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「池崎さん。哲哉さまに、このこと伝えた方がいいですか?」
「それは、伝えた方がいいよ。言いにくいなら、僕から話すけど?」
「いえ。それは、僕が自分で話します」
 玲衣は、心を決めていた。
 発情したら、哲哉に抱いてもらおう、と。
 彼の冷たい仮面の下に覗く、優しさ。
 それに触れた時から、そうしようと決めていたのだ。
 だがしかし。

(どうしよう。やっぱり、恥ずかしいよ!)
 二人でティータイムを楽しみながらも、なかなか言い出せない玲衣だ。
「今日のコーヒーは、ブルーマウンテンか」
「はい。爽やかな酸味を、お楽しみください」
「菓子は?」
「北海道産の、クリームチーズケーキでございます」
 気が付けば、哲哉は池崎とばかり話している。
 そんな玲衣に、助け船が出された。

「今日は、玲衣くんから哲哉さまに報告があるそうです」
「ほう?」
 これでは、言い出さずにはいられない。
 玲衣はどぎまぎしながらも、池崎に心の中で礼を言い、哲哉に告げた。
「僕、発情期が来ました……」
「……」
 ぽかん、と何も言わない哲哉だ。
 あまりに突然のことで、思考が飛んでいた。

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