乙女ゲームの悪役ボスに生まれ変わったけど、ヒロイン可愛すぎてつらい。

ファネシス

文字の大きさ
53 / 60
最終章

1

しおりを挟む
テスト当日。
私達は森の前に集合していた。チームは勿論、中間試験の時と同じだ。

モンスターの種類はそのチームの実力にあったものが、教師側から割り振られる。

「私達は小竜(ミニ・ドラゴン)の討伐ですね。いくら小さいとはいえ、ドラゴンなんてあの森に住んでいるんでしょうか……?」

フィオナが配られた課題の紙を見ながら言う。

「試験のために予め捕獲されているのを何処からか連れてくるそうだ。ミニと呼ばれているが、他の種族の竜と比べて小さいだけで列記とした大人の個体だ。油断するな。」

スウォンが、フィオナの言葉に答える。
ゲームのルート通りだ。スウォンルートでは試験の課題はミニ・ドラゴンで合っている。時折、ゲームと違う展開で話が進むときがあったので警戒していたが、ここに来てルート通りに進み始めたのだろうか。

「むー、ドラゴンなんておっかないものが課題だなんて。ついてないんだぞ……。昨年はリザードだったのに。」

ルヴィナスがしょんぼりと肩を落としている。
確かにこの課題は他の課題よりも圧倒的にレベルが高い。他の生徒はスライムから、蜥蜴人(リザード)あたりまでが多いだろう。ここには会長のスウォンもいる。後、私も一応優等生。なので難易度が跳ね上がっているようだ。

「そうか?  丁度いい位だろう。」

「お前を基準にするな!  普通はドラゴンなんて課題は与えられないぞ。ああ、やっぱり図書室に引きこもっていれば良かった。でも変態教師はうるさいし……。」

ルヴィナスは何やらブツブツと呟いている。
ゲームの本来の流れならこのチームはルヴィナスではなくルイスだった。そして、担当教師はリィナ先生。チームのメンバーが変わった事が心配の種だが、一応ストーリ通りに進みそうな感じだ。ルヴィナスには悪いが諦めてもらうほかない。

「おやおや、ルヴィナス。そんなに落ち込んでどうしたの?」

「げっ!  変態教師。何故ここにいる!?」

後ろから聞こえた声にルヴィナスがとっても嫌そうな顔で振り向き答える。……私もルヴィナス同様嫌そうな顔をしていると思う。

「俺は君達の担当だよ。可愛い生徒に励ましてあげようと思ったのに、酷い言われようだね。先生、悲しいよ。」

わざとらしくそんな事を言うキリト。
フィオナだけはおろおろしているが、ほかの私含めた三人はしら~っとしている。

「そんな事を仰いますが課題を決めたのは担当教師のキリト先生なのではありませんか?」

一応、教師という事だからかスウォンはキリトに対して敬語を使う。腹の中ではどう思っているか知らないが。

「君たちならできると思ってね。可愛い子には旅を……っていうでしょ?」

「私達を信頼して下さっているんですね!  期待に応えられるように頑張ります!」

フィオナは歓喜極まったように目を輝かせている。疑う事がない純粋な心は尊いし、そこが彼女の可愛いところだが。お姉ちゃんは貴女のことが少し心配です……。

「うんうん、フィオナちゃんは良い子だね。頑張って。」

私とルヴィナスが呆れたように彼らのやりとりを見ていると、キリトがこちらの方に向きなおる。

「君達もしかめっ面していないで、頑張って。」

ぽんぽんと私たちの肩を叩く。その時、ルヴィナスがとてつもなく嫌な顔をしていたのは見なかった事にしよう。

「おい、出発するぞ。」

見ると、スウォンが森の方へと踏み出していた。置いていかれては困る。私達は森の方へと足を踏み出した。

「頑張ってね~。」

キリトはそれ以上何をするべくもなく私達に手を振っていた。

問題は山積みだ。キリトは警戒しておくに限るし、ゼノは何をしでかすか分からない。ルート通りの展開とはいえここから何が起こるか分からない。このまま本来の試験が行われるとは思わないほうが良いかもしれない。

