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物語の終わり
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「学園長、お、私の処分については致し方ない事だと思っています。ですが、他の者の処遇については再考をお願い出来ないでしょうか」
アルの言葉で辺りは一瞬、静かになった。
罰則に納得はしていないけれど、自分の所為でギルたちが留年になってしまう事に責任を感じているんだろうなぁ。アリスさんに対しては言わずもがな、か。
アルにとっては本当に真実の愛なんだろうね。
「アルフリート殿下がギルバート君たちの処遇に責任を感じるのは、まぁ、当然でしょう。
ですが、彼らは貴方を止めるべきだったし、唯一、止める事の出来る距離に居たのです」
そうだよね、彼らは強制された訳ではない、自ら進んで協力してこの場に立ったのだもの。アリスさんに至っては陰の首謀者だとは思うけれどね。
「しかしっ!それでは ー 」
「いや、俺たちもアルと同じだよ。俺も本気でミレーヌが悪いと思ってアルに協力したんだ。ちゃんと罰を受けるよ」
アルの言葉を遮ってギルはあっさりと受け入れてそう言った。こういう所がギルらしい短絡的思考なのだろうけれど良い所でもあるんだよね。
だってまだ後ろの子爵令息たちは何か言いたげにぐずぐずとしている。
「え、やっだ。アル様たち、留年しちゃうの?格好悪いですぅ~。あっ、私もか。あはは、でももう一年、一緒に居られるから嬉しいかもっ」
場の空気もアルの覚悟も考えずに甘く弾んだ声でアリスさんが言った。彼女自身の罰には大して気にならないらしい。
アリスさんの言葉に流石のギルも苦い顔をしている。
アリスさんの事を好きだったのか、は知らないけれど、ずっとアルの幼馴染として側に居たギルだ。
アルがギルたちを庇ったようにギルに取ってもアルは大事な親友で側近として側に居ると誓った相手だった。
だからアリスさんの、アルの立場を考えない言動に今更ながらに不快感を持ったのかも。
「アリス・デリル。君は自分の立場をよくよく理解していないらしい。先程の君たちの言動を考えるに、この様に至った経緯の中心には君がいたのだろう。
しかし、殿下たちを退学にしていないのだから君だけを退学にする訳にはいかない。それを考慮しての停学と留年だったのだが」
学園長が厳しい顔をして言った。
そうだよね、彼女が22年前の騒動に馬鹿みたいに憧れて行動した結果がコレだもの。
彼女が学園に居続ければ、また同じような事が起こる可能性もあるし感化される生徒も出てくるかも知れない。
学園側だってそんな爆弾は抱えていたくないハズ。けれどアルたちの罰を留年させる事にした以上、一人だけ退学にする訳にもいかない。苦渋の選択だったのでしょうね、学園側も。
それにしても、、、彼女はアルたちの卒業が取り消されて留年になってしまった事に罪の意識が無いのかしら?特にアルの処遇がこれだけで済む訳が無いのに、、、。
「えっ?だってミレーヌ様に婚約の破棄をしたのはアル様ですよ?まぁ、私の為に、ですけど。
留年しちゃったのはちょっと格好悪いとは思うけど、まだ一緒に学園で過ごせるのは嬉しいです。
あ、今度はもうちょっと頑張って勉強しますよ?だってミレーヌ様は婚約者では無くなるんですよね?
そうしたら私はアル様の婚約者になるんだからもう少し賢くならないといけませんから!」
場違いなほど明るく可愛いらしい笑顔のアリスさんの発言にアルの時とは違った静けさが周囲に広がった。
この発言にアルは黙ってアリスさんを見つめた。アルがどう思ったのかは分からない。
思えばアリスさんには私に対しての悪意は見られなかった。私を陥れて婚約者の座を奪おう、という気持ちも無かったのかも知れないわね。
ただ、純粋に22年前の物語に憧れて、自分がヒロインで私が悪役令嬢と信じ、ヒロインは王子様と結ばれる、そう思い込んでいるだけなのかも。
そうして物語通りに話を進めれば自分は幸せになれる、そう思って行動していたのかな、何も考えずに。
「アルフリート様、婚約解消の手続きは後ほど。
アリス様、貴女の物語はこれでお終い、という事でしょうか?」
「えっ?」
学園長や他の誰かが先に口を開く前にアルに向かって声を掛けた。次にアリスさんに。
アリスさんは急に声を掛けられたからか、それとも思ってもみなかった事を言われたのか、目を丸くして私の方を見た。
「物語に続きはあるのですか、とお聞きしました」
私の言葉にアリスさんは『この人、何言っているの?』という顔をしながらアルを見る。アルはアリスさんに返事をせずに真剣な顔をして私の方を見た。
「今日の事はアリスさんの思い描いた結末に近いモノになったのでしょう。けれど現実は続いております。
貴女の物語の主人公は貴女ではありますが、登場人物は他にも沢山いらっしゃるでしょう?
