異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ

文字の大きさ
67 / 85
第4章  新しい家族と

3話

しおりを挟む
靴の加工が終わった合図を確認して、1度買い物を終えてから靴売り場へ戻る。
老紳士の店員さんは他のお客さんを対応していたが、こちらに気がついて一言入れてからやってきた。

「お待ちしておりました」
「あの方達は、良いんですか?」
「どれにするかじっくり考えたいとの事でしたので、少しの間なら。今お持ちします」

そう言ってまたバックヤードへ戻って行った。
すぐに、箱に入った靴とサンダルを持って戻ってくる。

「1度履いて確認して下さい。こちらのスツールをお使いください」
「ありがとうございます」

ニコをそのスツールに座らせて、受け取った靴を履かせる。

「キツくない?ちょっと歩いてみようか」

スツールから下りて、その周りをチョコチョコと歩き回る。
特に不具合は無さそうだ。
サンダルも同じく。

「うん、大丈夫そうです」
「それは良かった。どちらか履いてかれますか?」
「じゃあ、サンダルをこのまま履いてきます」
「では、靴は仕舞っておきましょう」

商品と引き換えに、白札を返却する。
売場を離れる時には、入口の外までやってきて、深々と頭を下げてお見送りをしてくれた。

「そろそろお昼の時間だね。混む前に先に済ましちゃおうか」

先程まで抱っこしていたニコは、今はココロの手を握って横を歩いている。
歩幅を合わせると、いつもよりゆっくり歩くことになるが、時折ココロを見上げて目が合うと、名前の通り、ニコニコな笑顔を見せてくれた。

フードコートのある階へ向かう。
混んではいないが、それなりにお客さんが行き来している。どうやら、同じ考えの人達のようだ。

このショッピングモールのフードコートは、日本のフードコートと全く同じ作りをしている。
が、システムは少々違うようだ。
まず目につく所で、調理場が無い。あるのは受付と受け渡し用のカウンターがあるだけだ。
その分、席が多く用意されている。間隔も大きくとられているので、人の多さを感じない。

「先に注文してこようか。何がいい?」

人混みに飲まれないように、色々なカウンターを見て回る。
店の種類自体沢山あり、あちこちに目が行ってしまう。
その内の一つ。他に比べて、子連れが良く並ぶ店が目についた。

「あ、あそこ見てみようか」

短い列に並んでいれば、待ち時間にメニューを見れるようにメニュー表が張られている。
どうやらこの店は、お子様ランチをメインに扱っていて、それぞれのセットと、同じ内容で量を多くした大人用のも売っていた。内容は同じと言っても、おまけのオモチャやよくある旗はおとにはついていないが。
つまり、子供が親の物を食べたがることを考慮しているという事のようだ。同じもの食べているなら満足できるから。
そのセットを選ぶ際は"親子ランチセット"と注文するらしい。

「おいしそうだね。ここにしようか」

コクコクと頷くニコを抱き上げて、どれにしたいか選んでもらう。
が、ニコはまだどれが何か分からないようで、きょとんとしている。

「ん-じゃあ、ママが選んでいい?」

頷いたのを確認して、メニュー表を眺める。
お子様ランチと言っても、かなり自由度が高い。
主食がご飯、麺、パンと選べるし、その種類も豊富だ。
おかずも子どもの好きなものがずらりと並んでいる。
どうやら、一つずつ好きなものを選んでオリジナルに近いものが出来るようだ。

「ニコが食べやすいもののがいいよね。それじゃあ…」

箸はまだ使えない。スプーンもまだ掬って食べるのは難しいだろう。
唯一使えるのはフォークだが、それでも刺すことぐらいだ。一番慣れているのは手づかみ(主におにぎりを食べていたから)だ。
体質的にも、食べられないものは無いと聞いた。知り合いの(目視で体質が分かる)医者に確認済みだそう。
そこから食べやすいものを選ぶなら…

「えー、チキンライスにハンバーグ、エビフライ、ポテトサラダ、コーンスープ。お飲み物はオレンジジュース、デザートにプリンでお間違いないですか?」
「はい、大丈夫です」
「かしこまりました。お子様のオモチャは後程お選びいただきます。では、こちらの札を持ってお好きな席でお待ちください」

注文を終えて、次の人に場所を譲る。
席はどこがいいだろうと見渡せば、まだまだ空席が目立つので、手近な二人用の席を選ぶ。
まずニコを座らせようとしたが、設置されている椅子では大人用で、キッズチェアは無いかとあたりを見回すと、エプロンをかけた人が近付いてきた。

「こちらをお使いください」
「あ、ありがとうございます」

探していたキッズチェアだった。
その後も、セルフで設置されている水や、手拭きなども持ってきてくれる。
周りにはそういう人が何人かいて、親子連れの手伝いをしている。そういう仕事をする人のようだ。
しばらくすると、両手にお盆を持った人が近付いてくる。

「お待たせいたしました。ご注文の親子ランチセットです」
「え、あ、ありがとうございます」

まさか持ってきてもらえるとは思わず、驚いた。
最初のころにも一度フードコートは利用したが、その時はブザーが鳴って取りに行ったが。

「お子様連れのお客様に、安心してご利用頂けるようにというのが、モール全体での理念となっております」
「そうなんですね。一緒に来たのは初めてなので、とてもありがたいです」

何と子供に優しいショッピングモール。靴売り場の店員さんも優しかったし。
ランチセットを、それぞれの前に置いて、最後に選べるオモチャの写真が載っている紙を渡してきた。

「この中からお好きなものをお選びください」
「分かりました、ありがとうございます」

それはひとまず伏せておいて、食べることにする。
頂きますと両手を合わせると、ニコもそれを真似している。
どちらも同じワンプレートだが、子供用は食べやすいように一口大に分けられている。これならニコでも食べられそうだ。
初めて食べるものばかりだから、最初は一口ずつ食べ比べている。


「はい、ごちそうさまでした」

食べ終えて、再び手を合わせる。特に嫌いな物はなく、綺麗に完食した。
片づける前に、オモチャを選ぶ。紙を見ると、たくさんの可愛いものが載っていた。

「ん-、どれがいいかな」

キラキラしたシールに、コンパクトケースらしきもの、ガラスビーズの小さなブレスレット等。
オモチャというよりは、小さなオシャレが出来そうな物の方が多い気がする。完全に女の子用である。

「何か気になるのある?」

少し悩んだ後、そっと指さしたのはコンパクトケースだった。

「コレ?」

こくりと頷く。
決めているのに気が付いたのか、店員さんがやってきた。

「お決まりですか?」
「はい、このコンパクトケースをお願いします」
「かしこまりました。こちらはお下げしますね。少々お待ちください」

空になったプレートを持っていき、すぐにおもちゃをもった戻ってきた。

「お待たせいたしました。こちらお持ちください」
「ありがとうございます」

ピンク色の袋に入れられているそれを受け取る。
長い紐が付いているあたり、子供の首にかけれるようになっているのが分かる。

「無くさないように、出すのはお家帰ってからにしようね。じゃあ、行こうか」

店員さんに最後のお礼をして、嬉しそうに袋を持っているニコを連れて、フードコートを後にした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!

碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!? 「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。 そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ! 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

処理中です...