1 / 3
01
しおりを挟む
.
辺りは薄暗く、もう間もなく日が落ちるであろう時刻。
冷たいコンクリートを蹴る音だけが僕の耳を刺激する。アパートの一角にある、友人の部屋。僕は漏れてしまいそうになる溜息をぐっと飲み込み、恐る恐る呼び鈴を鳴らした。
「……あれ、いない?」
待ってみても返事はない。僕の脳裏にはここ数日世間を騒がせていた気分の悪いニュースのことだけが過ぎる。そんな筈はないと自分に言い聞かせ、取っ手を握った。
カチャっと音を立てて開く玄関。益々嫌な予感がする。
「慶介?もしかして……寝てる?」
再度声を掛けてみても、やはり返事はない。玄関に入り扉を閉め、小さく「入るぞ」とだけ断りを入れて奥へ進んだ。
薄暗い廊下に部屋から青白い光が反射して、より一層この空間を不気味に見せた。
部屋に近づくにつれて、カタカタとプラスチックがぶつかり合うような音が耳に届く。
部屋の前に辿り着いた。磨り硝子の向こうには先程廊下に反射していた青白い光と、わずかに動く人影が見える。
意を決して、僕は部屋の戸を開いた。
「慶介、いるなら返事くらいしてよ」
部屋には一台のパソコンと、それに向かう見慣れた後姿があった。
「パソコンするなら部屋の電気くらい付けな。目、悪くなるよ」
言うが早いか、傍にあったスイッチで部屋に明りを灯す。部屋一面がぱっと明るくなった途端に、後姿はびくりと肩を震わせこちらを振り返った。
「なんだ……シュウちゃんか。何か用?」
振り返ったその顔は酷くやつれている様に見えた。きっと数日の間、ろくに睡眠も食事も取れていないのだろう。力なく微笑む彼に僕の心が痛んだ。
「一緒に食事でも行こうって誘いに来たんだけど……。それ、何してるの?」
パソコンを指差し彼に尋ねた。画面にはアルファベットや数字、記号の羅列がずらりと並んでいる。
「プログラミング。もうすぐ完成するんだ」
「へえ、何つくってるの?」
「ああ、ちょっとね……」
それ以降、彼は暫く口を開かなかった。
辺りは薄暗く、もう間もなく日が落ちるであろう時刻。
冷たいコンクリートを蹴る音だけが僕の耳を刺激する。アパートの一角にある、友人の部屋。僕は漏れてしまいそうになる溜息をぐっと飲み込み、恐る恐る呼び鈴を鳴らした。
「……あれ、いない?」
待ってみても返事はない。僕の脳裏にはここ数日世間を騒がせていた気分の悪いニュースのことだけが過ぎる。そんな筈はないと自分に言い聞かせ、取っ手を握った。
カチャっと音を立てて開く玄関。益々嫌な予感がする。
「慶介?もしかして……寝てる?」
再度声を掛けてみても、やはり返事はない。玄関に入り扉を閉め、小さく「入るぞ」とだけ断りを入れて奥へ進んだ。
薄暗い廊下に部屋から青白い光が反射して、より一層この空間を不気味に見せた。
部屋に近づくにつれて、カタカタとプラスチックがぶつかり合うような音が耳に届く。
部屋の前に辿り着いた。磨り硝子の向こうには先程廊下に反射していた青白い光と、わずかに動く人影が見える。
意を決して、僕は部屋の戸を開いた。
「慶介、いるなら返事くらいしてよ」
部屋には一台のパソコンと、それに向かう見慣れた後姿があった。
「パソコンするなら部屋の電気くらい付けな。目、悪くなるよ」
言うが早いか、傍にあったスイッチで部屋に明りを灯す。部屋一面がぱっと明るくなった途端に、後姿はびくりと肩を震わせこちらを振り返った。
「なんだ……シュウちゃんか。何か用?」
振り返ったその顔は酷くやつれている様に見えた。きっと数日の間、ろくに睡眠も食事も取れていないのだろう。力なく微笑む彼に僕の心が痛んだ。
「一緒に食事でも行こうって誘いに来たんだけど……。それ、何してるの?」
パソコンを指差し彼に尋ねた。画面にはアルファベットや数字、記号の羅列がずらりと並んでいる。
「プログラミング。もうすぐ完成するんだ」
「へえ、何つくってるの?」
「ああ、ちょっとね……」
それ以降、彼は暫く口を開かなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる