籠の中の令嬢

ワゾースキー

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第一章

準備

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 お茶会が開かれると決まってから、父であるレオナルドにマナーを教わり、ミカエラは新しくドレスを作ることになった。
 今までは家でくつろげる柔らかいワンピースのようなドレスしかなかったので、仕立て屋を呼び、みんなであーでもない、こーでもないと考えるのは楽しかった。

 数日後、出来上がったドレスを見て、ミカエラは目を見開き、瞳を輝かせる。

 お茶会の日
 ミカエラは、母のメイド2人を借り、自身の2人のメイドたちと総出で支度をする。我が家にいるメイドは4人のみ。後は全て男性の使用人で、女性の身の回りの世話が出来るのは彼女たちだけなので負担はかなりのものだ。
 しかし、貴族に仕えるメイドは、大変だが、給金も多く、職務上、経歴に箔がつき、男性からの求婚数も多いため、人気が高い。

 ドレスを着て、軽くメイクを施し、ゆっくりと瞼を開ければ、鏡の前にいるのはまさに  だ。

 この日の為に作ったミカエラのドレスは、薄紫のドレス。スカートのチュールの裾部分には白のレースのような刺繍が施されており、デコルテの部分は薄手のレースで飾られ、小さな花が所々に散りばめられている。
 プラチナブロンドの髪は後ろでまとめ上げられ、星の形の髪飾りと、合わせて作ったイヤリングがキラリと輝く。

「お嬢様、お綺麗ですよ」
「ホント?変じゃないかな?」
「えぇ それはもう絵本に出てくるお姫様のようですわ。」

 この後のお茶会に緊張しつつ、ぼーっと鏡の中の自分を見つめていると、コンコン、とノック音がする。
 ミカエラが返事をして、ドアの方を見ると、執事に促されるように、母と父たちが入ってきた。

 父たちは、娘を見て、大きく目を見開き、娘の晴れ姿を愛おしそうに見つめる。
 父たちが母をソファまで促し、側で立ち止まる中、体格の立派な、見るからに頼もしそうな男性が、歩みを止めず、ずんずんっとミカエラの側に近寄り、腰を掴んで、空高く抱え上げ、「きゃっ!」と、驚く少女にニカッと笑う。

「うちの娘はやっぱり可愛いなー!」

「こら!エドガー!ミアを馬鹿力で振り回すんじゃないっ!」

 レオナルドは、慌てふためくメイドの代わりに止めに入る。

「くすくす。エド、興奮しすぎよ。ミア、とっても素敵ね。凄く可愛いわ!」

「ちぇっ。ミーアー!後で父様にハグさせてくれー!
お茶会をするって手紙貰って、急いで賊を討伐して帰ってきたんだぞー。久しぶりの帰宅だってのに、ミアが足りないー。」

 ブラウンの瞳に少し涙を浮かべ、半泣きになって拗ねる父を、ミカエラはクスッと笑い頭を撫でる。

「お茶会が終わったら、おかえりなさいのハグ、沢山するね!エドガー父様、お仕事お疲れ様です。」

「お父様…」

 扉の近くには、額に手を当て、ため息をこぼす少年と、その後ろでくすくすと笑う男の子がいた。

「フレッド兄様! エレン兄様!」

 エドガーがミカエラをスッと下ろすと、たたっと兄たちの方へ駆け寄る。

「やぁ、ミア。とても素敵だね。今日は僕は参加しないけど、別室で、他の御子息たちとお茶をしてるから、何かあったらこちらにおいで。」

 ブラウンの瞳を細め、優しい笑顔を向けてくれるのは今年11歳になるフレッド兄様。

「ミア!僕は参加するよ!僕の友達もくるんだ!だから緊張しないで楽しもうね!」

 グレーの瞳を輝かせ、お茶会が待ちきれないとばかりに楽しそうな少年は、今年7歳になるエレン兄様。

 そんな兄たちの優しい言葉と、家族の温かい眼差しに少し緊張が解れ、ミカエラは微笑みながらみんなを見渡す。

「 失礼致します。奥様、そろそろお時間です。」

 リチャードが声をかけると、エマが頷き、スッと父たちにエスコートされて歩み出す。それと同時に執事たちは頭を下げて、道を作る。ミカエラはそれに続き、エレンにエスコートされて来賓の方々が待つ庭園へ向かう。

 さぁ、お茶会の始まりだ。
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