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「しかし、餞別、とは? 私は、どこかへ出向となるのですか?」
「神崎には、組を辞めてもらう」
「……!?」
 声を失った誠に、中嶋は命ずるように言った。
「組を辞め、弁護士になれ。そして無罪請負人となった暁には、中嶋組のためにその腕を振るってもらおう」
 悪くない話だろう、と外山がそそのかした。
「元は法学部出身で、司法試験も受けるつもりでいたはずだ。お前なら、すぐに合格できるさ」
 そして外山は、誠の肩に手を置いた。
 その感覚すら、彼には現実離れしていた。
 まるで、夢を見ているよう。
 ただひとつ、自分を現実と結ぶ人が声を上げた。
 露希だ。
「組長さん、外山さん、ありがとうございます!」
 そして、さっそく誠の腕にすがりついた。
 自分の腕を誠の腕に巻きつけ、二度と離れないように、しっかりと抱きついた。
「僕たち、きっと幸せになります!」
 その姿に、中嶋は笑った。
「どうやら神崎は、尻に敷かれそうだな」
 外山も、笑った。
 その場が、笑いで包まれた。
 露希も、泣きながら笑っていた。

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