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 鉛筆を走らせながら、哲哉は独り言のように話した。
「君は、この私の所有物だ。勝手な行動は、慎むように」
「……」
「解ったら、返事を。必ず、だ」
「は、はい」
 哲哉の目は、スケッチブックを見たままだ。
 ただ、淡々と今後の玲衣について話した。

「私が仕事をしている時間は、屋敷内であれば自由に過ごしていい」
「はい」
「身の回りのことは、使用人の池崎(いけざき)に任せてある。何かあれば、彼を頼れ」
「はい」
 そこでようやく、哲哉は顔を上げて玲衣の方を真っ直ぐ見つめた。
 眼光に、射られるようだ。
「立って。後ろ向きで、首をこちらに捻りなさい」
「はい」
(この人は、僕を絵のモデルとして買ったのかな)
 そう油断し始めた頃、哲哉はまた表情のないまま玲衣に命じた。

「私のことは、哲哉さま、とでも呼ぶといい」
「はい」
「今晩は、君を抱く。準備をしておきなさい」
「……はい」
 やはり、そういったことも含めて、玲衣は哲哉に買われたのだ。
 唇を薄く嚙み、玲衣は耐えた。

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