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イケアの街と面倒事
喜んでもらえたようで良かった、です?
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セバスさんにした頼み事の一つ、屋台については明日、工房の人が邸に来てくれる事になった。
まさか工房で、空間収納から出す訳には行かないので、邸で見てもらってから、持っていってもらった方がいいと判断したからだ。
そしてもう一つの頼み事の『厨房で料理をしたい』というのはすぐに叶えられた。おやつに芋けんぴを作ってみたのはついでだ。
昨日の夕食は美味しかった。美味しかったけれど元貴族と言っても、あんな豪華な食事は子どもの頃以来、食べた事は無かった。
お母様が生きていた頃は、それなりの物を食べてはいたれけれど子どもだったからね。出される料理は子ども用だったのよ。
それが10年以上ぶりよ、しかもテーブルマナーも覚えてはいたけれど、ぎこちない仕草なのは自分でも分かってた。
クリスがしっかり出来ていた分、余計に自分のぎこちなさが目立っていたと思う。平民と言っていても、ああいう食事の場ではマナーは守らないと恥をかくのは自分よね。
そう言うのもあって、味がわからない~、となっていたのよ。
あんな緊張が毎日毎食なのは辛い。だから夕食だけでも自分で作って、出来れば部屋で食べたいな~、と切実に思ってしまった。
クリスも最初は『何言ってんだ?』みたいな顔したけれど、『部屋で一緒に食べないか?』と誘ったら頷いてくれた。きっと和食につられたんだと思う。
遠慮気味に『居候の身で申し訳ないから』と、夕食を辞退する事をセバスさんに言付けてもらった。
そうしたら何故か、『ぜひ作った料理を見てみたい。少し味見をさせて欲しい。』という嬉しくない伝言が返ってきた。
本音は嫌だな、なんだけど、厨房を間借りする事になったし、食材も分けてもらうので仕方なく了承した。
それでどうせなら料理レシピを登録する前に、クリス以外の人の意見も聞いてみようか、と候補の料理を幾つか作る事にした。
食堂でサミュ君はそれを見て目を輝かせ、口に入れるとビックリした様に大きな目が更に大きく見開かれた。
うん、分かるよ、その気持ち。
甘いと思って食べたらしょっぱいなんて驚くよね。
でも、サミュ君はその後はすぐにまた、もっ、もっ、と夢中になって食べ始めた。
うん、流石、みんな大好きフライドポテトだね。
サミュ君はまだ幼児だし、今回はつけて食べる調味料を用意したので、塩は薄味になるように軽めに振った。用意したのはマヨネーズとなんちゃってケチャップソース。
それと、この前作ったシチュー。後はチキンナゲット、オムライス、ボア肉のロールキャベツだ。お米以外はどれも手に入りやすい食材と調味料で作った。
どちらかと言うと、お子様向けになっているのは、ついサミュ君を意識してしまったから。
あの可愛いらしい顔が驚きに目を丸くしたり、喜ぶ顔が見たかったからね。
でもサミュ君だけじゃなく、ロイドさんもミリアさんも、何なら料理を運ぶ配膳係やアーニャさんたちも驚いているみたいだった。
ちょっとやりすぎたか?
