58 / 85
第3章 新しい試み
15話
しおりを挟む
家に帰り、ユキとひとしきり遊んでから、オヤツにした。
ほんのりメープルの風味のあるフワッフワのシフォンケーキは、やはり最高だった。
せっかくだから、作ったばかりのジャムと生クリームを混ぜたクリームを添えても美味しかった。
「これおいしー」
「おいしーねー!」
ホイップクリームが苦手なリンとイトも、このタイプなら気に入ったようだった。
全員食べ終えたところで片付ける。シフォンケーキの型をキレイにするのに少し手間取ったが。
片付け終えて、ゆっくりしようと椅子に腰掛けると、タブレットの通知に気が付いた。
時間からして少し前。通話に出れなかったからか、メッセージが入っていた。
「ん?ハロルドから…明日また来てほしい…?」
まさかのハロルドからの呼び出し。
用件は記されておらず、都合悪いなら次の日でも構わない。
何かあったのかなと思いつつ、特に予定も立てていないので了承のメッセージを送っておいた。
翌日。
一通り家の用事を済ませ、そう言えばどこに行けばいいのかと思い連絡すれば、一先ずリックの家に来てほしいと。
一先ずと言うことは、そこからどこか移動するのだろうかと考えながら、指示通りに向かうと、ハロルドとリックに迎えられた。
そして説明もナシに、例の扉の前に3人で立つ。
中央の国に行ける、いつも使うその扉。しかしハロルドは、いつもと違うノブを回した。
「おおー、相変わらず高い…」
やってきたのは中央国家、セントラルカントリア。
来慣れた国…ではあるが、ショッピングモールが主な目的地なので、他の所は何があるのかまだ知らない。
けれどここ、中央国家の更に中央に、王城(と言う名のオフィス)かある事は勉強済みだ。
「ココロ、こっちこっち」
「あ、はーい」
ハロルドに導かれてやってきたのは、見覚えのある扉。
まさか、と思いハロルドを見やれば、大丈夫だと言うように微笑まれた。
まだ心の準備が…と思っている間に、まさかのリックが扉を開けて中に入っていった。
「ライラ姉さん、久しぶりー!」
「…へ?」
ハロルドに続いて部屋に入れば、聞こえてきた言葉に硬直する。
リック君、今ナンテ?
「リック、公式な場だから弁えろ」
「ごめんなさい…」
はしゃいでいたのか、ハロルドに注意されて落ち込むリック。ペタンと垂れた犬の耳が見えた。いやあれ、今迄気づかなかったけど…そういえば会う時必ず何か被ってたっけ。今も手に持ってる。
「陛下、ココロをお連れしました」
「ありがとうハロルド。さて、人払いは済んでいるので、いつも通りで構わないわ。ココロさん、お久しぶりですね」
「あ、は、はい。その説は大変お世話になりました」
そういえば、今使ってるベッドはこの方からのプレゼントだったっけ。いつも気持ちよく使わせてもらってます。
いつかのように、座り心地の良いソファーに促されて座れば、ティーセットが出現する。
「突然でごめんなさい。ココロさんを呼んだのは、私なの」
「あ、そうなのですか?」
「ええ。昨日、貴女が作ったジャムを頂いてね。これは!と思ったのよ」
「え、ジャム…ですか?」
ライラ女王にジャム…は、渡していないけど。
と思っていると、ハロルドが訳を話してくれた。
「陛下は、無類のジャム好きなんだ」
というところから話は始まった。
幼い頃からジャムが好きで、即位前の自由だった頃は、好きな果実や蜂蜜、砂糖を取り寄せて自作していたらしい。
けれど即位してからは作る時間がなく、ジャム自体を取り寄せるようになった。
けれど、どのジャムもしっくり来るものがなく、満足できていなかった。
そこに現れたのがココロのジャム。
一口食べただけで恋(?)に落ちたのだとか。
「と言う訳で、定期的に作って届けて欲しいと。つまり、仕事の依頼」
「あ…」
仕事と言われて、忘れていた訳ではないが思い出した。
