【短編集】纏う人たちの物語 ゼンタイに関わりたくなかったのに

ジャン・幸田

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アベックゼンタイの凌辱

6・ぬるぬる

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 二人がおとされた池の中は飴のような甘い味がしていたが、それにもまして身体は気持ちよくなった。でも絡んでくる感覚もあって変な気持ちだった。そして身体全体がホクホクな感じになった。しかも、そのぬるぬるしたものはまるで生物のように纏わりついていた。

 その池は深く、入った途端奈落の底にでも引き込まれるようにずぼっと引きずられてしまった。しかも身体の質量ではなく意志を持ったように手でもあるかのように。すると気持ちよくなっていたが、網のようなものが急激に浮かび上がってきてまた地上へと引き戻された、ゼンタイたちが居並ぶところに。


 「なにしやがるんだ!」

 浩司は怒鳴ったが、ゼンタイ達はなんら反応がなかった。すると身体の方に変化が現れた。全身がなにか皮に包まれたかのように。

 「わたし、変になったみたい! なにか身体が締め付けられる感覚がするわよ。顔も! どうなるのよ!」

 麻巳は自分の身体を触っていた。ぬるぬるしたものが彼女の身体を蝕んでいるのが分かったが、なにがおきているのか見当がつかなかった。それは浩司も一緒だった。

 「俺もだ! なんなんだ、これは? 身体が気持ち良いのに気持ちは不安でいっぱいだ! なにしやがったんだ! お前ら!」

 ゼンタイ達のなかから声が聞こえてきた。それは念仏のような声であった。どうやら仲間になれという事をいっているようなのが分かった。


 「お前らの仲間にならねえって言っているだろ!」

 するとゼンタイ女王の声が聞こえてきた。

 「ならねえだと? ふん、手遅れさ。もうすぐ仲間になるんだからな!」

 その言葉を聞いた途端、二人の身体は燃えるような感覚に襲われた!
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