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しおりを挟む「え!? 天羽くん、もう高校卒業してるの!?」
「うん。実は、他校をこの春で」
国内でも有名な進学校の名を聞き、宇実は二度驚いた。
「海外の大学に内定してるんだけど、あちらの入学は秋なんだ」
「留学、かぁ。すごいね」
努力を重ね、成績は学年でトップクラスの宇実も、これには唸った。
(上には上がいる、か)
そして、こうも考えた。
「天羽くんは、さ。友達とか、いっぱいいるでしょ?」
「うん。よく解ったね」
「解るよ……」
精悍な顔立ちに、がっしりとした体躯。
身長は、きっと180cmくらいあるだろう。
並んで歩く二人だが、宇実の影は要よりずいぶん小さかった。
「天羽くん、カッコいいもん」
爽やかな笑顔に、先ほど示した正義感。
要は、いかにも人気者タイプの男子高校生だ。
陽キャで、スクールカーストの頂点にいたのだろう。
(僕には友達が一人もいないって知ると、天羽くんは傍から離れて行くかもしれない)
せっかく、こうして知り合ったのに……。
そう考えたところで、宇実は首を横に振った。
(ヤだな。僕、何を考えてるんだろ。友達なんかいらない、って、入学の時に決めたのに!)
そして……。
(恋もしない、って、誓ったんだから!)
一人で思いを巡らせる宇実の顔を、要がひょいと覗き込んだ。
「どうしたんだい?」
「え!? な、何でもないよ!」
顔、近すぎるよ!
どぎまぎと、宇実は慌てた。
これまで味わったことのない感情が、彼の心に芽吹いた瞬間だった。
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