クリスの視線が痛い、、、、。
「こ、れはスープとは違うな、凄いな。クリーミーな味わいとよく煮込まれた柔らかい鶏肉と野菜が実に美味しい。」
ロイドさんがひと口食べて唸る。
「このフライドポテトというのも美味しいですわね。シンプルな塩味もクセになる美味しさですわ。
このトマトケチャップソースというのにつけて食べると、また違った味になって美味しいです。それにチキンナゲットにもつけて食べてもとても美味しいです。」
「ティアナ、この前食べたシチューと、味が少し違う気がするんだが。」
お、クリス気づいたんだ。すごいね。
この前はコンソメが無いから、塩と胡椒で味付けしたシンプルな物だった。でも今日は鶏を使った時にでた骨や、幾つか野菜を煮込んで、ちょっと味付けしてブイヨン?コンソメ風スープを作って入れたんだよね。
貴族の食事マナーを守りつつ、すごい勢いで食べてるね~。気に入ったみたいで良かったよ。
「うん、今日は時間があったから丁寧に作ってみたよ。あ、ロールキャベツは塩胡椒で味付けしていますが、トマトケチャップソースを少し上に乗せて食べて見て下さい。シチューやトマトソースで煮込んでも美味しいんですよ。」
ロールキャベツは、私はおでんの素を使ってよく食べていたんだよね。まぁ、料理自体が洋風だから、洋風系のスープやソースなら割と何でも合うと思う。
もっ、もっ、もっ。
んぐっ、もっ、もっ。
そしてサミュ君は、フライドポテトとチキンナゲットを交互に無心に食べている。
幼児の無心な表情って初めて見るわ~。
このままだとポテトとナゲットの無限ループになりそうだったので、サミュ君に声をかけた。
「サミュ君、このオムライスも食べてみて欲しいなぁ。」
名前を呼ばれてキョトンと私の方を向いたサミュ君に、オムライスの乗ったお皿を見せる。
ケチャップでハートを描くのは定番よね。でも残念ながらこの世界にハートの形は、まだ周知されていないようだった。
アーニャさんにオムライスのお皿を前に置かれ、ひと口すくったスプーンを、口元に持ってこられたサミュ君は条件反射のようにパクっと食べた。
可愛い~。
モグモグした後、パカっと雛鳥のように口を開けてスプーンを待つサミュ君。これも気に入ってもらえたって事かな。
「このお米という物を使われているのですよね。これはどこで手に入れたのですか?私も初めて食べました。」
ロイドさんもオムライスを食べながら聞いていたけれど、ちょっとロイドさんとオムライスは似合わない絵面ね。勿論、ハートマークは描いてないわよ?
クリスは見たらもう食べ終わってた。似合う似合わない以前の話だったわね。
今はサミュ君みたいに、無心で野菜スティックにマヨネーズを付けてる。これは。マヨラーが爆誕しそうだわ。
「これはカントの店で購入したんです。『セドリックの調味料店』さんで、偶然、珍しい香辛料や食材を見つけて購入したんです。
そこでお米を扱っているお店を教えて貰って購入しました。隣国の商会から持ち込まれたそうですよ。」
うん、何一つ、嘘は言って無いわね。お店で売っていたから買ってみた。そして作ってみた。うん、以上!
「このマヨネーズやケチャップというのも、ティアナさんが作ったとか。どの料理も食べた事も、聞いた事も無い物でしたが、これらもギルドで登録するつもりですか?」
「そうですね。今までに無い調味料だったと思います。シチューに使ったホワイトソースもそうですが、これらの調味料で作る事が出来る料理もたくさんあるんですよ。なので調味料も登録したいと思っています。」
「この調味料はどれも素晴らしいですね。勿論、料理も。私もレストランを経営しているので分かりますが、どれもまた食べたい、と思う素晴らしい物ばかりです。
私も是非、レストランで出したいので、レシピを購入したいですよ。すぐに登録する予定ですか?」
え、ロイドさんがレシピ登録の話になったら笑顔でグイグイと話しかけてくるけど、なんか胡散臭く見えるのは気のせい?
「まぁ、素敵。サミュもお腹が膨れるくらい食べて、とても気に入っていますもの!」
胡散臭い笑顔を見た後では、ミリアさんの笑顔が眩しいわ。これが本当の笑顔なのよっ。
「イケアに着いたら、商業ギルドでいくつか登録をしようと思っていました。けど、あの、あまり出歩かない方がいいんですよね?」
「あぁ、そうですね。ですが、すぐ解決するかも知れませんし、ずっとティアナさんも何もしないのは退屈でしょう?