そう、ココロはこれまで、生活はして来れたが仕事という仕事はしていなかった。
懐が充分にある事と、食べ物に困らないという事から、仕事はこっちに置いといて、状態だった。
余裕があるとは言え、仕事を受けない理由は無い。
「かしこまりました。そのお仕事、お受け致します」
「そう固くならないで。私の欲を満たすだけの依頼なのだから」
「あ、はい。いえ、でも…」
仕事と言われて、つい…。
キャリアウーマンという出で立ちの、女王陛下に対して、いつものように接して良いのだろうかという思いももちろんあるが。
その後、仕事内容を煮詰めた。
日曜夜に、ジャムの希望をいくつかメッセージで送る。
月曜日にな、希望の中から作れるジャムを作り、完成次第送る。
日曜朝、空き瓶が送られてくる。
その繰り返し。
瓶は陛下が個人で準備、使用後洗浄までする。
それぞれ送る方法は、ライラ陛下が作り出した(と聞いて驚いたが、よく聞くプログラミングの1種であり、陛下は耳無し)機能をタブレットに搭載してもらったのでそれを使う。
ベッドを頂いた時は、それの一方通行版を使用したらしい。
報酬に関しては材料費含め、ジャムの個数で変動、月末振込という形で収まった。
そして衝撃なのが、ジャムの送り先その2があったこと。
送り先その2は、直接届けて欲しいということだった。
「え、リック君の所にも?」
「はい!あのジャムに落ちたのは陛下…ライラ姉さんだけじゃ、ないんです!」
そう言えば、ここへ来た時も姉さんと呼んでいたけど…。
これから大好きなジャムを堪能できると嬉しそうにしているライラ陛下と、目をキラキラさせてコチラを見ているリック。
事情を知るには、やはりハロルドだなと思い、視線を彼に向けた。
ほんのりメープルの風味のあるフワッフワのシフォンケーキは、やはり最高だった。
せっかくだから、作ったばかりのジャムと生クリームを混ぜたクリームを添えても美味しかった。
「これおいしー」
「おいしーねー!」
ホイップクリームが苦手なリンとイトも、このタイプなら気に入ったようだった。
全員食べ終えたところで片付ける。シフォンケーキの型をキレイにするのに少し手間取ったが。
片付け終えて、ゆっくりしようと椅子に腰掛けると、タブレットの通知に気が付いた。
時間からして少し前。通話に出れなかったからか、メッセージが入っていた。
「ん?ハロルドから…明日また来てほしい…?」
まさかのハロルドからの呼び出し。
用件は記されておらず、都合悪いなら次の日でも構わない。
何かあったのかなと思いつつ、特に予定も立てていないので了承のメッセージを送っておいた。
翌日。
一通り家の用事を済ませ、そう言えばどこに行けばいいのかと思い連絡すれば、一先ずリックの家に来てほしいと。
一先ずと言うことは、そこからどこか移動するのだろうかと考えながら、指示通りに向かうと、ハロルドとリックに迎えられた。
そして説明もナシに、例の扉の前に3人で立つ。
中央の国に行ける、いつも使うその扉。しかしハロルドは、いつもと違うノブを回した。
「おおー、相変わらず高い…」
やってきたのは中央国家、セントラルカントリア。
来慣れた国…ではあるが、ショッピングモールが主な目的地なので、他の所は何があるのかまだ知らない。
けれどここ、中央国家の更に中央に、王城(と言う名のオフィス)かある事は勉強済みだ。
「ココロ、こっちこっち」
「あ、はーい」
ハロルドに導かれてやってきたのは、見覚えのある扉。
まさか、と思いハロルドを見やれば、大丈夫だと言うように微笑まれた。
まだ心の準備が…と思っている間に、まさかのリックが扉を開けて中に入っていった。
「ライラ姉さん、久しぶりー!」
「…へ?」
ハロルドに続いて部屋に入れば、聞こえてきた言葉に硬直する。
リック君、今ナンテ?