どうかその方々にも感情も人生がある事も、続きの物語ではよくお考えになって下さいませ」
嫌味に聞こえる?
でも本当にそう思うのよ。アリスさんの物語で悪役令嬢役だった私はもう登場する事はない。私も喜んで退場しよう。
少し違ったかもしれないけれどアリスさん的にはハッピーエンドになったと思う。だけどアリスさんが変わらなければ、たぶんアルは幸せにはなれないような気がする。
学園長の寛大な措置でアルたちはもう一度、やり直す事が出来る。アルがそのチャンスを活かせるかどうか、はアリスさんに掛かっている。アリスさんが物語に浸ったままではアルもその物語から抜け出せないままだろう。
アルは自分の過ちに気付き始めていると思う。でもアリスさんを好きな事には変わりがないように見える。
アルの恋心が覚めないのなら、結局はアリスさん次第だという事だから。チラリと壇上の陛下を見てそう思う。
「では、アルフリート殿下たちは別室に。他の生徒たちと保護者にはもう少し訳ありませんが後日、改めて卒業パーティーを開催する事とします。
最後に、本日は卒業おめでとうございました。皆様の門出を心よりお祝い申し上げます」
学園長がそう言った瞬間、急に私の後ろから声がかかった。
「ミレーヌ・シルフィード公爵令嬢!どうか私に貴女の伴侶となる栄誉をお与え下さい」
その声に静かになっていた周囲が騒がしくなる。
えぇ~!?まだ私を笑い者にしたい人が居るの?一体、どこのお馬鹿さんなのよっ!
アルの言葉で辺りは一瞬、静かになった。
罰則に納得はしていないけれど、自分の所為でギルたちが留年になってしまう事に責任を感じているんだろうなぁ。アリスさんに対しては言わずもがな、か。
アルにとっては本当に真実の愛なんだろうね。
「アルフリート殿下がギルバート君たちの処遇に責任を感じるのは、まぁ、当然でしょう。
ですが、彼らは貴方を止めるべきだったし、唯一、止める事の出来る距離に居たのです」
そうだよね、彼らは強制された訳ではない、自ら進んで協力してこの場に立ったのだもの。アリスさんに至っては陰の首謀者だとは思うけれどね。
「しかしっ!それでは ー 」
「いや、俺たちもアルと同じだよ。俺も本気でミレーヌが悪いと思ってアルに協力したんだ。ちゃんと罰を受けるよ」
アルの言葉を遮ってギルはあっさりと受け入れてそう言った。こういう所がギルらしい短絡的思考なのだろうけれど良い所でもあるんだよね。
だってまだ後ろの子爵令息たちは何か言いたげにぐずぐずとしている。
「え、やっだ。アル様たち、留年しちゃうの?格好悪いですぅ~。あっ、私もか。あはは、でももう一年、一緒に居られるから嬉しいかもっ」
場の空気もアルの覚悟も考えずに甘く弾んだ声でアリスさんが言った。彼女自身の罰には大して気にならないらしい。
アリスさんの言葉に流石のギルも苦い顔をしている。
アリスさんの事を好きだったのか、は知らないけれど、ずっとアルの幼馴染として側に居たギルだ。
アルがギルたちを庇ったようにギルに取ってもアルは大事な親友で側近として側に居ると誓った相手だった。
だからアリスさんの、アルの立場を考えない言動に今更ながらに不快感を持ったのかも。
「アリス・デリル。君は自分の立場をよくよく理解していないらしい。先程の君たちの言動を考えるに、この様に至った経緯の中心には君がいたのだろう。
しかし、殿下たちを退学にしていないのだから君だけを退学にする訳にはいかない。それを考慮しての停学と留年だったのだが」
学園長が厳しい顔をして言った。
そうだよね、彼女が22年前の騒動に馬鹿みたいに憧れて行動した結果がコレだもの。
彼女が学園に居続ければ、また同じような事が起こる可能性もあるし感化される生徒も出てくるかも知れない。
学園側だってそんな爆弾は抱えていたくないハズ。けれどアルたちの罰を留年させる事にした以上、一人だけ退学にする訳にもいかない。苦渋の選択だったのでしょうね、学園側も。
それにしても、、、彼女はアルたちの卒業が取り消されて留年になってしまった事に罪の意識が無いのかしら?特にアルの処遇がこれだけで済む訳が無いのに、、、。
「えっ?だってミレーヌ様に婚約の破棄をしたのはアル様ですよ?まぁ、私の為に、ですけど。
留年しちゃったのはちょっと格好悪いとは思うけど、まだ一緒に学園で過ごせるのは嬉しいです。
あ、今度はもうちょっと頑張って勉強しますよ?だってミレーヌ様は婚約者では無くなるんですよね?
