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イケアの街と面倒事

嘘臭い笑顔をする人の友人の笑顔も嘘くさかったです

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屋台が届いた2日後、ロイドさんのご友人がやってきた。随分と早い訪問だったわね。

ロイドさんたちと一緒に玄関で出迎えたら、大きな花束を2つ抱えていて、ロイドさんと握手した後にミリアさんに花束を1つ渡していた。


そして私の方を向いて、一瞬目を大きく見開いた後、含みのある笑みを浮かべて



「初めまして。私はラルフレッド・ヨークシャーと申します。今日、貴女に会えたこの奇跡に感謝します。」


そう言って私に花束を差し出した。

ミリアさんに渡している時も思ったけど、花束を渡し慣れているよね?というぐらいに自然なのよ、渡し方が。

そして流石、ロイドさんのご友人!

金髪に深い藍色の瞳のキラキライケメンさんの笑顔が眩しい!


何を考えているのか、分からない嘘臭い笑顔だけどね。


さっきの含み笑いは何?とは、心で思っても口には出せない。


「初めまして。ティアナと申します。素敵な花束をありがとうございます。」


私もニッコリ微笑んで受け取ったわ。

あら、私ってば異性から花束を貰うのって初めてじゃない?

ロバートアレからは贈られた事も無かったし、社交界はもとより、ご令嬢方が出席するお茶会にも出た事が無かったから知人友人なんていなかったもの。

これ、記念にドライフラワーにでもした方がいいかしら?


なんだか嘘臭い笑顔と思っていたけど、もしかして貴族の笑顔のスタンダードが嘘臭い笑顔なのかも知れないわね。

そしたらロイドさんは別にしてラルフレッドさんはいい人なのかも、花束をくれたし。

え、私チョロい?チョロすぎる?

なんて、思っていたのが丸わかりだったのか?執事見習い姿のクリスの視線が、いつも以上に冷たかったわ。



そしてドキドキの夕食タイム。メインの肉は料理長が腕を振るったボアのヒレ肉のステーキ。そして私の作ったシチュー、ホワイトソースの料理として鶏肉とほうれん草のグラタンを作った。

そして白身魚のムニエルのタルタルソースがけ。これはマヨネーズの使い方としてタルタルソースを作ってみた。肉料理にも使えるのでこれも登録したいと思っている。

マヨネーズは野菜スティックとポテマヨサラダに。

トマトケチャップソースの方は、くし型のフライドポテト用とケチャップとマヨネーズを混ぜてオーロラソースを作り、鶏胸肉の蒸し焼きに添えた。

オムライスはおまけで作った。これはお米の確保がまだどうなるかわからないからね。

元日本人としてはお米を早く普通に仕入れられるようになって欲しい。早くアルデバラン商会に話が通るといいなぁ。



他にも色々作りたい物があったけれど、まずは調味料が先か、と基本のマヨネーズとトマトケチャップソースを登録したい為に、料理もソースに合わせた物を作った。


この2つだけでもかなり色々な料理やソースやタレが作れるからね。ホワイトソースもそう。グラタンだけでも色々な食材で作れるし、お米が普及すればドリアも作れる。



というか、本当は醤油や味醂などを使った料理や揚げ物系も作りたかったけど、調味料が手に入りにくい物は後回しの方がいいだろう。

揚げ物系はどれから手をつけようか迷い中なんだよね。まずソース作りからやらないといけないしねぇ。

結局、焦っても仕方ないって事だな、と出した料理を見ながらつくづく思った。

確かに登録したいレシピはたくさんある。でも調味料の問題だけでなく、登録したレシピが売れないとなんの意味もない。

そこは地道に屋台販売やレストランなどに売り込みをしていかないといけないんだよね。


ラルフレッドさんの様子を見るに概ね好評だったと思う。食事が終わったら、今晩は泊まっていくというラルフレッドさんとロイドさんは客間で飲みながら過ごすそうだ。

ロイドさんが申請書類のチェックをしてくれると言うので、書類を持って顔を出す事にした。


扉をノックして部屋に入ると、壁際にセバスさんとクリスが立っていた。

ロイドさんとラルフレッドさんは赤ワインを片手に、ポテトチップスと芋けんぴをツマミに飲んでいた。

ポテチはエールの方が合いそうだけどなぁ、とかイケメンが芋けんぴを食べている姿ってシュールだわぁ、なんて思って見ていたら、何故かラルフレッドさんの横に座るように手招きをされてしまった。


