪くなったらどうする?断れないのか」
「受付くらい大丈夫だよ。普段だって会社で普通に働いているんだし、別にそんなに変わらないって」
「でも……」
「唯と一緒だから大丈夫。具合悪くなったらちゃんと休ませて貰えるから」
と言う遣り取りを経て、手伝いを了承する事になった。
出産後は暫く引き籠る事になるから、今のうちに参加できる行事は参加したいのだと言う七海の気持ちも分からないでもないので、黛は不承不承頷いた。しかし一次会から参加する予定の本田に『なんかあったら、頼むな』と根回しをしておく事は忘れなかった。
仕事があるのでホテルの大きな宴会場で開催される一次会には参加できないが、それが終わる頃には駆けつける事ができるだろう。七海の具合が悪ければ連れ帰り、そうでなければ一緒に二次会に参加しようと黛は計算して七海を送り出した。
同窓会の一次会が終了する頃黛から連絡が入ったので、本田と唯に二次会会場に先に行って貰うよう促して、七海は一階のロビーのソファに腰を下ろし彼を待っていた。すると比較的ラフな格好に一応と言う形でテーラードジャケットを羽織った黛が大股で現れた。遠目にも何だかとっても目立っているのが分かる。パッと目に付いたとき『カッコいい人がいるな』と思ったら、自分の旦那だった。いい加減慣れた筈なのだが、背景が変わると改めて他人事のように感心してしまう。七海が手を振って所在を示すと、黛は直ぐに気が付いて七海の方へ歩み寄ってきた。
「具合どうだ?」
「大丈夫!むしろ調子良いくらいだよ、楽しかった!」
「そっか、本田と鹿島は?」
「先に行って貰ったよ」
「荷物は?これだけ?」
そう言って黛は七海の傍らに置いてある荷物を手に取り、七海にも手を差し出した。七海もいつも通り差し出された黛の手を取ってソファから立ち上がる。
「あれ?黛じゃん」
振り向くと七海のクラスメイトの湯川が、幹事らしくキチッとスーツを身に着けている男性を伴い声を掛けてきた。手にはそれぞれ紙袋を持っている。湯川は黛と同じ小学校出身だった。
「江島さんのお迎え?二次会参加するの?」
湯川は七海と黛が結婚した事を聞いていたので、当然のように尋ねる。
「ああ、うちのクラスの幹事に連絡した」
黛が答えた横で、七海が湯川に尋ね返した。
「後始末終わったの?」
「うん、無事終了!受付助かったわー、ありがとね。二次会はゆっくり楽しんでね」
彼女は肩の力を抜いたように微笑んで、頷いた。七海もホッとしてふと湯川の隣の男性に目を移した。何故かその男性は七海と黛の間辺りを凝視している。視線を辿るとそこには七海の手を握る黛の手があった。
「黛……もしかして江島さんと付き合ってるのか?」
「あれ?知らなかった?江島さんと黛、結婚したんだよ」
少し呆けた様子の男性に、湯川がのんびりと返した。
「えー!知らんかった!言ってくれよ」
「誰?」
黛が驚く男性に首を傾げると、男性は目を瞠って口をアングリと開けた。
「ちょっと!同じサッカー部だったろ!」
ガシっと肩を掴まれて、黛は更に首を捻った。
三秒後「おお、そうだったな。確か……小杉?だっけ」と笑顔になる。
すると小杉と呼ばれた男性が更に目をまん丸にして、固まった。湯川がその横でブッと堪えきれないように噴き出した。
「―――戸次だよ!」
「おお、スマン。戸次。元気そうだな?」
「元気だけど……!」
湯川がついにお腹を抱えてゲラゲラ笑い出した。
七海も笑いそうになったが……妻として申し訳ない気持ちもあり、眉を下げて何とか噴き出すのを堪えたのだった。
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興味の無い事にはあまり記憶が働かない黛です。
高校の頃は顕著でしたが、今は少しマシになりました。
お読みいただき、ありがとうございました。
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