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しおりを挟む要もまた、情欲に目が眩んでいたりはしなかった。
本当に、ただ気軽に宇実の背中を流すつもりでいたのだ。
だが、目の前に現れた光景に、息を飲んだ。
白くて滑らかな宇実の背中は、さっき取り出した真珠のようだった。
「……美しい」
「要さん?」
言葉も無く、要は宇実の背に、そっと指先で触れた。
きめ細やかな、肌のぬくもりがある。
まるで、生きている真珠。
そのことが、要には途方もなく尊い。
「ごめん。少しだけ、いい?」
「何が? ……あ」
要は、背後から宇実の体を抱きしめた。
うっとりと目を閉じ、自分の肌を宇実の肌に重ねた。
「……要さん」
「静かに」
宇実はそっとうなずき、息を吐いた。
肌を通して、要の鼓動が、呼吸が伝わってくる。
宇実は意識的に、その呼吸を合わせた。
静かだ。
二人はただ、黙って息だけをしていた。
この静寂を、味わった。
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