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深窓の令嬢
01・亡骸
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コゼット・カペールは目を覚ました。すでに枕元ではメイドが朝の準備をしていた。思わずコゼットは立ち上がろうとしたが、体がいうことを聞かなかった。
「お嬢様、まだ体の調子が良くないのですから無理をなさらないでください」
そういわれたが、言葉が出なかった。なぜなんだろうかと考えていると数日前に起きた事を思い出してぞっとした。あの陰気で臭気漂う部屋の事を。
「あなたには死んでもらいます!」
コゼットは卒倒しそうだったが何とか持ちこたえた。その時逃げ出そうと思ったが足が冷たくなりガクガク震えていた。すると執事は目の前にある寝台のようなものの布をめくりこっちに来るようにと合図した。そして見せられたのは自分と顔つきがよく似た少女だった。その少女は・・・亡骸になっていた。若い娘が亡くなるというほど惨い事はないものである。それが自分とよく似ていたら、まるで自分の亡骸のように思え震えてしまった。
「こ、この人は・・・なんだか私に似ていますが?」
コゼットは気色悪いと思いながらも悶絶した死に顔を浮かべている娘をのぞき込んでいた。自分とよく似た長い金髪と顔立ちであったが肌は青く生気は滅していた。
「このお方はカペール家の令嬢のコゼット様だ。折角婚約が成立したというのに幼いころからの持病が悪化して一週間前にお亡くなりになったのだ。本当にお可哀そうな事です。本来なら葬儀に出すべきなのですが、彼女が亡くなったというので困ることがありまして。そこで、お嬢様の代わりにあなたがなるのです!」
執事はそういうと、早く着ているものを脱ぐようにと迫った。でもコゼットは納得しないといった態度をとることにした。
「申し訳ないのですが、もう少し理由をお聞かせ願いますか? それに私はまだ男の人に裸をみせたことありませんが」
すると執事は恐縮しながら着替えの服を用意してくれた。その服は豪華な貴族令嬢の寝間着だったそれは。目の前の遺体になった娘が着ていたものに違いなかった。
「それは失礼した。このことは私がお仕えしているご夫妻とごく一部の秘密にしなければならないので、気が付かなかった。申し訳ない。
こちらのコゼット様ですが婚約したばかりでして、これは我がカペール公爵家にとって今後の命運がかかった事です。いまお嬢様と先方の婚約がなかったことになったら、今までの苦労が水泡に帰すところだったわけで。
そこで以前見かけたあなたの事を思い出したご主人様が、似ている娘を替え玉にしようということになったわけです。だからあなたをここにお連れしたわけです」
執事の勝手な都合による理屈にコゼットは何となく意味が分かった。
「それって、私は死んだ事にして、これからは目の前の娘コゼットとして生きて行けというわけなのよね。そして拒否は出来ないってことですよね。拒否すれば私は亡骸になるというわけでしょ!」
コゼットはそういうと執事は恐ろしい顔で首を縦に振った。それはここで死んだ事にするのか本当に死ぬのかを決めろという意味であった。
「わかっていただきましたか? それでは・・・」
そう言いかけていた時、コゼットは着ていたメイド服を脱ぎ始めた。そして全てを脱ぐと用意された寝間着に着替え、伯爵令嬢のコゼットになった。
次に執事と一緒にぞっとする作業をはじめた。亡骸になったコゼットに今まで着ていたメイド服を着せ始めた。彼女は政略結婚とはいえもう少しで花嫁になるはずだったのに、死んでしまった。その死を隠蔽するためこれから貧しいメイドの亡骸へと変えられた。元の伯爵令嬢のコゼットは何も着ていなかったが、粗末なメイドの下着に始まり使い込まれたメイド服を身に着けた。彼女は哀れにも若くして亡くなったメイドにされた。
亡骸にはコゼット・リューベックが身に着けていたものが全て移された。この瞬間から元下級貴族でメイドのコゼットは死亡したことにされた。彼女はカペール家にやってきて数日で突然死し、その亡骸は実家に送り届けられることなく貧民者墓地に埋葬され遺品だけが両親の元に送られることとなった。それが事実とされるわけだ。
「あのう・・・すいません。両親に最期の手紙を書いてもいいですか?」
コゼットは両親に送られる遺品を見ながらいった。両親に会えずこんな形で別れなければならないことが悲しかった。
「かまわないが、手短にしてもらえないか? だって死ぬような人間が長い手紙を書くはずないからな」