登録する為の書類なら、すぐ手に入れられます。いつでも申請出来る様に、書類だけは準備しておく、というのはどうでしょうか?」
あぁ、本当に、にこやかな笑顔なんだけどなぁ。
何で胡散臭く感じられるんだろ。
クリスもちょっと眉を顰めてるし。
でも、料理は気に入ってもらえたみたいだし、私も早く登録申請をしてみたい。書類だけでも準備をしてみようかな。
まさか工房で、空間収納から出す訳には行かないので、邸で見てもらってから、持っていってもらった方がいいと判断したからだ。
そしてもう一つの頼み事の『厨房で料理をしたい』というのはすぐに叶えられた。おやつに芋けんぴを作ってみたのはついでだ。
昨日の夕食は美味しかった。美味しかったけれど元貴族と言っても、あんな豪華な食事は子どもの頃以来、食べた事は無かった。
お母様が生きていた頃は、それなりの物を食べてはいたれけれど子どもだったからね。出される料理は子ども用だったのよ。
それが10年以上ぶりよ、しかもテーブルマナーも覚えてはいたけれど、ぎこちない仕草なのは自分でも分かってた。
クリスがしっかり出来ていた分、余計に自分のぎこちなさが目立っていたと思う。平民と言っていても、ああいう食事の場ではマナーは守らないと恥をかくのは自分よね。
そう言うのもあって、味がわからない~、となっていたのよ。
あんな緊張が毎日毎食なのは辛い。だから夕食だけでも自分で作って、出来れば部屋で食べたいな~、と切実に思ってしまった。
クリスも最初は『何言ってんだ?』みたいな顔したけれど、『部屋で一緒に食べないか?』と誘ったら頷いてくれた。きっと和食につられたんだと思う。
遠慮気味に『居候の身で申し訳ないから』と、夕食を辞退する事をセバスさんに言付けてもらった。
そうしたら何故か、『ぜひ作った料理を見てみたい。少し味見をさせて欲しい。』という嬉しくない伝言が返ってきた。
本音は嫌だな、なんだけど、厨房を間借りする事になったし、食材も分けてもらうので仕方なく了承した。
それでどうせなら料理レシピを登録する前に、クリス以外の人の意見も聞いてみようか、と候補の料理を幾つか作る事にした。
食堂でサミュ君はそれを見て目を輝かせ、口に入れるとビックリした様に大きな目が更に大きく見開かれた。
うん、分かるよ、その気持ち。
甘いと思って食べたらしょっぱいなんて驚くよね。
でも、サミュ君はその後はすぐにまた、もっ、もっ、と夢中になって食べ始めた。
うん、流石、みんな大好きフライドポテトだね。
サミュ君はまだ幼児だし、今回はつけて食べる調味料を用意したので、塩は薄味になるように軽めに振った。用意したのはマヨネーズとなんちゃってケチャップソース。
それと、この前作ったシチュー。後はチキンナゲット、オムライス、ボア肉のロールキャベツだ。お米以外はどれも手に入りやすい食材と調味料で作った。
どちらかと言うと、お子様向けになっているのは、ついサミュ君を意識してしまったから。
あの可愛いらしい顔が驚きに目を丸くしたり、喜ぶ顔が見たかったからね。
でもサミュ君だけじゃなく、ロイドさんもミリアさんも、何なら料理を運ぶ配膳係やアーニャさんたちも驚いているみたいだった。
ちょっとやりすぎたか?
