メカラス連邦諸国記

第10章 王様に似た男 ーアール国ー

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　塔に幽閉されたトーネル王は物思いにふけっていた。高い場所にある小さな窓から三日月だけが照らす、その薄暗い部屋で彼は身を縮めるように座っていた。
（私がいなくなればこの国はどうなるのか・・・。ナザル、いやその背後にいるダジャルの思うがままになるだろう。そうなれば領民に不幸を呼ぶことになる・・・。）
塔の中の部屋は凍えるような寒さで不気味なほど静まり返っていた。その中でトーネル王はため息をつくしかなかった。

　老人は家をそっと抜け出すと、呪文を唱えた。すると朱色の着物の若い女が現れて、その傍らに片膝をついて控えていた。
「スザク。トーネル王は多分、どこかに幽閉されておるはずじゃ。明日、我らが王宮に乗り込めば動きがある。だれかが王の幽閉場所に見に行くはずだ。王の居場所を突き止めて助け出すのだ。」老人が声をかけた。
「わかりました。」スザクは頭を下げた。
「事は急ぐ。頼むぞ。」
「はい。早速に。」スザクはそう言って暗闇に姿を消した。そして夜空を見上げると朱色の鳥が王宮に向かって飛んでいた。

　次の日、王宮は慌ただしい雰囲気に包まれていた。それはジ－ル公が王の跡継ぎになる儀式を執り行うためだった。
「さあ、準備を急げ。」ダジャル大臣は家来たちに声をかけた。
「大臣、大丈夫なのか？」横にいるジール公がダジャル大臣に耳打ちした。彼はビクビクして少し震えていた。
「大丈夫でございます。我らの企みは誰にも気づかれますまい。あなた様が王の後継者となれば怖いものはございません。塔の中の方には消えていただいて、あとは我らのもの。問題ございません。」ダジャル大臣はニヤリと笑いながら声を押さえて答えた。
「では任せたぞ。」ジール公はまだ落ち着かないようだった。