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しおりを挟む麻衣は、ふと父の言葉を思い出した。
『飛鳥さんとの面談が済んだら、私の部屋へ戻っておいで』
お父様が、待ってくれている。
そう。
響也さんがバスを使っている間に、こっそりと抜け出すんだ。
「会ったその日に、同衾するなんて。やっぱり、それは、ちょっと……」
でも。
響也さんがバスルームから出て来た時、僕の姿が消えていたら。
「少し、ガッカリしてくださるかな……?」
ソファを立ったり、座ったり。
バスルームの方をのぞき込んだり、もう一度夜景を眺めてみたり。
時間をかけて、麻衣は迷った。
考えた。
そして、出した答えは。
「そうだ。隠れてみよう!」
身を隠し、響也さんが少しでもガッカリしてくれたら。
「そうしたら、出て行って。そして……」
僕は、初めてを彼に捧げよう!
本人は名案と思い込んでいるところが、たちが悪い。
それでも麻衣は、胸をドキドキさせながら、クローゼットに身を隠した。
その胸の鼓動も、隠してしまった。
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