異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ

文字の大きさ
18 / 85
第1章  新しい世界で

17話

しおりを挟む
待ち合わせ場所で、人の波に飲み込まれないようにハロルドがやって来るのをココロは待っていた。
肌着類を買い終えて、つい先程ここへ到着した。
ちなみに肌着関係を売っていた店に入った時の衝撃は、今日一番だったと思う。

婦人服関連の店が多いフロアで、通路と面している部分には壁などなく、中に入らずともどんな物が売られているかよく分かった。
当然だが色んなブランドが立ち並び、見ているだけで今後買い物に来るのが楽しみになる。

ところが目的地である店は、一風変わっており、窓ガラスが一切はまっていない壁が立ちはだかっている様に見えた。
気軽に入れない雰囲気の店。だが、見ていると客の出入りは多く、出入り口を分けて設置しているのは正解なのかもしれない。

時間もあまりないので、意を決して入り口へ立つ(自動ドアだった)。中へ入ると、ズラリと並んだ試着室らしきものに思わずポカンとしてしまうのは仕方が無い。はずだ。

「え、あれ?商品何も無いよ!?」

ここは店ではないのか。もしかしたら従業員の更衣室に迷いんでしまったのかと不安に思う。
いやしかし、出入りしているお客さんもいたはずだ。その人達は一体どこへ…
戸惑っているココロへと、女性が一人近づいてくる。

「お客様、こちらは初めてですか?」
「あ、は、はい。そうです」

突然話しかけられ、戸惑いながらも返事をする。
『お客様』ということは、店で間違いないようだ。
すると、心得たと言わんばかりに女性(恐らくというより確実に店員さん)が、ココロを誘導する。

「では、こちらをお使いください」

連れて行かれたのは、一つの試着室。それだけ少し離れたところに置かれており、扉には『FIRST』と表示されていた。
しかし、商品を何も持っていないのに使うも何も…と思っていると無情にも扉は閉められた。
その後は、色々凄かった。うん、色々。科学の力、地球より進んでない?


と、無事に目的のものを購入できたので、満足して待ち合わせ場所へたどり着いた。
店に入るまで少し時間がかかったから、ハロルドの方が先に来ているかと思ったが、彼はまだいなかった。
少し待ってみてもやってくる気配はないので、先に買い物を済ませる事にした。

最後にやってきたのは食品フロアの1つ。その中の、惣菜売り場だ。
店内マップを見たときから、これは決めていた。
帰りは遅くなるだろうし、片付けや電化製品の設置(やるのはロボットだが)をしていれば時間はすぐ経ってしまう。
フードコートで食べて行けばと思わなくもないが、それでは明日の朝食が用意出来ない。それならば、出来合いの物を買っておいたほうが便利だからだ。

「わーいい匂い」

作りたてなのか、いい匂いが漂っている。午後も大分時間が過ぎているが、丁度買い物客が帰り始める時間帯なのだろう。ココロの後からも人が絶えず入ってくるので、流れを止めないように先へ進む。

夕食用と朝食用をそれぞれ選び、変わらぬ会計を済ませて外へ出る。
そして待ち合わせ場所へ向かうと、ハロルドも丁度やってきた所で、こちらに駆け寄ってきた。

「お待たせ。その様子だと、もう買い物も終わり?」
「今日の所は、とりあえず。帰り遅くならないようにしないと」
「そっか。じゃあ行こうか」

頷きあい、フロア端の青い光のもとへ向かう人の波に乗る。エントランスフロアへ戻り、そこからさらに外へ出る。
まだ明るい空を軽く見上げて、今日たどった道を戻る。
各国と通じている扉のある家にたどり着くと、ふと疑問に思った。

「そういえば、ハロルドはどこに住んでるの?ここ?」
「そ。と言っても、家主は兄なんだけどね。俺はあちこち行く必要があるから、1つのとこに留まれなくて」
「なるほど」

そんな話をしながら、家の中へ入る。薄暗いろじに面しているのを見ると、裏口だろうか。
他の家(見たことあるのは東と南だけだが)も、何かしら店と併設されているから、ここも何かやっている(もしくはやる予定)
のだろうか。
しかし今はいないのか誰とも合わず、例の扉の下へたどり着いた。

南の家へ通じている扉を潜れば、数時間前に来たところへ戻ってくる。
出掛けると言っていた弟さんはまだ戻って居ないようだ。
そして外へ出ると、来たときとは何かが違う事に気が付いた。

「あれ、馬車が変わってる…?」

来るときに乗ってきた馬車は、メリーゴーランドにあるような形の馬車だった。つまり対面式。
しかしいまそこにあるのは、自動車の様に前と後ろに座面がある形をしていた。
そしてもう1つ。最初は一頭だった馬が、2頭に増えていた。

「時間も遅いし、先に出よう」
「あ、うん」

御者席?というのだろうか、ハロルドは前の席へ座る。
それに続いてばに乗ろうとするが、前と後ろどちらに乗るか一瞬迷う。しかし後ろの席には何やら荷物が置かれており、勝手に動かすわけにもいかないので前の席、ハロルドの隣へ座った。
するとすぐに、馬たちは滑るように走り出す。

「先にこれを渡しておくよ」
「え?」

チャリンと渡されたのは、一本の鍵だった。なんの変哲もない、一本の鍵。一体どこの鍵なのだろう。
そんな事を考えながらその鍵を眺めていると、ハロルドが答えを教えてくれた。

「さっきの家にある、他の国へ行ける扉の鍵」
「え!?そんな重要そうなもの、持ってていいの?」
「ライラ女王からね。場所が場所だから、不便だろうって。あと、弟には、いつでも出入りしていいって許可もらってるよ」

途中気になった事を先回りして答えていくハロルド。あまりよく知らない人の家を通り道にするのは気が引けるが、まだ買えていないものも多いので、今後使う機会は多そうだ。有り難い。

「それから、これも」
「これ?」

今度は何も渡されない。これと言って示されたのは、いま二人が座っている間だった

「これってもしかして、馬車?」
「そ。近いとはいえ、この距離歩くのは時間かかるからって事で、俺から」
「でもこんなに…いいの?」
「あの土地に入れて彼らと交流できる人は本当に貴重だから。でも1つ、俺からお願い」
「?」
「俺をあの土地に入れるようにしてほしい」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!

碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!? 「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。 そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ! 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

処理中です...