そうしたら私はアル様の婚約者になるんだからもう少し賢くならないといけませんから!」
場違いなほど明るく可愛いらしい笑顔のアリスさんの発言にアルの時とは違った静けさが周囲に広がった。
この発言にアルは黙ってアリスさんを見つめた。アルがどう思ったのかは分からない。
思えばアリスさんには私に対しての悪意は見られなかった。私を陥れて婚約者の座を奪おう、という気持ちも無かったのかも知れないわね。
ただ、純粋に22年前の物語に憧れて、自分がヒロインで私が悪役令嬢と信じ、ヒロインは王子様と結ばれる、そう思い込んでいるだけなのかも。
そうして物語通りに話を進めれば自分は幸せになれる、そう思って行動していたのかな、何も考えずに。
「アルフリート様、婚約解消の手続きは後ほど。
アリス様、貴女の物語はこれでお終い、という事でしょうか?」
「えっ?」
学園長や他の誰かが先に口を開く前にアルに向かって声を掛けた。次にアリスさんに。
アリスさんは急に声を掛けられたからか、それとも思ってもみなかった事を言われたのか、目を丸くして私の方を見た。
「物語に続きはあるのですか、とお聞きしました」
私の言葉にアリスさんは『この人、何言っているの?』という顔をしながらアルを見る。アルはアリスさんに返事をせずに真剣な顔をして私の方を見た。
「今日の事はアリスさんの思い描いた結末に近いモノになったのでしょう。けれど現実は続いております。
貴女の物語の主人公は貴女ではありますが、登場人物は他にも沢山いらっしゃるでしょう?
どうかその方々にも感情も人生がある事も、続きの物語ではよくお考えになって下さいませ」
嫌味に聞こえる?
でも本当にそう思うのよ。アリスさんの物語で悪役令嬢役だった私はもう登場する事はない。私も喜んで退場しよう。
少し違ったかもしれないけれどアリスさん的にはハッピーエンドになったと思う。だけどアリスさんが変わらなければ、たぶんアルは幸せにはなれないような気がする。
学園長の寛大な措置でアルたちはもう一度、やり直す事が出来る。アルがそのチャンスを活かせるかどうか、はアリスさんに掛かっている。アリスさんが物語に浸ったままではアルもその物語から抜け出せないままだろう。
アルは自分の過ちに気付き始めていると思う。でもアリスさんを好きな事には変わりがないように見える。
アルの恋心が覚めないのなら、結局はアリスさん次第だという事だから。チラリと壇上の陛下を見てそう思う。
「では、アルフリート殿下たちは別室に。他の生徒たちと保護者にはもう少し訳ありませんが後日、改めて卒業パーティーを開催する事とします。
最後に、本日は卒業おめでとうございました。皆様の門出を心よりお祝い申し上げます」
学園長がそう言った瞬間、急に私の後ろから声がかかった。
「ミレーヌ・シルフィード公爵令嬢!どうか私に貴女の伴侶となる栄誉をお与え下さい」
その声に静かになっていた周囲が騒がしくなる。
えぇ~!?まだ私を笑い者にしたい人が居るの?一体、どこのお馬鹿さんなのよっ!
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