上 下
11 / 76
(2)コスプレ会場の舞台裏

生まれ変われる!

しおりを挟む
 志桜里は全身に傷跡があった。それらは不慮の事故によるもので命を長らえる代償であった。ほかにも代償として失ったのは友とバスケット選手の夢だった。それらはもう二度と戻ってこないものであるし、そのショックから傷跡を人に見せられるように回復するのに二年以上もかかった。

 志桜里は肌タイの中に引きしまった身体を入れていく度に生まれ変わる様な気がしていた。もう戻ることが叶わない高校時代の日々を大岩基美として体験できるような気分になっていた。

 肌タイは志桜里の傷だらけの身体を覆い隠すように締め付けていったが、その締め付けが基美として演じることを許されて行くような感覚が満ち満ちていた。そしてもうひとつ感じていた。自分は人形のようになっていくのだと。志桜里は基美になっていくのだと。

 「し・お・りちゃーん。そんなに感じていないのよ肌タイに! それじゃゼンタイフェチみたいよ! はやく準備してね!」
 愛梨にせかされ志桜里はこれはいけないと思いなおして急いで首まで肌タイを着込んで背中のファスナーを愛梨に上げてもらった。そして急いで用意された下着を履き始めた。
 
 着ぐるみになるときに着用する肌タイの下には水着を着る時に使うインナーショーツを使う場合が多いが、この日の成海の指示では肌タイの下は何も履かないということになっていた。そうなったのも、今日は炎天下のコスプレブースに出るからだ。だから志桜里も肌の上に直接肌タイを着ているので、透けて見える危険があった。だから下着を着始めた。

 ただ、この下着がとんでもない代物だった。「アルテミスの美少女たち」の設定だからしかたないけど、昭和末期のレトロな下着だった。だから志桜里たちから見れば・・・時代錯誤だった。

 「そう志桜里、その下着?」

 「そうねえ・・・成海先生には悪いけどかわいすぎるわねえ。本当に昭和の女子校生ってこんなの履いていたの?」

 そう戸惑いつつも下着のうえから志桜里が通っている高校の制服を羽織り始めた。その制服も昭和の全寮制お嬢様学校というにに相応しいレトロな雰囲気が漂っていた。しかも量産品のコスプレ衣装ではなく公式設定に沿った実際に制服として使える品質のものだった。
 志桜里が首を通して整えていると愛梨も同じように制服姿になっていた。それは、その場にいた五人の少女も同じであった。しかも五人とも美少女と呼んでも差し支えない美形ばかりであったので、そのままウィッグでも被ればレイヤーのチームとして通用しそうであった。しかし、五人ともやらないといけないことがあった。キャラクターの着ぐるみマスクを被ることだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

最愛の推しを殺すモブに転生したので、全力で救いたい!

BL / 完結 24h.ポイント:5,510pt お気に入り:2,131

【完結】前世のない俺の、一度きりの人生

BL / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:257

嵐は突然やってくる

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:512pt お気に入り:1

猫奴隷の日常

BL / 連載中 24h.ポイント:120pt お気に入り:793

第4皇妃は可憐な男子~キスしたら皇帝反逆罪⁈

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:301

デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:224

処理中です...