籠の中の令嬢

ワゾースキー

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第二章

彼らの想い

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「…ぐずっ…。 …はぁ……申し訳ありません。 ルイズ様。 取り乱してしまって…。」

 鼻を啜り、涙を拭った後、ルイズから離れようとするが、ルイズは抱きしめたまま離そうとしない。

「ミア嬢…。 あなたがこの国の制度を嫌い、男性を嫌い、他国へ憧れ、そちらで生きていこうと考えていらっしゃることは、薄々気づいていました。」

 ルイズはミカエラを抱きしめたまま、小さな声で話し始める。

「それは…」
「一応、共に勉学をした仲ですからね。 貴女が何に目を輝かせ、何に落胆し、何を学ぼうとしていたかは一目瞭然でした。 勿論、殿下や貴女の兄たちは一緒に学んでいませんから知らなかったとしても無理はない。」

 ミカエラは無言のまま話を聞き続ける。

「彼らの貴女への愛は本物です。 もちろん私も貴女を愛しています。 貴女は気づかなかったでしょうが、私たちの貴女への愛は周知の事実でした。」

 驚き信じられないとゆっくりと顔を上げ、ルイズを見上げると、優しくも悲しそうに見つめてきた。

まさか…みんな私のこと…

「貴女が男性が苦手ということも皆分かっています。 だからこそ、側にいれることが嬉しかった。 そして、側に入れるだけで幸せでした。 もちろん、婚約を申し込みたい気持ちは当然ありました。 しかし、貴女は私たちを大切な家族や友人として扱ってはくれましたが、もし私たちの愛を伝えてしまえば、貴女は私たちの前から逃げてしまったでしょう? 今までの関係ではいられないと思ったのです。」

 ぽつり、ぽつりとルイズは話してくれる。どれだけみんながミカエラを大切に思い、想いを殺して側にいてくれたかを。

「そんな中、貴女が国を出ると言い出してしまった。 私はおおよそ予想はしてましたが、やはりショックでした。 そして何も知らなかった彼らもまたかなりのショックを受けました。 そして、今まで殺していた想いが暴走してしまった。 …彼らを止められなかったことをお詫び致します。 しかし…私も彼らも後悔はありません。」

 静かに、しかし、強い決意を持った瞳でミカエラを見つめる。

「現状、私たちの気持ちを押し付けてしまっているのは事実です。 それに無理をさせてしまった。 正当化出来ることではありません。 なので、これはお願いです。 どうか、少しだけ私たちのことを改めて考えて頂けないでしょうか? もう一度申します。 私は…貴女を愛しています。 彼らも貴女を愛しています。」

 抱きしめていた腕に力が入る。ぎゅっと抱きしめたルイズは少し震えている様に感じる。

「私は…正直よく分かりません。許すことも…出来ません。 でも…ちゃんと話して下さってありがとうございます。 少しだけ…考えてみます。」

 正直、無理矢理処女を奪ったクラウドや薬を使ってまで身体を貫いたフレッドを許すことはできなかった。 しかし、ルイズが誠意を込め話してくれたので、以前より恐怖はなかった。 彼らのひっそりと想ってくれていた愛を狂愛へ変えてしまったのは、自分のことばかりで周りを見ず、彼らの気持ちを考えなかった自分自身なのだとルイズの話を聞いて思ったから。

 ミカエラは、ルイズに抱きしめられたまま、昔を思い出す様に目を閉じた。
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