異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ

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第3章  新しい試み

15話

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家に帰り、ユキとひとしきり遊んでから、オヤツにした。
ほんのりメープルの風味のあるフワッフワのシフォンケーキは、やはり最高だった。
せっかくだから、作ったばかりのジャムと生クリームを混ぜたクリームを添えても美味しかった。

「これおいしー」
「おいしーねー!」

ホイップクリームが苦手なリンとイトも、このタイプなら気に入ったようだった。
全員食べ終えたところで片付ける。シフォンケーキの型をキレイにするのに少し手間取ったが。
片付け終えて、ゆっくりしようと椅子に腰掛けると、タブレットの通知に気が付いた。
時間からして少し前。通話に出れなかったからか、メッセージが入っていた。

「ん?ハロルドから…明日また来てほしい…?」

まさかのハロルドからの呼び出し。
用件は記されておらず、都合悪いなら次の日でも構わない。
何かあったのかなと思いつつ、特に予定も立てていないので了承のメッセージを送っておいた。


翌日。
一通り家の用事を済ませ、そう言えばどこに行けばいいのかと思い連絡すれば、一先ずリックの家に来てほしいと。
一先ずと言うことは、そこからどこか移動するのだろうかと考えながら、指示通りに向かうと、ハロルドとリックに迎えられた。

そして説明もナシに、例の扉の前に3人で立つ。
中央の国に行ける、いつも使うその扉。しかしハロルドは、いつもと違うノブを回した。


「おおー、相変わらず高い…」

やってきたのは中央国家、セントラルカントリア。
来慣れた国…ではあるが、ショッピングモールが主な目的地なので、他の所は何があるのかまだ知らない。
けれどここ、中央国家の更に中央に、王城(と言う名のオフィス)かある事は勉強済みだ。

「ココロ、こっちこっち」
「あ、はーい」

ハロルドに導かれてやってきたのは、見覚えのある扉。
まさか、と思いハロルドを見やれば、大丈夫だと言うように微笑まれた。
まだ心の準備が…と思っている間に、まさかのリックが扉を開けて中に入っていった。

「ライラ姉さん、久しぶりー!」
「…へ?」

ハロルドに続いて部屋に入れば、聞こえてきた言葉に硬直する。
リック君、今ナンテ?

「リック、公式な場だから弁えろ」
「ごめんなさい…」

はしゃいでいたのか、ハロルドに注意されて落ち込むリック。ペタンと垂れた犬の耳が見えた。いやあれ、今迄気づかなかったけど…そういえば会う時必ず何か被ってたっけ。今も手に持ってる。

「陛下、ココロをお連れしました」
「ありがとうハロルド。さて、人払いは済んでいるので、いつも通りで構わないわ。ココロさん、お久しぶりですね」
「あ、は、はい。その説は大変お世話になりました」

そういえば、今使ってるベッドはこの方からのプレゼントだったっけ。いつも気持ちよく使わせてもらってます。
いつかのように、座り心地の良いソファーに促されて座れば、ティーセットが出現する。

「突然でごめんなさい。ココロさんを呼んだのは、私なの」
「あ、そうなのですか?」
「ええ。昨日、貴女が作ったジャムを頂いてね。これは!と思ったのよ」
「え、ジャム…ですか?」

ライラ女王にジャム…は、渡していないけど。
と思っていると、ハロルドが訳を話してくれた。

「陛下は、無類のジャム好きなんだ」

というところから話は始まった。
幼い頃からジャムが好きで、即位前の自由だった頃は、好きな果実や蜂蜜、砂糖を取り寄せて自作していたらしい。
けれど即位してからは作る時間がなく、ジャム自体を取り寄せるようになった。
けれど、どのジャムもしっくり来るものがなく、満足できていなかった。
そこに現れたのがココロのジャム。
一口食べただけで恋(?)に落ちたのだとか。

「と言う訳で、定期的に作って届けて欲しいと。つまり、仕事の依頼」
「あ…」

仕事と言われて、忘れていた訳ではないが思い出した。
そう、ココロはこれまで、生活はして来れたが仕事という仕事はしていなかった。
懐が充分にある事と、食べ物に困らないという事から、仕事はこっちに置いといて、状態だった。
余裕があるとは言え、仕事を受けない理由は無い。

「かしこまりました。そのお仕事、お受け致します」
「そう固くならないで。私の欲を満たすだけの依頼なのだから」
「あ、はい。いえ、でも…」

仕事と言われて、つい…。
キャリアウーマンという出で立ちの、女王陛下に対して、いつものように接して良いのだろうかという思いももちろんあるが。


その後、仕事内容を煮詰めた。
日曜夜に、ジャムの希望をいくつかメッセージで送る。
月曜日にな、希望の中から作れるジャムを作り、完成次第送る。
日曜朝、空き瓶が送られてくる。
その繰り返し。

瓶は陛下が個人で準備、使用後洗浄までする。
それぞれ送る方法は、ライラ陛下が作り出した(と聞いて驚いたが、よく聞くプログラミングの1種であり、陛下は耳無し)機能をタブレットに搭載してもらったのでそれを使う。
ベッドを頂いた時は、それの一方通行版を使用したらしい。

報酬に関しては材料費含め、ジャムの個数で変動、月末振込という形で収まった。

そして衝撃なのが、ジャムの送り先その2があったこと。
送り先その2は、直接届けて欲しいということだった。

「え、リック君の所にも?」
「はい!あのジャムに落ちたのは陛下…ライラ姉さんだけじゃ、ないんです!」

そう言えば、ここへ来た時も姉さんと呼んでいたけど…。
これから大好きなジャムを堪能できると嬉しそうにしているライラ陛下と、目をキラキラさせてコチラを見ているリック。
事情を知るには、やはりハロルドだなと思い、視線を彼に向けた。
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