上 下
38 / 86

4

しおりを挟む

 デート、と聞いて玲衣は頬を染め、哲哉は愕然とした。
(僕が、哲哉さまとデート!)
(私が、デートなどと浮ついたことを!?)
「屋台の並びを抜けると、その先にホタルのスポットがあります。後は、お二人でどうぞ」
 当然のように抜かす池崎に一睨みくれると、哲哉は歩き始めた。
 後を、慌てて玲衣が続く。

「……」
「哲哉さま、怒っておいでですか?」
「いや、怒ってはいない」
「やっぱり、怒ってます……」
 少し下を向く玲衣に、哲哉は声を掛けた。
「驚いただけだ。それに、思い出が俗世にまみれているので、悲しい」
「哲哉さま」
 そういえば彼は、子どもの頃に両親とここへホタルを観に来た、と話していたのだ。
(大切な思い出だったんだろうな)

 しょんぼりとしてしまった玲衣を見て、哲哉は反省した。
(今度は私が、この子に思い出を作ってあげる番ではないのか?)
 そこで、顔を上げて周囲を見渡した。
「玲衣、何か欲しいものは無いか?」
「え?」
「買ってやる。選べ」
「は、はい」
 玲衣は、露店を見渡した。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:18,554pt お気に入り:7,956

白狼アルファは純真オメガの初恋に堕ちる

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:41

聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:32,141pt お気に入り:11,562

嘘つきαと偽りの番契約

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:53

幸せな復讐

BL / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:273

処理中です...