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馬車で移動するだけ
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「それじゃあシャルリン、頼んだぞ」
「ふぅ、心配するな主。植物性タンパク質で2号殿の筋肉は守る」
「そこだけ頼んでるわけじゃねぇよ」
「ふぅ、わかっている。いちたろう殿の増量も任せておけ。2号殿に追いつくのは難しいがな。はっはっはっ」
「まぁ、たのむわ」
いちたろうと2号は自分で食事を用意できないのでシャルリンに頼んだ。
シャルリンも調理が出来るわけじゃないが、生で食える野菜と果実でやりくりしてもらう。帰ったらあったかい鍋でも食わせてやろう。
目指すは獣人の里。まずは南へ2つ目の村だったな。
「南門の広場が駅だからね、朝はかなり混雑するから逸れないように」
「すごいですね、人がこんなにいっぱい」
「お前らはノアと手を繋いでおけ。お子ちゃまだからな」
「ポールは?」
「ぶちころすぞ」
朝の駅は賑やかだ。大きな宿から次々と人が出てくるし、屋台の数もダンジョン前より多い。何より殺伐としてないのがいい。あっちは肩をぶつけるのが死に繋がるので、みんな警戒してピリピリしてるんだよ。
「南のリーヴェンド行きだよ!あと5名!これが本当に最後!すぐに出発します!」
「あれだね、急ごう」
派手な服を着た男が小さい太鼓みたいなのをデコデコ鳴らして客引きをしている。活気があるのは結構だがうるせぇよ。
「ノーソンまで4人お願いします。大きな荷物は無いよ」
「大銅貨24枚だよ!お兄さん冒険者かい?途中何かあったら頼むよ!」
「現場での依頼は5倍だね」
「ははは!機会があったら頼むよ!」
「慣れてるな。初めてお前を頼もしいと思ったよ」
「ひどいよ!僕は護衛依頼ばっかりだったから旅は慣れてるよ。色々と任せてくれるかな」
「へいへい」
馬車は両サイドにベンチがあるだけの幌馬車。5人空いていると言っていたが、未成年3人と細身1人が乗っただけで狭い。こんなのに半日乗るのかよ。
「しゅっぱーつ!」
風情も無くガンガンと鉄板をぶっ叩いて出発した。2つ先の村ノーソンに着くのは夕方の予定だ。
ガタンガタン!
出発したばかりだが不快感が半端ない。硬い木のベンチがケツをぶっ叩いてきやがる。馬車はケツにクルとは聞いていたがこんなに酷いのか?ケツがイカれちまうぞ。
「荷物をお尻の下に敷くんだよ」
そんなもんでどうにかなるとは思えん、このままでは俺のプリケツが保たない。
周りの乗客が邪魔だがやるしかねぇ、女々しく隠し事をするのは止めたんだ、俺のケツを優先する!
「天光満つる所に我はあり、黄泉の門開く所に汝あり。出でよ、ケツクッション!」
無意味な呪文を唱えて【皮】からクッションを作り出す。
生み出されたのは高反発で厚み20cmの革製クッション。中は殆どが空気だが、翠珠を使い切って作った複雑な構造だ。弾みすぎず、俺のケツを快適に守ってくれる。包みこんでくれるような、マッチョの膝に座るような安心感。
「快適だぜぇ、旅は楽しまないとな。お前らも使え」
「ありがとう、ついでにマントもお願い」
4人で快適なクッションを敷いて、柔らかく温かいマントに包まる。
周囲の客がさっきからこちらを凝視しているが、俺の首にはこれ見よがしに上級冒険者証をかけてあるんだ。
ドブの様な治安の街から移動する上級冒険者で魔法使い。一般人が気軽に頼み事が出来る相手じゃない。まぁ頼まれたら金貨で売ってやるがな。
思ったより使えるな上級冒険者証。俺はまだガキなので侮られる事が多かった、これで威嚇できるなら色々捗るぜ。
どうせ見られてるならケバブでも出して食うか!スパイシーであっつあつのやつだ!
