聖なる夜に私は叫ぶ

しずもり

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クリスマスイブ 19時 クリスマスイルミネーション

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 聖と私は社内恋愛だった。社内の人には内緒にしていたけど。


 会社は社内恋愛に寛容だったのに、『何かあった時に気まずいから』と付き合っている事を内緒にしようと言ったのは聖だ。

それはこういう時の為だったんだな。

ていうか、の、って、別れる時しか考えられないじゃん!
気付くのが遅すぎだよ、私。

それでも唯一、社内で私たち二人の仲を知っていた人物がいる。私と同じ職場の後輩の真希だ。

時々、三人で食べに行ったり、飲んだりもしていた。
だから真希には聖に関する相談もしやすかった。愚痴もプライベートな話とか。最近、レス気味なんだ、とかさ。自称恋愛マスターの真希に根掘り葉掘り聞かれたからつい言っちゃっただけなんだけど。

もちろん、私が話すばかりじゃなくて、真希の話も聞いていた。真希の話はどちらかというと愚痴よりも惚気話やモテ話の方が多かったけど。

 身長が166cmある私は、女性の中ではまあまあ背が高い方で、真希と私が並ぶとほんの少し私の方が目線が高い。

真希はまつ毛がクルンとなるほど長くて、そのまつ毛にピッタリの大きな目に琥珀色の瞳の可愛い子。真希の唯一の不満が名前、と言い切るぐらいには真希自身も自分の容姿には自信を持っていた。

『先輩、ちょっと聞いてよ!彼氏が休日出勤が入ったからって、明日のデートをキャンセルしたいって言ったんですよぉ~。明日は付き合い初めて半年の記念日なのにぃ!』


偶に愚痴らしきものを聞く事はあったけれど、それも惚気話にしか聞こえない。そんな真希の彼氏は、28歳の一流企業勤めのエリートイケメン。

真希の一目惚れからはじまって、猛アタックの末、彼が陥落したのは二人が出会って一年が経った頃だったとか。

『悔しいから、誘って一日中付き合って貰ったんだぁ』

『何に付き合って貰ったの?』

『彼と行く予定だったとこ全部』

『全部って・・・たしか半年記念のデートプランて、水族館行ってからミシュラン三つ星フレンチで豪華ディナーの後はラグジュアリーホテル一泊じゃなかったっけ?』

『そうだよ~。ドタキャンでケチがついちゃったから、彼氏にはもっと良いデートプランをリクエストしちゃったぁ♪』

『しちゃったぁ♪、じゃなくて!と行ったって、それ、男?』

『もちろん。先輩、私が女の友達がいないって知ってるじゃん。仲良いのなんて、先輩ぐらいだよ~』

『男の友達って・・・。デートプランで、ホテル一泊までって、いや、それ駄目じゃない?
言ってくれれば、私が付き合ってあげたのに。大事な彼氏なんでしょ?いくら彼氏がドタキャンしたからって、誤解されるような事は辞めた方がいいって』

 真希は本当によくモテる。良く言えば小悪魔系で、悪く言えば性悪ビッチという称号持ちだ。前者は男性から、後者は主に彼氏を奪われた女性たちからの怨嗟たっぷりの称号だ。

本命彼氏ができる前は、二股、三股して、男たちが鉢合わせして喧嘩になった!からの、『3P、4Pしちゃった♡』なんて話を平気で言ってのけるぐらいには、たしかに真希はビッチではある。


 何故、私がそんな真希と仲が良いのかと言えば、仲が良くなる前に性悪ビッチと陰で呼ばれているのを知らなかったからだ。それを知った頃には、人懐っこくて明るくて、危なっかしいところがあって放っておけない可愛い後輩になってしまっていた。


勿論、真希の悪癖を容認していたわけではない。ダメなものはダメ、と言っていたし、真希の本命彼氏を知ってからは、誤解されるような行動も慎んだ方がいい、と何度も忠告していたのだ。

『もうっ!先輩ったら小姑みたい!ドタキャンする方が悪いんだし、ホテルでって、一日中付き合って貰ったお礼みたいなもんじゃん。だって全部お金払ってくれたんだからさ。

折角、ホテルに泊まるんだから、使!』


そういえば、最近は私が何か言おうとすると、直ぐに不機嫌そうな顔になって『小言は結構ですぅ~』なんて言ってたね。

だからか。


だから今、真希は聖にもたれかかるように腕を絡めて、二人でイルミネーションを見る為に立ち止まっているのか。



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ここまでお読みいただきありがとうございます。
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