ーーー

四人で森を進んでいく。こんなに奥深くに来るのは初めてだ。本当に広いんだな。
周りは木が生い茂っていて、視界は悪い。何かの動物の声が時々する。私達以外に生徒の気配もない。薄暗いし、どこか不気味な雰囲気である。

……こういう雰囲気は正直苦手だ。フィオナはどうなんだろうかと目で彼女の方へ視線をやるが、割と気にしていないようで普段と変わらないように見える。

「フィオナ、怖くないの?」

「え、怖い?  ドラゴンのことかな?  それだったら、不安はあるけど……」

「いや、そうじゃなくて。えと、その。この雰囲気。」

幼い頃は怖い夢を見たとか、壁のシミが人の顔に見える、とかで私に泣きついてきた記憶があるのだが。

「やだなぁ、シェリア。もう、私も大きくなったんだよ。こんなのへっちゃらだよ~。」

フィオナは手を口元に当て笑う。その様子は嘘偽りなさそうだ。

「……概要は聞いたが、お前らは姉妹なんだろう。その、小さい頃はどんなだったんだ?」

スウォンが私達の会話に入り込む。
どうやら昔の話が聞きたいらしい。というよりもフィオナの幼い頃の話が聞きたいと思われる。……からかってやろう。

「あら、会長。フィオナの小さい頃の話が聞きたいんですか?  ふ~ん……。」

「な、なんだその目は。別に変な意図があるわけじゃない。一般的な兄弟の話を聞きたいだけで……。」

「普段、他人に興味を示さない貴方が珍しいのではないですか?  フィオナが特別なのかしら。」

「ち、ちが!」

大抵無表情で澄ましているスウォンの表情が赤く染まる。俺様という設定だが、可愛い面もあるようだ。

「僕も二人の話、気になるぞ。」

ルヴィナスまで話に乗ってくる。予想外だ。適当にスウォンをからかって流そうと思っていたのにな。

「そんな話題の種になるような、面白いものってないんだけど。それに試験中よ。無駄な話をする必要な……。」

「ふふ、少しくらい良いじゃない。私も昔話したいな、シェリア。あっ、ほら。昔、シェリアが壁のシミが人の顔に見えるって怖がって……。」

「それは、フィオナでしょ!  怖がってその日は私のベッドで寝るって聞かなくて困ったんだから。」

「え~!  違うよ、シェリアだよ。」

むむむむ、どうやらお互いに記憶の食い違いがあるようだ。

「そういえば、一緒に料理をした事もあったね。初めて作ったクッキー。少し焦げちゃったんだけど。父様も母様も美味しいって言ってくれたの覚えてるわ。」

「……。フィオナにはそんな綺麗な思い出で残っているのね。」

「え、違った?  クッキーじゃなくてケーキだったかな?」

「会長さん。」

「え、何だ急に?」

フィオナと思い出話をしている中に唐突に声をかけられて、驚いているスウォンに忠告をする。

「貴方のこと大嫌いだけど、これだけは忠告しておいてあげるわ。将来、フィオナの手料理を食べる時は注意なさいな。」

フィオナを奪っていくスウォンは嫌いではあるが、これだけは忠告しておこう。せめてもの私の優しさだ。

……フィオナは類まれなるメシマズデスクッキングなヒロインちゃんなのである。

幼い時、一緒に作ったクッキー。フィオナが作った分を食べた時の両親の顔は忘れられない。父様の笑顔が固まり、普段笑顔の母様が無表情になった瞬間。美味しかったよなどと言っていたが、アレはそんな顔ではなかった。私も一口食したが……あれは……。

カオスだ。混沌だ。

いくら愛しい妹の作ったものでもアレだけは庇えるような代物ではなかった。

「な、失礼ね、シェリア!  ちゃんと美味しかったよ!  父様は全部食べてくれたわ。」

「くっ、フィオナがこうなってしまったのも、親バカ、嫁バカの父様のせいね。あの時、ちゃんと軌道修正していればこんな事には……!」

「人を病気みたいに言わないでよ~!」

「ぷっ、ははは。」

「十分面白い話だぞ!」

フィオナと言い合っているとスウォンとルヴィナスが笑い出した。こっちは真剣なのに。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...