「リック、公式な場だから弁えろ」
「ごめんなさい…」
はしゃいでいたのか、ハロルドに注意されて落ち込むリック。ペタンと垂れた犬の耳が見えた。いやあれ、今迄気づかなかったけど…そういえば会う時必ず何か被ってたっけ。今も手に持ってる。
「陛下、ココロをお連れしました」
「ありがとうハロルド。さて、人払いは済んでいるので、いつも通りで構わないわ。ココロさん、お久しぶりですね」
「あ、は、はい。その説は大変お世話になりました」
そういえば、今使ってるベッドはこの方からのプレゼントだったっけ。いつも気持ちよく使わせてもらってます。
いつかのように、座り心地の良いソファーに促されて座れば、ティーセットが出現する。
「突然でごめんなさい。ココロさんを呼んだのは、私なの」
「あ、そうなのですか?」
「ええ。昨日、貴女が作ったジャムを頂いてね。これは!と思ったのよ」
「え、ジャム…ですか?」
ライラ女王にジャム…は、渡していないけど。
と思っていると、ハロルドが訳を話してくれた。
「陛下は、無類のジャム好きなんだ」
というところから話は始まった。
幼い頃からジャムが好きで、即位前の自由だった頃は、好きな果実や蜂蜜、砂糖を取り寄せて自作していたらしい。
けれど即位してからは作る時間がなく、ジャム自体を取り寄せるようになった。
けれど、どのジャムもしっくり来るものがなく、満足できていなかった。
そこに現れたのがココロのジャム。
一口食べただけで恋(?)に落ちたのだとか。
「と言う訳で、定期的に作って届けて欲しいと。つまり、仕事の依頼」
「あ…」
仕事と言われて、忘れていた訳ではないが思い出した。
そう、ココロはこれまで、生活はして来れたが仕事という仕事はしていなかった。
懐が充分にある事と、食べ物に困らないという事から、仕事はこっちに置いといて、状態だった。
余裕があるとは言え、仕事を受けない理由は無い。
「かしこまりました。そのお仕事、お受け致します」
「そう固くならないで。私の欲を満たすだけの依頼なのだから」
「あ、はい。いえ、でも…」
仕事と言われて、つい…。
キャリアウーマンという出で立ちの、女王陛下に対して、いつものように接して良いのだろうかという思いももちろんあるが。
その後、仕事内容を煮詰めた。
日曜夜に、ジャムの希望をいくつかメッセージで送る。
月曜日にな、希望の中から作れるジャムを作り、完成次第送る。
日曜朝、空き瓶が送られてくる。
その繰り返し。
瓶は陛下が個人で準備、使用後洗浄までする。
それぞれ送る方法は、ライラ陛下が作り出した(と聞いて驚いたが、よく聞くプログラミングの1種であり、陛下は耳無し)機能をタブレットに搭載してもらったのでそれを使う。
ベッドを頂いた時は、それの一方通行版を使用したらしい。
報酬に関しては材料費含め、ジャムの個数で変動、月末振込という形で収まった。
そして衝撃なのが、ジャムの送り先その2があったこと。
送り先その2は、直接届けて欲しいということだった。
「え、リック君の所にも?」
「はい!あのジャムに落ちたのは陛下…ライラ姉さんだけじゃ、ないんです!」
そう言えば、ここへ来た時も姉さんと呼んでいたけど…。
これから大好きなジャムを堪能できると嬉しそうにしているライラ陛下と、目をキラキラさせてコチラを見ているリック。
事情を知るには、やはりハロルドだなと思い、視線を彼に向けた。
24
あなたにおすすめの小説
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL
十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。
高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。
そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。
要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。
曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。
その額なんと、50億円。
あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。
だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。
だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!
碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!?
「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。
そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ!
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる