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後編
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治安当局が捜索したが川に落ちたゲオルグは結局見つからなかった。そのため、彼は行方不明のままであり死亡したと認定された。テレサであるがとある男爵令嬢とゲオルグの誘拐で恋人のコンラートともに厳罰を受ける事となった。本来なら父親のカールの政治力があれば、極めて軽い刑罰にできたかもしれないが、娘の仕出かした行為で親子の縁を断絶した。
「父上様、あんまりです! 辺境に追放だなんて!」
カールとの最後の面談は、父と子ではなく、引退した当主と罪人の関係だった。カールは優秀な将来の娘婿を喪った事から、遠縁の男子を養子にして自身は領地内の隠居場に軟禁される道を選んだ。
「辺境か? お前が行くところはまだ文明の光が当たるところだからいいだろ。まあ冬は長く厳寒であるが。それとお前の浮気相手の・・コンなんとかだが・・・」
「浮気じゃないわ! 本当は彼と一緒になりたかったのよ! 彼はどうなったのよ?」
「そうか、知らないのか。じゃあ教えてやろう。本来なら極刑もあったんだが・・・かなり私腹を肥やしていたし犯罪組織のリーダーだったしな。だから男爵令嬢を拉致できたが・・・奴も追放だ。もっとも行く先は”嵐の海”の絶海の孤島だ」
テレサは嵐の海と聞いて恐怖した。そこは凶悪犯が流される場所であり、一種の神明裁判に任されるところであった。すなわち、人の営みは皆無で野獣のように暮らすしか生き延びる事が出来ない。神の温情を受けれなければ一年も持たない場所で、生きて島を出た者は数千人のうち数人しかいなかった。
「いやー! わたしもそこに一緒にいくわ! 一緒に行きたいわ!」
その言葉を聞いたカールはすぐさまテレサをコンラートと同じ流刑地に変更させた。その後の二人であるが、数年後、次の流刑者を護送した船長の報告によれば、二人らしき骸の一部があったという・・・
※※※※
死んだ事になったゲオルグであるが、生きていた。あらかじめ、アリアが手配した潜水道具を使い、現場から遠くの場所へ逃走していた。
アリアが提案した策の一つが、ゲオルグが全てを捨てるというものであった。そして二人で逃避行するものであった。アリアはゲオルグが好きであった。前の人生ではゲオルグが貴族の婿養子になるため婚約したのを機に姿を消したが、今回は愛を貫くことにした。アリアも二周目の人生だった。
前の人生では、別の大陸に渡り独身を貫いて終えたが、人生が終わる直前にこの国に戻った時にゲオルグの最期を知った。数十年が過ぎて発見されたゲオルグの骸で全てが明らかになった。その時、この国では革命によって貴族階級は没落していた。テレサの夫になったコンラートの所業が革命を誘発したのだ。その二人であるが革命の最に処刑された。
二人が消えたので革命が起きないので、この国にいても問題なかったが、カールの目を欺くためにゲオルグに一芝居を打ってもらった。そして一緒になった。
※※※※
数年後、遠く離れた大陸に二人はいた。アリアの手配によって別人になったゲオルグは夫婦になっていた。その日、ゲオルグが新聞を見ていると祖国で革命が起きた記事を見つけた。それはアリアがいった通りであったが、細かい事が違っていた。前のアリアの人生で起きた革命と違い流血の惨事にならなかったようだ。
「あのまま、あの国にいたら俺たちはどうなっていたんだろうか」
「さあ、神のみぞ知る事でしょうね。それよりも次こ子の名前どうしましょう?」
アリアは大きなおなかを愛おしくなでていた。おなかの中には二人の愛の結晶が宿っていた。前の人生と大きな時代の流れは同じであったが、いくつか異なっていた。小さい事であるが二人の人生が交わり、幸せになった。
「父上様、あんまりです! 辺境に追放だなんて!」
カールとの最後の面談は、父と子ではなく、引退した当主と罪人の関係だった。カールは優秀な将来の娘婿を喪った事から、遠縁の男子を養子にして自身は領地内の隠居場に軟禁される道を選んだ。
「辺境か? お前が行くところはまだ文明の光が当たるところだからいいだろ。まあ冬は長く厳寒であるが。それとお前の浮気相手の・・コンなんとかだが・・・」
「浮気じゃないわ! 本当は彼と一緒になりたかったのよ! 彼はどうなったのよ?」
「そうか、知らないのか。じゃあ教えてやろう。本来なら極刑もあったんだが・・・かなり私腹を肥やしていたし犯罪組織のリーダーだったしな。だから男爵令嬢を拉致できたが・・・奴も追放だ。もっとも行く先は”嵐の海”の絶海の孤島だ」
テレサは嵐の海と聞いて恐怖した。そこは凶悪犯が流される場所であり、一種の神明裁判に任されるところであった。すなわち、人の営みは皆無で野獣のように暮らすしか生き延びる事が出来ない。神の温情を受けれなければ一年も持たない場所で、生きて島を出た者は数千人のうち数人しかいなかった。
「いやー! わたしもそこに一緒にいくわ! 一緒に行きたいわ!」
その言葉を聞いたカールはすぐさまテレサをコンラートと同じ流刑地に変更させた。その後の二人であるが、数年後、次の流刑者を護送した船長の報告によれば、二人らしき骸の一部があったという・・・
※※※※
死んだ事になったゲオルグであるが、生きていた。あらかじめ、アリアが手配した潜水道具を使い、現場から遠くの場所へ逃走していた。
アリアが提案した策の一つが、ゲオルグが全てを捨てるというものであった。そして二人で逃避行するものであった。アリアはゲオルグが好きであった。前の人生ではゲオルグが貴族の婿養子になるため婚約したのを機に姿を消したが、今回は愛を貫くことにした。アリアも二周目の人生だった。
前の人生では、別の大陸に渡り独身を貫いて終えたが、人生が終わる直前にこの国に戻った時にゲオルグの最期を知った。数十年が過ぎて発見されたゲオルグの骸で全てが明らかになった。その時、この国では革命によって貴族階級は没落していた。テレサの夫になったコンラートの所業が革命を誘発したのだ。その二人であるが革命の最に処刑された。
二人が消えたので革命が起きないので、この国にいても問題なかったが、カールの目を欺くためにゲオルグに一芝居を打ってもらった。そして一緒になった。
※※※※
数年後、遠く離れた大陸に二人はいた。アリアの手配によって別人になったゲオルグは夫婦になっていた。その日、ゲオルグが新聞を見ていると祖国で革命が起きた記事を見つけた。それはアリアがいった通りであったが、細かい事が違っていた。前のアリアの人生で起きた革命と違い流血の惨事にならなかったようだ。
「あのまま、あの国にいたら俺たちはどうなっていたんだろうか」
「さあ、神のみぞ知る事でしょうね。それよりも次こ子の名前どうしましょう?」
アリアは大きなおなかを愛おしくなでていた。おなかの中には二人の愛の結晶が宿っていた。前の人生と大きな時代の流れは同じであったが、いくつか異なっていた。小さい事であるが二人の人生が交わり、幸せになった。
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