冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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奪われる頭脳よみがえる悪夢

170・首相と全身拘束刑の女(3)

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 この作戦は初めからおかしな点が多かった。わざわざダミーの機体を用意したりなど、失敗するリスクが高い事をしていた。アイリにスパイアプリを入れるだけで目的が達成できるし、二重スパイの可能性があるクラウゼを呼んだりしなくてもよかったはずだ。それに丹下教授は・・・

 「だからめんどくさい事をしたわけだよ。おかげで失敗する可能性も高かったが。それにしても、孫娘だと分かったらからこんなことをしたわけではないとだけ言っておく」

 そういって杠は立体ヴィジョンを呼び出した。そこに映し出されたのは帝央大学理工学部に潜入しているアイリのダミー機体から見た様子だった。

 「これは?」

 「奴らの目的の一つ、麗華の三姉妹の一人の電脳を復元しているわけだ。それには愛莉のような高い知能の人間の生体脳を加工する必要があったわけさ。そんなことをされたら愛莉という存在は完全に抹消されてしまうが、それよりも防がないといけない事があるわけさ。悪夢の続きを遅らせるのを」

 「遅らせるって、まさか? エキゾチックブレインを再稼働を容認するのですか?」

 淳司はある事を思い出した。実は愛莉の全身拘束刑を防ぐことは出来たはずだった。なのに杠は・・・そんな、人間が思い付く事といえば、恐ろしい作戦かもしれない事を。

 「そういうことだ。何度も奴らの企みは防いできた。でも、切りがないだろう? でも、私には残された時間はないのだ、それに丹下教授も。もっとも教授は別のアプローチをするようだがな。だから最後にするわけだが、現生人類にとって未来が残るようにするわけだ」

 杠が選挙管理内閣の首班に選ばれたのはほんの一か月前だった。愛莉が意図せず関わってしまった機密漏洩事件の直後であったが、そもそも杠は選ばれるはずのない議員だった。それに今日行われた選挙に出馬していないから、首班指名の為の国会が召集される日までしか首相の地位にいられない。その目的は・・・

 「じゃあ、行かれるんですね。あそこに愛莉ちゃんを連れて」

 「そういうことだよ君! 愛莉の電脳がこちらの手になければならないわけだ。奴らを終わらせるにはな。まあ、愛莉には相当無茶な事をさせたな、かつての君のようにな。君にも悪い事をしてしまったな」

 「そうですよ! 裏切られた思いましたよ! おかげで今も不具合があります。この機械にされた身体は!」

 過去に杠の作戦ミスで淳司は奴らの手に落ちてしまった事があった。そんなミスをしているから奴らは今の残っているわけである。奴らは「悪夢の13日」を生き延びた人類を人工進化させようとした宗教的狂信を持つ科学者たちを意味していた。その奴らの牙城の一つが帝央大学に構築されていた!

 「それはすまない。気づいていると思うが奴らが作っているエキゾチックブレインの本体はグレートベイシティのどこかにある。あそこ帝央にあるのは実証実験装置に過ぎない。実験が成功すれば・・・始まるわけだ最終決戦が!」

 かなりダークな微笑みを浮かべ杠は愛莉のボディに手を置いた。そのボディに残る愛莉の生身は僅かであったが、その遺伝子の何割かは杠由来であった。

 
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