えぇ?と思ったけれど、ラルフレッドさんの前のソファにはロイドさんが座っていてどちらかに座るしかなさそうなのよ。

セバスさんに『椅子をプリーズ!』の視線を送ったけれど、にこやかにスルーされてしまった。


「いやぁ、ティアナ嬢の作った料理はどれも美味しかったですよ。どれも初めて食べる物ばかりで驚きの連続でした。」


私の隣でラルフレッドさんが爽やかスマイルで言った。


「本当に。この前食べたシチューに使われているホワイトソースという物が同じようにグラタンに使われて別の料理になっていて驚いたよ。

フライドポテトも形を変えると食感が変わってまた違った味に感じるね。今日出たフライドポテトは、あのトマトケチャップソースやマヨネーズがより合っていた気がするよ。」


うん、フライドポテトはその2種類だけでなく色々なソースをつけても美味しいからね。私個人としても細切りのはそのまま塩味で食べるのが好きだけど、くし型タイプになるとソースを付けて食べたくなる。



「フライドポテトは酒のツマミになるのもいいよね。しかし、この芋けんぴというのも中々クセになる。」


お酒を飲みながら甘い物を食べたがる人も居るけれど、ラルフレッドさんはそのタイプかしら?

赤ワインと芋けんぴの絵面は微妙だけれど、ラルフレッドさんは案外、庶民的な食べ物が好きなタイプかも知れないな。『さきいか』とかのおつまみがあったらずっと食べてそうだわ。



「クセになると言えば、あのマヨネーズというのも凄いね。何も加工していない生の野菜がマヨネーズをつけただけで、あんなに美味しく食べられるとは思わなかったよ。
サミュエルも気に入ってポリポリと食べていたなぁ。」


マヨネーズはねぇ、マヨラーという言葉が浸透するぐらい好きな人が多いからね。

料理のちょっとした隠し味にも使えるし、色々なソースも作れるし料理のレパートリーも豊富。

終いにはご飯に乗せておかず代わりに食べる、なんて強者も前世では居た。それぐらいマヨネーズは身近な調味料だったんだよね。


「今回の料理レシピの登録は、料理を作る為の調味料を優先するって感じかい?」


ロイドさんの言葉に頷きながら、ついでに持ってきた書類を渡した。



「はい、料理ばかり登録しても、知られなければレシピを購入する人はいないですよね。

屋台で販売するにしても屋台向きの食べ物とそうでない物もありますし、一度に登録しても、そう言った売り込みが十分に出来ないかと思いまして。」


「じゃあティアナ嬢はまずこれを登録したらどう動くの?」


「私は家名も持たない平民ですのでティアナと呼んで下さい、ラルフレッド様。」


「そうかい?じゃティアナと呼ばせて貰うから僕もラルフでいいよ。」


え、何言ってんの、この人。

私よりもずっと年上で、貴族の人に愛称呼びは無理でしょ!


「い、いえ。私のような小娘が、今日あったばかりの年上の貴族の方を愛称で呼ぶなんて不敬です。」


「あはは、気にしなくてもいいのに。貴族って言っても伯爵家の四男だし。ティアナは
32歳の男は守備範囲外かい?」


「はぇっ?守備範囲?」


「そっ、まだ独身だから、恋人が居ないなら僕なんてどう?」



ラルフレッドさんはお酒が回ってきたのか、一気に気さくに話しだした。


イケメンのウィンクの破壊力よ。冗談でも怖しいわ。



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