馬車の中に匂いを篭もらせながら腹も減っていないのに肉を貪り食った。
肉の匂いが充満し、激しい揺れを吸収したクッションはふよふよと優しく揺れ続ける。
俺は酔った。
「おげぇぇぇぇ!!」
「はいはい全部出してねー、出したら楽になるからねー」
「馬鹿な、このポール様が!反吐を吐いて蹲っているなど!」
「どこからそんな自信が出てくるの?馬車は初めてなんでしょ」
途中の休憩所で散々な無様を晒し、【癒】で治せる事に気づいたのは目的の村に着いた後だった。
「ふぅ、心配するな主。植物性タンパク質で2号殿の筋肉は守る」
「そこだけ頼んでるわけじゃねぇよ」
「ふぅ、わかっている。いちたろう殿の増量も任せておけ。2号殿に追いつくのは難しいがな。はっはっはっ」
「まぁ、たのむわ」
いちたろうと2号は自分で食事を用意できないのでシャルリンに頼んだ。
シャルリンも調理が出来るわけじゃないが、生で食える野菜と果実でやりくりしてもらう。帰ったらあったかい鍋でも食わせてやろう。
目指すは獣人の里。まずは南へ2つ目の村だったな。
「南門の広場が駅だからね、朝はかなり混雑するから逸れないように」
「すごいですね、人がこんなにいっぱい」
「お前らはノアと手を繋いでおけ。お子ちゃまだからな」
「ポールは?」
「ぶちころすぞ」
朝の駅は賑やかだ。大きな宿から次々と人が出てくるし、屋台の数もダンジョン前より多い。何より殺伐としてないのがいい。あっちは肩をぶつけるのが死に繋がるので、みんな警戒してピリピリしてるんだよ。
「南のリーヴェンド行きだよ!あと5名!これが本当に最後!すぐに出発します!」
「あれだね、急ごう」
派手な服を着た男が小さい太鼓みたいなのをデコデコ鳴らして客引きをしている。活気があるのは結構だがうるせぇよ。
「ノーソンまで4人お願いします。大きな荷物は無いよ」
「大銅貨24枚だよ!お兄さん冒険者かい?途中何かあったら頼むよ!」
「現場での依頼は5倍だね」
「ははは!機会があったら頼むよ!」
「慣れてるな。初めてお前を頼もしいと思ったよ」
「ひどいよ!僕は護衛依頼ばっかりだったから旅は慣れてるよ。色々と任せてくれるかな」
「へいへい」
馬車は両サイドにベンチがあるだけの幌馬車。5人空いていると言っていたが、未成年3人と細身1人が乗っただけで狭い。こんなのに半日乗るのかよ。
「しゅっぱーつ!」
風情も無くガンガンと鉄板をぶっ叩いて出発した。2つ先の村ノーソンに着くのは夕方の予定だ。
ガタンガタン!
出発したばかりだが不快感が半端ない。硬い木のベンチがケツをぶっ叩いてきやがる。馬車はケツにクルとは聞いていたがこんなに酷いのか?ケツがイカれちまうぞ。
「荷物をお尻の下に敷くんだよ」
そんなもんでどうにかなるとは思えん、このままでは俺のプリケツが保たない。
周りの乗客が邪魔だがやるしかねぇ、女々しく隠し事をするのは止めたんだ、俺のケツを優先する!
「天光満つる所に我はあり、黄泉の門開く所に汝あり。出でよ、ケツクッション!」
無意味な呪文を唱えて【皮】からクッションを作り出す。
生み出されたのは高反発で厚み20cmの革製クッション。中は殆どが空気だが、翠珠を使い切って作った複雑な構造だ。弾みすぎず、俺のケツを快適に守ってくれる。包みこんでくれるような、マッチョの膝に座るような安心感。
「快適だぜぇ、旅は楽しまないとな。お前らも使え」
「ありがとう、ついでにマントもお願い」
4人で快適なクッションを敷いて、柔らかく温かいマントに包まる。
周囲の客がさっきからこちらを凝視しているが、俺の首にはこれ見よがしに上級冒険者証をかけてあるんだ。
ドブの様な治安の街から移動する上級冒険者で魔法使い。一般人が気軽に頼み事が出来る相手じゃない。まぁ頼まれたら金貨で売ってやるがな。
思ったより使えるな上級冒険者証。俺はまだガキなので侮られる事が多かった、これで威嚇できるなら色々捗るぜ。
どうせ見られてるならケバブでも出して食うか!スパイシーであっつあつのやつだ!
馬車の中に匂いを篭もらせながら腹も減っていないのに肉を貪り食った。
肉の匂いが充満し、激しい揺れを吸収したクッションはふよふよと優しく揺れ続ける。
俺は酔った。
「おげぇぇぇぇ!!」
「はいはい全部出してねー、出したら楽になるからねー」
「馬鹿な、このポール様が!反吐を吐いて蹲っているなど!」
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