クリスの視線が痛い、、、、。
「こ、れはスープとは違うな、凄いな。クリーミーな味わいとよく煮込まれた柔らかい鶏肉と野菜が実に美味しい。」
ロイドさんがひと口食べて唸る。
「このフライドポテトというのも美味しいですわね。シンプルな塩味もクセになる美味しさですわ。
このトマトケチャップソースというのにつけて食べると、また違った味になって美味しいです。それにチキンナゲットにもつけて食べてもとても美味しいです。」
「ティアナ、この前食べたシチューと、味が少し違う気がするんだが。」
お、クリス気づいたんだ。すごいね。
この前はコンソメが無いから、塩と胡椒で味付けしたシンプルな物だった。でも今日は鶏を使った時にでた骨や、幾つか野菜を煮込んで、ちょっと味付けしてブイヨン?コンソメ風スープを作って入れたんだよね。
貴族の食事マナーを守りつつ、すごい勢いで食べてるね~。気に入ったみたいで良かったよ。
「うん、今日は時間があったから丁寧に作ってみたよ。あ、ロールキャベツは塩胡椒で味付けしていますが、トマトケチャップソースを少し上に乗せて食べて見て下さい。シチューやトマトソースで煮込んでも美味しいんですよ。」
ロールキャベツは、私はおでんの素を使ってよく食べていたんだよね。まぁ、料理自体が洋風だから、洋風系のスープやソースなら割と何でも合うと思う。
もっ、もっ、もっ。
んぐっ、もっ、もっ。
そしてサミュ君は、フライドポテトとチキンナゲットを交互に無心に食べている。
幼児の無心な表情って初めて見るわ~。
このままだとポテトとナゲットの無限ループになりそうだったので、サミュ君に声をかけた。
「サミュ君、このオムライスも食べてみて欲しいなぁ。」
名前を呼ばれてキョトンと私の方を向いたサミュ君に、オムライスの乗ったお皿を見せる。
ケチャップでハートを描くのは定番よね。でも残念ながらこの世界にハートの形は、まだ周知されていないようだった。
アーニャさんにオムライスのお皿を前に置かれ、ひと口すくったスプーンを、口元に持ってこられたサミュ君は条件反射のようにパクっと食べた。
可愛い~。
モグモグした後、パカっと雛鳥のように口を開けてスプーンを待つサミュ君。これも気に入ってもらえたって事かな。
「このお米という物を使われているのですよね。これはどこで手に入れたのですか?私も初めて食べました。」
ロイドさんもオムライスを食べながら聞いていたけれど、ちょっとロイドさんとオムライスは似合わない絵面ね。勿論、ハートマークは描いてないわよ?
クリスは見たらもう食べ終わってた。似合う似合わない以前の話だったわね。
今はサミュ君みたいに、無心で野菜スティックにマヨネーズを付けてる。これは。マヨラーが爆誕しそうだわ。
「これはカントの店で購入したんです。『セドリックの調味料店』さんで、偶然、珍しい香辛料や食材を見つけて購入したんです。
そこでお米を扱っているお店を教えて貰って購入しました。隣国の商会から持ち込まれたそうですよ。」
うん、何一つ、嘘は言って無いわね。お店で売っていたから買ってみた。そして作ってみた。うん、以上!
「このマヨネーズやケチャップというのも、ティアナさんが作ったとか。どの料理も食べた事も、聞いた事も無い物でしたが、これらもギルドで登録するつもりですか?」
「そうですね。今までに無い調味料だったと思います。シチューに使ったホワイトソースもそうですが、これらの調味料で作る事が出来る料理もたくさんあるんですよ。なので調味料も登録したいと思っています。」
「この調味料はどれも素晴らしいですね。勿論、料理も。私もレストランを経営しているので分かりますが、どれもまた食べたい、と思う素晴らしい物ばかりです。
私も是非、レストランで出したいので、レシピを購入したいですよ。すぐに登録する予定ですか?」
え、ロイドさんがレシピ登録の話になったら笑顔でグイグイと話しかけてくるけど、なんか胡散臭く見えるのは気のせい?
「まぁ、素敵。サミュもお腹が膨れるくらい食べて、とても気に入っていますもの!」
胡散臭い笑顔を見た後では、ミリアさんの笑顔が眩しいわ。これが本当の笑顔なのよっ。
「イケアに着いたら、商業ギルドでいくつか登録をしようと思っていました。けど、あの、あまり出歩かない方がいいんですよね?」
「あぁ、そうですね。ですが、すぐ解決するかも知れませんし、ずっとティアナさんも何もしないのは退屈でしょう?
登録する為の書類なら、すぐ手に入れられます。いつでも申請出来る様に、書類だけは準備しておく、というのはどうでしょうか?」
あぁ、本当に、にこやかな笑顔なんだけどなぁ。
何で胡散臭く感じられるんだろ。
クリスもちょっと眉を顰めてるし。
でも、料理は気に入ってもらえたみたいだし、私も早く登録申請をしてみたい。書類だけでも準備をしてみようかな。
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