そういわれ、コゼットは短くこうかいたという。
”パパ、ママ、ごめんなさい、さようなら。長生きしてください。”
「お嬢様、まだ体の調子が良くないのですから無理をなさらないでください」
そういわれたが、言葉が出なかった。なぜなんだろうかと考えていると数日前に起きた事を思い出してぞっとした。あの陰気で臭気漂う部屋の事を。
「あなたには死んでもらいます!」
コゼットは卒倒しそうだったが何とか持ちこたえた。その時逃げ出そうと思ったが足が冷たくなりガクガク震えていた。すると執事は目の前にある寝台のようなものの布をめくりこっちに来るようにと合図した。そして見せられたのは自分と顔つきがよく似た少女だった。その少女は・・・亡骸になっていた。若い娘が亡くなるというほど惨い事はないものである。それが自分とよく似ていたら、まるで自分の亡骸のように思え震えてしまった。
「こ、この人は・・・なんだか私に似ていますが?」
コゼットは気色悪いと思いながらも悶絶した死に顔を浮かべている娘をのぞき込んでいた。自分とよく似た長い金髪と顔立ちであったが肌は青く生気は滅していた。
「このお方はカペール家の令嬢のコゼット様だ。折角婚約が成立したというのに幼いころからの持病が悪化して一週間前にお亡くなりになったのだ。本当にお可哀そうな事です。本来なら葬儀に出すべきなのですが、彼女が亡くなったというので困ることがありまして。そこで、お嬢様の代わりにあなたがなるのです!」
執事はそういうと、早く着ているものを脱ぐようにと迫った。でもコゼットは納得しないといった態度をとることにした。
「申し訳ないのですが、もう少し理由をお聞かせ願いますか? それに私はまだ男の人に裸をみせたことありませんが」
すると執事は恐縮しながら着替えの服を用意してくれた。その服は豪華な貴族令嬢の寝間着だったそれは。目の前の遺体になった娘が着ていたものに違いなかった。
「それは失礼した。このことは私がお仕えしているご夫妻とごく一部の秘密にしなければならないので、気が付かなかった。申し訳ない。
こちらのコゼット様ですが婚約したばかりでして、これは我がカペール公爵家にとって今後の命運がかかった事です。いまお嬢様と先方の婚約がなかったことになったら、今までの苦労が水泡に帰すところだったわけで。
そこで以前見かけたあなたの事を思い出したご主人様が、似ている娘を替え玉にしようということになったわけです。だからあなたをここにお連れしたわけです」
執事の勝手な都合による理屈にコゼットは何となく意味が分かった。
「それって、私は死んだ事にして、これからは目の前の娘コゼットとして生きて行けというわけなのよね。そして拒否は出来ないってことですよね。拒否すれば私は亡骸になるというわけでしょ!」
コゼットはそういうと執事は恐ろしい顔で首を縦に振った。それはここで死んだ事にするのか本当に死ぬのかを決めろという意味であった。
「わかっていただきましたか? それでは・・・」
そう言いかけていた時、コゼットは着ていたメイド服を脱ぎ始めた。そして全てを脱ぐと用意された寝間着に着替え、伯爵令嬢のコゼットになった。
次に執事と一緒にぞっとする作業をはじめた。亡骸になったコゼットに今まで着ていたメイド服を着せ始めた。彼女は政略結婚とはいえもう少しで花嫁になるはずだったのに、死んでしまった。その死を隠蔽するためこれから貧しいメイドの亡骸へと変えられた。元の伯爵令嬢のコゼットは何も着ていなかったが、粗末なメイドの下着に始まり使い込まれたメイド服を身に着けた。彼女は哀れにも若くして亡くなったメイドにされた。
亡骸にはコゼット・リューベックが身に着けていたものが全て移された。この瞬間から元下級貴族でメイドのコゼットは死亡したことにされた。彼女はカペール家にやってきて数日で突然死し、その亡骸は実家に送り届けられることなく貧民者墓地に埋葬され遺品だけが両親の元に送られることとなった。それが事実とされるわけだ。
「あのう・・・すいません。両親に最期の手紙を書いてもいいですか?」
コゼットは両親に送られる遺品を見ながらいった。両親に会えずこんな形で別れなければならないことが悲しかった。
「かまわないが、手短にしてもらえないか? だって死ぬような人間が長い手紙を書くはずないからな」
そういわれ、コゼットは短くこうかいたという。
”パパ、ママ、ごめんなさい、さようなら。長生きしてください。”
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