契約婚ですが、エリート上司に淫らに溺愛されてます

入海月子

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【番外編】

理人⑮

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 会長の課題付きの視察に疲れて帰社すると、葉月は帰った後だった。
 十八時を過ぎているから、当然か。
 会いたかったな。
 そう思っていると、宇部部長から声をかけられた。

「あぁ、真宮部長、お疲れさま。水鳥川さんが早退して、年内はもう来ないそうだよ。なにか聞いてる?」
「早退? 具合が悪かったんですか?」
「そうだね。顔色が悪かったな。それと有給申請は関係ないだろうが」
「そうですか……」

 年内はもう来ない? どういうことだ?
 葉月からはなにも聞いていない。
 
(忙しそうだったから、調子を崩したのか?)

 葉月は無理をするたちだから心配だ。
 しかも、あの真面目な葉月が早退するとは、余程具合が悪かったのか? 
 いや、それに続いて休みを取るなんて、なにかあったのか?
 
 机の上を見ると、葉月に指示していた資料と電話メモが置いてあるだけだった。

(水鳥川会長から電話?)

 帰社次第コールバックするようにあったが、会長からなら、携帯に連絡してくれてもいいのにと心の中で舌打ちする。受け手を見ると、ベテランの男性社員だった。
 わざとだな。
 男のやっかみは面倒くさい。

(そうだ、携帯!)

 プライベートのスマホを見るが、葉月からはなんの連絡も入っていなかった。

「私はお先に失礼するよ」
「お疲れ様でした」

 宇部部長を見送り、とりあえず、会長に電話をする。

『ようやく電話してきたか……』

 名乗ると会長はあきれたような声を出した。

「ご連絡が遅くなり、申し訳ございません。今、倉庫から帰社したところです。それで……」
『葉月が婚約を解消するそうだ』
「はっ?」

 業務報告をしようとした言葉を遮られ、思ってもみないことを言われた。
 頭が真っ白になる。

(婚約、解消? 誰と誰が?)

『とにかく君とは結婚しない。他の男を探してくれ、だと。葉月があそこまで言うのもめずらしいな』
「な、んで……?」
『さぁ? それは知らん。婚約解消の一点張りでな。なにをした?』
「俺はなにも……」

 うろたえて、会長に敬語を使うのも忘れていた。
 まったく心当たりはなく、混乱して、茫然とする。

 だいたい先週今週とも、休みも含めて、会長に振り回されていて、葉月とは会社で顔を合わせるぐらいしかできていない。
 それが駄目だったのか?
 だが、今朝会った時には特に変わった様子はなかった。
 可愛らしい顔で微笑んでいた。

『とにかく本人からの強い要望だ。残念だが……』
「待ってください、誤解です! なにか誤解があるはずです! 葉月と話します。それまで待ってください」

 会長の最後通告を聞く前に、焦って叫ぶ。
 絶対なにかある。なにか理由が。

(なにがあったんだ、葉月? なにを考えている?)

 この間は父親のためだった。
 今度はなんだ?

『なかなか固い決意だったようだが?』
「本人から撤回の連絡をさせます」
『それなら、今回だけは待とう。ごたつくようなら……』
「大丈夫です! ご連絡しますから!」

 きっぱり言って、電話を切る。
 こんな状況でも、嫌われていない自信はあった。
 すぐさま葉月に電話をかける。

『お客様のおかけになった電話番号は、現在電源が切られているか、電波が届かない地域に……』

 繋がらない。
 病院にでも行っているのか?

(病院!?)

 まさかなにかの病気じゃないよな?
 ザッと血の気が引く。
 とりあえず、葉月の家に行ってみることにした。


 

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