【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから！

相手の言い分を聞いてみました

「サンっ、んっ、んんっ。王家の影君と一々呼ぶのは面倒だな。

良しっ、仮の名でサントスと呼ぼう！

で、サントス。お前は王家の影として、マリエッタを二十四時間監視し続けて何を見たんだ？」


何が、『良しっ』、ですか！


仮の名が仮になってないじゃないですかっ！

それ、彼の本名じゃないですか！

そんなガバガバ設定で私を断罪するって、ちょっと私を馬鹿にしすぎでしょう。

こんなんで断罪される私は、非常に居た堪れない気持ちになるんですけど！？


しかも二十四時間監視って、皆様に誤解されるような事を言わないでもらいましょうかっ！！


「レオンハルト殿下、私、この様な不審者に、二十四時間監視されていた覚えは無いのですが？」


怒りで扇子を持つ手が震えているのを悪事を暴かれる事への怯え、とでも受け取ったのか、レオンハルト殿下がニヤリと笑った。


「当たり前だろう！人前に姿を現す王家の影バカが居るものかっ」


・・・・此処に居ますが？


またも会場の皆の心が一つになった瞬間、でしたわ。


「それでっすねぇ。マリエッタ嬢は学園の昼休みや放課後に、王子に隠れてルナティア様を呼び出しては、酷い暴言を吐いたり水を掛けたり平手打ちをしたりと、それはもうっ酷い虐めを繰り返していました！

僕っ、俺も姿を現して何度助けに入ろうと思った事か！

でも、ぼ、俺、王家の影っすからね。人前に姿を現す事が出来ないんすよ。王家の影ですからねっ。

だからレオンハルト殿下に助けを求めたんです！王家の影ですけど」


仮名サントス様がそれはそれは得意気に王家の影を連呼していますけれど、その役、結構気に入っている事だけはよく分かりました。

僕を俺に言い換えているのは、王家の影は" 俺呼び "が基本だとでも思っているのでしょう。


それに私の事はマリエッタ嬢で、彼女の事はルナティア様、ですか。
彼も彼女を女神と崇めるクチかしらね。


「マリエッタ！サントスはなっ、お前の監視をしていて、私の女神ルナティアへの非道な行ないを見過ごす事が出来なくなって、私へ直訴して来たのだ」


私の女神ルナティアかぁ～。


彼女が一部の男性に女神の化身と呼ばれているのは、学園では割と有名な話ではあるのよね。


　この国を守護して下さっている女神ルナリス様は美しいピンクブロンドの髪とアクアマリン色の瞳を持つと言われています。
ピンク髪に青い瞳の美少女ルナティア嬢に、ルナリス様を重ねてしまうのは分からなくもありません。


しかも彼女は魔力量は僅かですけれど、貴重な癒しのスキル持ちですからね。


だけど聞いた話では、癒しのスキルと言っても、『彼女と一緒に居ると何となく癒されるわ～』ぐらいのものらしいのよ。

正直それって気のせいレベルじゃない？


単にふわふわ髪で愛らしい見た目の美少女に微笑まれたら『癒されるっ！』って思っちゃうだけじゃない？


というのが女子生徒たちの共通認識だったりします。


まぁ、自分の好きな人、憧れている人を何かに例えたくなる気持ちは分からなくもないけれど、彼は、レオンハルト殿下だけは本当に勘違いしているのよ。


「どうだっ、マリエッタ！これ程までに信頼性の高い証人は存在しないだろう！

私も彼女から相談を受けていたが、証拠が中々集まらず苦労していた。そんな時に彼が勇気を出して名乗り出てきてくれたのだ。

まさか彼が王家の影だとは気付かなかったが・・・」


あれっ？まさかレオンハルト殿下は騙されていらっしゃる？


殿下の最後の呟きに、ルナティア嬢は少し動揺していますわよね？


証拠が集まらず、断罪出来ない事に焦れた彼女が証人を用意した、という事かしら。
私は虐めなんてしていないのですもの、証拠なんて集まる筈もありませんわ。


「私について下さっている王家の影の方は彼では無い、と自信を持って言えますわ。
それに学園では昼休みも放課後も、ルナティア嬢にはレオンハルト殿下がベッタリと側にいらっしゃった、と私は認識しておりましたが」


昼休み、放課後と言わずに一日中、彼女と殿下、そして彼女の取り巻きとなった側近候補たちが一緒に過ごしている事は学園中の生徒が知っている事。

ですのに、どうして殿下はそれに気付かないのかが不思議ですわ。


「す、隙間時間にマリエッタ様に虐められていたのっ。

私、本当に辛くって、食事も喉を通らない程なのですっ！」


学園の食堂で、殿下とキャッキャウフフな甘い雰囲気で『あ～ん』なんて、食べさせあっていたのを見たのは昨日の事ですが？

しかも私に見せつけたかったのか、態々、王族専用の個室で食べずに、一般生徒に混じってボリュームたっぷりのＡ定食をデザートまで食べさせあって完食していましたよね？


もしかして彼女は喉を通さずに食事する事が出来るのでしょうか？


あぁ、そんな事が出来るのでしたら、女神の化身と言われても不思議ではありませんわね。


本当の女神様が聞いたら、『そんな隠し芸出来るかっ！』とか言いそうですけど。


さて、どうしたものでしょう？


婚約解消は望むとことではありますが、レオンハルト殿下が彼女に騙されているのならば、この国の為にも目を覚まさせて差し上げた方がよろしいのかしら？


そう思案しチラリと国王陛下たちの方へ視線を送れば、王族御一同、皆様が首を縦に振っていましたわ。


何処かの観光地であんな感じで首を振っている工芸品を見た事があるような・・・？


レオンハルト殿下は、もう取り返しがつかない程のお馬鹿具合を晒しているような気もしますけれど、それでも殿下に温情を、という事でしょうか。


性悪女に騙された哀れな第一王子、という方が同情を引く事が出来て、軽い処分で済ませる事が出来るかもしれませんものね。


でもなぁ～。


私、冤罪を吹っ掛けられているのに、冤罪を晴らしつつ、殿下まで救わないといけないなんて、とても面倒なのですけれど。


一応、お父様にお伺いを立てようと見てみれば、とっても腹黒い笑顔を浮かべていたわ。


これ、あれよね？

王家への貸しはどんどん作れ！という表情よね。


この場を上手く収めた後に、王家にどんな要求を吹っ掛けるつもりなのかしら？


何にせよ、大変なのはこの私なんですけれどね！！



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