盲目少年

相模とまこ

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辺りは薄暗く、もう間もなく日が落ちるであろう時刻。

冷たいコンクリートを蹴る音だけが僕の耳を刺激する。アパートの一角にある、友人の部屋。僕は漏れてしまいそうになる溜息をぐっと飲み込み、恐る恐る呼び鈴を鳴らした。


「……あれ、いない?」


待ってみても返事はない。僕の脳裏にはここ数日世間を騒がせていた気分の悪いニュースのことだけが過ぎる。そんな筈はないと自分に言い聞かせ、取っ手を握った。

カチャっと音を立てて開く玄関。益々嫌な予感がする。


「慶介?もしかして……寝てる?」


再度声を掛けてみても、やはり返事はない。玄関に入り扉を閉め、小さく「入るぞ」とだけ断りを入れて奥へ進んだ。

薄暗い廊下に部屋から青白い光が反射して、より一層この空間を不気味に見せた。

部屋に近づくにつれて、カタカタとプラスチックがぶつかり合うような音が耳に届く。

部屋の前に辿り着いた。磨り硝子の向こうには先程廊下に反射していた青白い光と、わずかに動く人影が見える。

意を決して、僕は部屋の戸を開いた。


「慶介、いるなら返事くらいしてよ」


部屋には一台のパソコンと、それに向かう見慣れた後姿があった。


「パソコンするなら部屋の電気くらい付けな。目、悪くなるよ」


言うが早いか、傍にあったスイッチで部屋に明りを灯す。部屋一面がぱっと明るくなった途端に、後姿はびくりと肩を震わせこちらを振り返った。


「なんだ……シュウちゃんか。何か用?」


振り返ったその顔は酷くやつれている様に見えた。きっと数日の間、ろくに睡眠も食事も取れていないのだろう。力なく微笑む彼に僕の心が痛んだ。


「一緒に食事でも行こうって誘いに来たんだけど……。それ、何してるの?」


パソコンを指差し彼に尋ねた。画面にはアルファベットや数字、記号の羅列がずらりと並んでいる。


「プログラミング。もうすぐ完成するんだ」
「へえ、何つくってるの?」
「ああ、ちょっとね……」


それ以降、彼は暫く口を開かなかった。









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